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成田 正の楽屋入り口 by STHILA COMMUNICATIONS

ティネカ・ポスマ(2)

2006-10-21 18:32:57 | ●ディーヴァの肖像
●ティネカ・ポスマ/インタヴュー by 成田 正(05年12月3日/『Jazz Today』に掲載)

--オランダで女性サックス奏者といえばキャンディ・ダルファー。彼女はお父さんのもとで鍛えられましたが、あなたは?
Tineka Postma(以下TP):祖父がアマチュアでクラリネットをプレイしただけ。でも、その影響でしょうね。祖父がよく家でジャズを聴いてまたしたから。
--それで9歳になると、アルト・サックスばかりかピアノとフルートも始めた。3種類もやるとはずいぶん欲張った?
TP:ピアノはおもちゃ代わりね。外で遊ばず、家に帰るとピアノにまっしぐら(笑)。それに比べサックスとフルートは、メロディ感の強さに惹かれました。
--よく聴いたジャズ・ミュージシャンは?
TP:キャノンボール・アダレイとマイルス・デイヴィス。デヴィッド・サンボーンも好きだったわ。
--アムステルダム音楽院に入ったのは、もちろんプロの道を目指して?
TP:ええ、ジャズ・アルト・サックスを6年間学んで学士号を獲りました。その奨学金でニューヨークのマンハッタン音楽院に5ヵ月間留学したんです。
--デイヴ・リーブマンやクリス・ポッターとか、師事した講師陣は凄い人ばかり。ドラムスのテリ・リン・キャリントンとも仲良しになった。濃厚な5ヵ月だったでしょ?
TP:修士課程でしたからね。それに、NYはライフ・スタイルがとてもエネルギッシュでしょ。ストレス が多い代わりに、高いレベルのプレッシャーがあるのも楽しかった。
--デビュー作『ファースト・アヴェニュー』の発表が03年。それから今まで、カヴァーよりオリジナル曲に重きを置いてきたようですね。
TP:今のところはそうですが、避けてるわけではありません。スタンダード・ソングも大好きよ。
--では、今度のセカンド・アルバム『フォー・ザ・リズム』でフォーカスしたことを教えてください。
TP:私自身の成長を聴いてもらえる作品にしたかった。ずっと曲を書いてますから、どうしてもオリジナルが多くなります。それらを、テリ・リンのような素晴らしいミュージシャンとプレイすることで、高い次元に引き上げたかったの。と言うかそうできたと思うわ。楽器のヴォイスも私なりのものでね。
--確かに前作では聴けなかった何かが引き起こってますね。
TP:そう聴いてもらえると嬉しいわ。音楽家としてのクリエイティヴな面が、ここから聞こえてくるかしら?
--もちろん。
TP:これからもそのことなの、集中していきたいのは。音楽を通してクリエイティヴな自己を押し出すことね。『フォー・ザ・リズム』はまだそのプロセスのほんの途中に過ぎないけれど、そういう私の意志を感じてもらえたら何よりね。
--それには普段のライヴ活動が肝心。最近の状況は?
TP:軸になるのは私のクインテットで、クラブやジャズ・フェスティヴァルに出てきました。音楽スタイルは、ハード・バップとファンクを一緒にしたようなグルーヴィーな感じのものが多いわね。それと、11月はダイアン・リーブスとテリ・リンとのツアーでカーネギー・ホール公演もあって、来年はエリントン作品をカヴァーするツアーを始めます。その他はビッグ・バンドやセッションにも顔を出して.....、忙しいわ(笑)。
--では、12月の初来日公演にも期待しています。
TP:私もこれを機に日本のジャズ・ファンの方々と関わりが持てるようになるのが、とても楽しみです。
(ジャケ写真は『フォー・ザ・リズム』55 Records/FNCJ-5510)


アダ・ロヴァッティ

2006-10-21 18:15:47 | ●ディーヴァの肖像
『Airbop/Ada Rovatti』(Apria Records APRIA 000104)

 ブレッカーズの兄ランディ夫人。と言っても、03年に初アルバムを出した時に30歳弱というから、ふたりの年の差は親子同然。追っかけをやっているうちにこうなっちゃったそうだが、いいところに狙いをつけたもの。音楽的な相性の良さは、弟マイケルといい勝負で、女性サックスの中ではテクニックもピカ一。マイク・スターンやアダム・ロジャースなどブレッカーズ人脈の胸を借りながらソロ・キャリアを積み、先頃ついにジョン・マクラフリンのアルバムにも参加するなど物凄い勢いの上昇気流をつかんだ。もちろん、プレイの方もそれに乗じて逞しくなっていく一方。早くも3枚目になる本作では、時としてW.ショーターかJ.ヘンダーソンかというウェイヴを引き起こし、サポート陣もびっくりの様子。もう男勝りとか女だてらに、とか言っている場合じゃなくなってきた感じだ。4曲を手伝うランディがいつになく真剣なのも、もはやダンナぶっている場合じゃあない、と。9曲中8曲を書く作曲にも非凡なものがある。(成田 正)(『CDジャーナル』06年9月号)