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成田 正の楽屋入り口 by STHILA COMMUNICATIONS

ティネカ・ポスマ070719

2007-07-19 00:01:40 | ●ディーヴァの肖像


 昨日、『ジャーニー・ザット・マターズ/ティネカ・ポスマ』(55 Records)の本盤が届いたので改めて聴いたら改めて相当イイ、いや、猛烈にイイ。音楽的にどうイイかは『JazzLife』誌8月号のディスク・レヴューで書けたつもりなので、ここではさて音。こういうのが僕は大好きだ。ピアノのリヴァーブとシンバルの定位が左右にやや広いことにはじめは目がチカチカしたが、エッジの切れと下への沈み込みが深いアコベが、音像のしまりにけじめを付ける。ハイがキンキン来るキラキラ星のようなピアノも、ちょっとダーク・トーン寄りなティネカのサックスの芯をあぶり出す、遠赤外線ヒーターのような効果をあげている。ではと、試しにヘッドフォンでも聴いた。なぜなら、DAC1に対するネットの言説に「DAコンバーターの性能よりヘッドフォン・アンプの力の方が優れている」というのが多かったことと、BOSEのノイズ・キャンセリング・ヘッドフォンQuiet Comfort2を2年前に手に入れたきり、ろくなもてなしをしないままきたから。だから、ヘッドフォンの音にどうこう言える者ではないが、AU-α907XRとXA7ESのヘッドフォン・アウト三つを比べると、ソプラノ・サックスの高域に余裕が感じられるなど、いちばん繊細な再生音に思え、DAC1とBOSE、そして、ティネカ嬢の表現力を改めて見直した次第。ただ、密閉型ヘッドフォンの冬温かいのは結構だが、高湿な夏場はエアコンを効かせた部屋でもCD1枚聴くのが限界。そういえば昔、『FM fan』誌のディスク・レヴューに「ヘッドフォンでも聴いたらなお面白かった」みたいなことを書いたら、編集から「そのフレイズは削除して下さい」とどやされたことがある。ヘッドフォンを純オーディオ機とは見なさない、というのが向こうさんの言い分のようだったが、オーディオ頁にはよく出てきた記憶もなきにしもあらず。しかし、都内中央でよく見かける、ダブル・チーズバーガーみたいな耳当てかぶって一体何を聴くのかというヘッドフォン族、「暑くないの?」を通り越して脳軟化症にでもならなきゃいいがと、見るたびハラハラ汗が滲んできて困る。

アニタ・オデイ

2006-11-24 14:55:53 | ●ディーヴァの肖像
 昨夜、「アニタ・オデイ的スキル...」と書いたら、奇しくも逝去。前項のアップはその直後のことになる。 合掌。
Jazz Vocal legend Anita O’Day passed this morning October 23, 2006 at 6:17AM in West Los Angeles. The cause of death was cardiac arrest according to her manager Robbie Cavalina. Born Anita Belle Colton in Chicago, Illinois on October 18, 1919, O’Day got her start as a teen. She eventually changed her name to O’Day and in the late 1930’s began singing in a jazz club called the Off- Beat, a popular hangout for musicians like band leader and drummer Gene Krupa. In 1941 she joined Krupa’s band, and a few weeks later Krupa hired trumpeter Roy Eldridge. O’Day and Eldridge had great chemistry on stage and their duet “Let Me Off Uptown” became a million-dollar-seller, boosting the popularity of the Krupa band. Also that year, “Down Beat” magazine named O’Day “New Star of the Year” and, in 1942, she was selected as one of the top five big band singers. After her stint with, Krupa, O’Day joined Stan Kenton's band. She left the band after a year and returned to Krupa. Singer Jackie Cain remembers the first time she saw O’Day with the Krupa band. “I was really impressed,” she recalls, “She (O’Day) sang with a jazz feel, and that was kind of fresh and new at the time.” Later, O’Day joined Stan Kenton’s band with whom she cut an album that featured the hit tune “And Her Tears Flowed Like Wine” In the late’40s, O’Day struck out on her own. She teamed up with drummer John Poole, with whom she played for the next 32 years. Her album “Anita”, which she recorded on producer Norman Granz’s new Verve label, elevated her career to new heights. She began performing in festivals and concerts with such illustrious musicians as Louis Armstrong, Dinah Washington, Georg Shearing and Thelonious Monk. O’Day also appeared in the documentary filmed at the Newport Jazz Festival in 1958 called “Jazz on a Summer Day”, which made her an international star. Throughout the ‘60s Anita continued to tour and record while addicted to heroin and in 1969 she nearly died from an overdose. O’Day eventually beat her addiction and returned to work. In 1981 she published her autobiography “High Times, Hard Times” which, among other things, talked candidly about her drug addiction. Her final recording was "Indestructible Anita O'Day" and featured Eddie Locke, Chip Jackson, Roswell Rudd, Lafayette Harris, Tommy Morimoto and the great Joe Wider. A documentary, "ANITA O'DAY-THE LIFE OF A JAZZ SINGER" will be released in 2007. For more info visit: http://www.anitaoday.com/

アニー・セリック

2006-11-24 00:20:09 | ●ディーヴァの肖像
 仕事柄から普段はまず浅く広く聴き、その中からピンときた順に優先順位を付け、コレというやつは盤面が擦り切れるくらい聴き込む。それが、オーディオの電源を浄化してからますます楽しくなってきた、という順の話しでもオーディオ自慢になることに変わりないか。ともあれ、それに前後した期間全般の今年、とにかく女性ヴォーカルが面白かった。かしこまって順位を付けるとまた気が変わるから=実際、再調を繰り返すと好き嫌いも変調する=ここ2週間、毎晩聴いているのが『四月の思い出/アニー・セリック(No Greater Thrill/Annie Sellick)』だと。彼女には前作に当たるアルバムで、もう過去のことなのかも知れないが、「アフター・ノラ・ジョーンズ」を象徴するかのようなこの歌のパンチ力とセクシーな雑味、そして、真っ赤なACコブラがお似合いの美形(アルバムのアート・ワーク)には、下半身を中心にして色々なところをやられたって感じ。いや、それは半分冗談にしても、若き白人女性ながらアニタ・オデイ的なスキルと芸能性を備え、なおかつ明るいセピア調を描ける表現力の見事さ、これには参ったというか、「チーク・トゥ・チーク」を毎日一度は聴かないと寝付きが悪いみたいな感じでいる。先月インタヴューしたフレドリカ・スタール嬢は「ノラ・ジョーンズが開けてくれた窓の向こうに光を見つけた」とか言っていたけれど、そこを見ないで頑張るディーヴァ予備軍、僕にはこっちの方が俄然逞しく頼もしく好感度絶大だ。その次に今のところ、やはりソフィ・ミルマン、エリザベス・コントゥマノウ、エミリー・クレア・バーロウ、アン・ハンプトン・キャラウェイ。ダイアナ・クラールのスタンダード集は素晴らしいけど落ち着き払い過ぎ。マデリン・ペルーを深夜聴くと、ビリー・ホリデイが還ってくるようでちょっと怖い。ティファニーはお愛嬌満点なのがちょっと、と。で、『四月の思い出』には、「ベスト・カヴァー・デザイン賞」も謹呈。

ティネカ・ポスマ(2)

2006-10-21 18:32:57 | ●ディーヴァの肖像
●ティネカ・ポスマ/インタヴュー by 成田 正(05年12月3日/『Jazz Today』に掲載)

--オランダで女性サックス奏者といえばキャンディ・ダルファー。彼女はお父さんのもとで鍛えられましたが、あなたは?
Tineka Postma(以下TP):祖父がアマチュアでクラリネットをプレイしただけ。でも、その影響でしょうね。祖父がよく家でジャズを聴いてまたしたから。
--それで9歳になると、アルト・サックスばかりかピアノとフルートも始めた。3種類もやるとはずいぶん欲張った?
TP:ピアノはおもちゃ代わりね。外で遊ばず、家に帰るとピアノにまっしぐら(笑)。それに比べサックスとフルートは、メロディ感の強さに惹かれました。
--よく聴いたジャズ・ミュージシャンは?
TP:キャノンボール・アダレイとマイルス・デイヴィス。デヴィッド・サンボーンも好きだったわ。
--アムステルダム音楽院に入ったのは、もちろんプロの道を目指して?
TP:ええ、ジャズ・アルト・サックスを6年間学んで学士号を獲りました。その奨学金でニューヨークのマンハッタン音楽院に5ヵ月間留学したんです。
--デイヴ・リーブマンやクリス・ポッターとか、師事した講師陣は凄い人ばかり。ドラムスのテリ・リン・キャリントンとも仲良しになった。濃厚な5ヵ月だったでしょ?
TP:修士課程でしたからね。それに、NYはライフ・スタイルがとてもエネルギッシュでしょ。ストレス が多い代わりに、高いレベルのプレッシャーがあるのも楽しかった。
--デビュー作『ファースト・アヴェニュー』の発表が03年。それから今まで、カヴァーよりオリジナル曲に重きを置いてきたようですね。
TP:今のところはそうですが、避けてるわけではありません。スタンダード・ソングも大好きよ。
--では、今度のセカンド・アルバム『フォー・ザ・リズム』でフォーカスしたことを教えてください。
TP:私自身の成長を聴いてもらえる作品にしたかった。ずっと曲を書いてますから、どうしてもオリジナルが多くなります。それらを、テリ・リンのような素晴らしいミュージシャンとプレイすることで、高い次元に引き上げたかったの。と言うかそうできたと思うわ。楽器のヴォイスも私なりのものでね。
--確かに前作では聴けなかった何かが引き起こってますね。
TP:そう聴いてもらえると嬉しいわ。音楽家としてのクリエイティヴな面が、ここから聞こえてくるかしら?
--もちろん。
TP:これからもそのことなの、集中していきたいのは。音楽を通してクリエイティヴな自己を押し出すことね。『フォー・ザ・リズム』はまだそのプロセスのほんの途中に過ぎないけれど、そういう私の意志を感じてもらえたら何よりね。
--それには普段のライヴ活動が肝心。最近の状況は?
TP:軸になるのは私のクインテットで、クラブやジャズ・フェスティヴァルに出てきました。音楽スタイルは、ハード・バップとファンクを一緒にしたようなグルーヴィーな感じのものが多いわね。それと、11月はダイアン・リーブスとテリ・リンとのツアーでカーネギー・ホール公演もあって、来年はエリントン作品をカヴァーするツアーを始めます。その他はビッグ・バンドやセッションにも顔を出して.....、忙しいわ(笑)。
--では、12月の初来日公演にも期待しています。
TP:私もこれを機に日本のジャズ・ファンの方々と関わりが持てるようになるのが、とても楽しみです。
(ジャケ写真は『フォー・ザ・リズム』55 Records/FNCJ-5510)


アダ・ロヴァッティ

2006-10-21 18:15:47 | ●ディーヴァの肖像
『Airbop/Ada Rovatti』(Apria Records APRIA 000104)

 ブレッカーズの兄ランディ夫人。と言っても、03年に初アルバムを出した時に30歳弱というから、ふたりの年の差は親子同然。追っかけをやっているうちにこうなっちゃったそうだが、いいところに狙いをつけたもの。音楽的な相性の良さは、弟マイケルといい勝負で、女性サックスの中ではテクニックもピカ一。マイク・スターンやアダム・ロジャースなどブレッカーズ人脈の胸を借りながらソロ・キャリアを積み、先頃ついにジョン・マクラフリンのアルバムにも参加するなど物凄い勢いの上昇気流をつかんだ。もちろん、プレイの方もそれに乗じて逞しくなっていく一方。早くも3枚目になる本作では、時としてW.ショーターかJ.ヘンダーソンかというウェイヴを引き起こし、サポート陣もびっくりの様子。もう男勝りとか女だてらに、とか言っている場合じゃなくなってきた感じだ。4曲を手伝うランディがいつになく真剣なのも、もはやダンナぶっている場合じゃあない、と。9曲中8曲を書く作曲にも非凡なものがある。(成田 正)(『CDジャーナル』06年9月号)

パメラ・ウィリアムス

2006-10-20 23:37:14 | ●ディーヴァの肖像
『Sweet Saxations/Pamela Williams』(Shanachie 5121)
 色仕掛けのアート・ワークではじめはキワモノ扱いされたパメラも、それですっかり定評を確立。スムース・ジャズの演壇では、ミンディ・アベールと双璧を成す、と米紙にあったが、しかしながらこれまた、そうと知らずにレコード店頭にあるのを見て、誰が買うんだろう風の危なさの最新5枚目のアルバム。もっと危ない裏ジャケには思わず吹き出しそうになったって、デザイン評のコラムでもあるまいし、か。もっともこれも、サックスの腕前に自信があるからこそ。それがShanachiに移ってデヴィッド・マンのサポートを得ることで、ソフトに際立つようになった。ロスと東京で2度会ったが、こう見えて平生は花より団子か、目に染みるような色目は飛んでこない。サックスひと筋かと思いきや、絵画の舞台でも将来を嘱望されたことのある才媛だ。アルバムのサブ・コピーは「The Queen of Smooth Urban Jazz!」。年格好はそうだなあ、30代中盤といったところかな。(成田正)(Vol.9/『ADLIB』05年12月号)

ジェーン・バネット

2006-10-20 23:33:01 | ●ディーヴァの肖像
『Jane Bunnett And The Cuban Piano Masters』(World Pacific CDP-7243 8 32695 2 5)
 カナダのトロント出身で、ソプラノ・サックスとフルート専従のブロンド美人。89年のデビュー作でいきなりドン・プーレンと共演し、91年の3枚目ではゴンサロ・ルバルカバを従えキューバ音楽に没頭。2度のグラミー・ノミネイトを受けるほか、パキート・デリヴェラに可愛がられるなどして、今やキューバ楽界からも一目置かれる存在。それがピアノ2台とベーシストとの4人編成を軸にバーストしたのが本96年作品で、正に彼女のキューバ愛を象徴したもの。マンハッタンのクラブS.O.B.で一度見聞きしてひっくり返りそうになって以来、これが愛聴盤のブックエンドに住み着いて離れない。大体、打楽器抜きでルンバやソンに入って行こうとは何という大冒険。にもかかわらず、随所で待ちかまえる危うい快楽をひょいとつまみ上げては両手でモミモミ、みたいな感じには背筋がゾクゾクだ。今のところ、カリブの熱狂を凛と描き出せる女性サックスはジェーン姉さんただひとり。(成田正)
(Vol.8/『ADLIB』05年11月号)

ジェーン・アイラ・ブルーム

2006-10-20 23:28:58 | ●ディーヴァの肖像
『Art and Aviation/Jane Ira Bloom』(Arabesque Jazz AJ-0107)  1955年、マサチューセッツ州生まれ。ソプラノ・サックス専従で79年にソロ・デビューを飾り、80年代の一時は米コロムビア・アーティストに。ちょうどハリー・コニックJr.が出てきた頃で、NYのCBSオフィスで会ったら理知的な美形にびっくり。結局、それを売りにしようとしたメジャーの水に馴染めなかったらしい。それもそのはず。楽器にエフェクターをかましたり、2本のマイクでステレオ効果を狙ったりと音楽のアプローチは大胆不敵。それで自主レーベルを切り盛りしたこともある。とはいえ、僕にはこの人、気骨あふれるサウンドが目に染みる女流トップのひとり。最近はNASAのアート・プログラムに手を貸すほか、テレビや映画音楽にも息を吹き込んできたそうだが、もっと前に出てきていい。このアルバムは、セロニアス・モンクの〈ストレート・ノー・チェイサー〉が冴えた92年作品。ジャケ写真はオフィシャル・サイト(www.janeirabloom.com/)も飾る。(成田 正)(Vol.7/『ADLIB』05年10月号)

アリソン・ニール

2006-10-20 23:23:25 | ●ディーヴァの肖像
『Melody Express/Allison Neale Quartet』(33 Records 33JAZZ103)  これまで紹介したうち一番妙齢のサックス(アルト)奏者で、おそらく20代。ワシントン州シアトル生まれ、英国育ち。ロンドンの名門ギルド・ホールに学んでプロの道に。と言っても、この初リーダー作のリリースが04年の春。キャリアはまだ始まったばかりだが、しかしこれ、ひと口に言えばポール・デスモンドの再来。そこにほんの少しだけ、アート・ペッパーをかぶせた感じだ。目の付けどころが良い。やる気があるのかないのかどっちなんだという吹奏で世界を作ったデスモンドに、非男性的な何かを見つけて不思議はないからだ。そのデスモンドの作品をギターとのカルテットで1曲収録。師が生きてたら大喜びしたろうというプレイ・マナーをしっとり披露。大きな音さえ出さなければ、目隠しテストで十中八九をだませそうだ。もちろんこのことは、ほかでも終始一貫。ジジ・グライスを2曲もやるとは相当の頑固者でもあるらしい。OSはwww.allisonneale.com/。(成田正)
(Vol.6/『ADLIB』05年9月号)

バーバラ・トンプソン

2006-10-20 23:12:49 | ●ディーヴァの肖像
『Thomson's Tango and Other Soft Dances/Barbara Thompson & Paraphernalia』(Intution INT 32902)
 英国のオックスフォード生まれ。本作にも参加のドラマー、ジョン・ハイズマンと1967年に結婚したというからもう50歳超? これが15枚目のリーダー作で、03年に16枚目もリリース。96年には英国王室からMBEを授かっている。デューク・エリントンとジョン・コルトレーンを私淑し、ロンドンの王立音楽院でクラリネット、フルート、作曲を学んだ後、アルトにスイッチしてプロの道に。早くから自分のバンド“パラフェルナリア”を組み、オリジナル中心のコンテンポラリー・スタイルの開発に熱中。作曲者としてもテレビやラジオから引く手あまたの存在に。それが突如タンゴの世界に挑んだのが、00年録音の本作。頭から4曲オリジナル・タンゴを並べた次に、コルトレーンの「ネイマ」を独創的な解釈でショウアップ。「悲のテイスト」がうっすらしか浮かばないタンゴにはびっくりだが、これぞブリティッシュ流儀というところか。カヴァー写真は五指に入る出来映え。(成田 正)(Vol.5/『ADLIB』05年8月号)

ボディル・ニスカ

2006-10-20 23:02:08 | ●ディーヴァの肖像
『First Song/Bodil Niska』(Hot Club Records HCRCD-135)
 ヨーロッパ最北端の都市で知られるノルウェイのハンメルフェルト出身。「願わくば男に生まれて1940年代のNYジャズ・シーンで演奏したかった」と語るボディルは、もうお孫さんもいるベテラン。女性サックスではアルトが優勢な中、この人の主楽器はテナー。そこにオールド・タイミーな息を吹き込み、ベン・ウェブスターかズート・シムスかという佳き日の景色を揺り戻す。なるほど、1曲目の〈ダニー・ボーイ〉にはうっとりだが、タイトル曲はチャーリー・ヘイデンの近作。高感度なアンテナの持ち主でもある。それでレコード・ショップの切り盛りにも熱を上げてきたそうだ。去年5月の初来日公演を聴き逃したのは不覚だったが、本作に続く新作『Blue』も昨年登場。北欧らしからぬ乾いた官能で「ブルー」の意味を探っている。それよりこっちを紹介したのは、ご覧の通りポートレートとして上出来だから。背広と帽子姿はデクスター・ゴードンを範にしたらしい。(成田 正)(Vol.4/『ADLIB』05年7月号)

アマンダ・セグウィック

2006-10-20 18:30:03 | ●ディーヴァの肖像
『Reunion/Amanda Sedgwick』(Touche Music/TMcCD 021)  パメラ・ウィリアムスみたいな超色仕掛けのカヴァーも悪くないが、どこかダンディズムの香りすらするこういう決め方も実に目を引いていい。裏ジャケをお見せできないのが残念だ。アルト・サックス奏者アマンダ・セグウィックは、1970年スウェーデンのストックホルム生まれ。生地の王立音楽院に学んでプロの道に進み、96年に初アルバムを発表。「ニュー・カマー・オブ・ザ・イヤー」に輝くことでピットロードを抜け出た才媛の誉れ高い注目株。基本マナーはストレートアヘッド系だが、チャーリー・パーカーを遠ざけてきたらしき、マイルド&ダークなプレイに身上がありそうだ。それで、ジジ・グライスとマーヴィン・ゲイをカヴァーするうえ、作編曲にも一家言を込める。変化に富んだ曲調の4曲のオリジナルには、人をちょっと振り向かせるだけの十分な力がある。ゲスト起用したP.ハーパーの人選も大当たりで、レギュラー・バンド並みの色合いが出た。(成田 正)
(Vol.3/『ADLIB』05年6月号)

ティネカ・ポスマ

2006-10-20 18:20:53 | ●ディーヴァの肖像
『First Avenue/Tineka Postma Quartet』(Munich Records BMCD407)  ティネカ・ポスマ(オランダ)を指導したことのあるクリス・ポッターが、この初リーダー作(03年リリース)に一文を寄せている。「初めて会った時、既成曲の斬新な解釈にびっくりされられたものだよ。(中略)素晴らしい音楽をありがとう。ますますキミから目が離せなくなってきたよ」。さらに、解説担当はテリ・リン・キャリントンだ。アムステルダム音楽院の奨学金を得てマンハッタン音楽院に留学し、ポッターやデイヴ・リーブマンに師事。米IAJEコンペ初の女性ウィナーでもある。アルトとソプラノを吹き、作編曲も堪能。キャノンボール・アダレイやジョー・ヘンダーソンに傾倒しながら、コンテンポラリー・ジャズ・スタイルを磨いてきたそうだ。そのことは、ピアノレス・トリオによるジョー・ヘン作品「アイソトープ」に明々白々。エッジの効いたトーンと滑らかなフレイジングでポッターの賛辞も裏付ける。オフィシャル・サイトは「www.tinekepostma.com/」。(成田 正)(Vol.2/『ADLIB』05年5月号)

キャロリン・ブロイアー

2006-10-20 17:58:33 | ●ディーヴァの肖像
『Night Moves/Carolyn Breuer』(Notnowmom! NNM! 2002)

 ひと昔前まで、ジャズ系のアルバム・カヴァーに女性が出てくると、それは歌手かピアニストかモデルさんと相場が決まっていた。かの有名なおみ足だけの『クール・ストラッティン』も、あくまでアート・ワークだ。徐々に様相に変化が起こり始めたのは、奇しくも日本で男女雇用機会均等法が定められた1985年、次に変化が顕著になるのが、法が強化された99年頃。各種サックスを中心に、女性インストゥルメンタリストが続々と出現。歌は世に連れ、世は歌に連れの警句が目に浮かんだ。はじめは、ソプラノ専従ジェーン・アイラ・ブルームのenja盤。ジャケ買いしたつもりが、見事にはずされた。という嬉しいショックから約20年。ついにここまできたかというのが、ミュンヘン生まれオランダ育ちの才色兼備キャロリン・ブロイアー(写真)。恐るべし美形化の波。その一方、「ちょっと待ってよ」風のジャケ写真もあり、20年の体験は色々。それらをまずは欧米編から行ってみたい。(成田 正)(Vol.1/『ADLIB』05年4月号)