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成田 正の楽屋入り口 by STHILA COMMUNICATIONS

世界体操を堪能

2011-10-17 11:56:33 | ●体育会系

 ひねり技がひと回り増えているのを見落とす誤審が、世界体操であった。結果オーライで修正されたものの、かなり危ない話だ。ネックとなるいちばんの要因は、審査員に誰ひとりウルトラE級以上のワザをやった経験者がいないこと。すると彼らの評価とは図面上の当て込みにしか過ぎず、ニュアンスやディテールを測る尺度がたとえば「コールマン」なるものの出現以前の感覚で、足先とかばかりに集中しているうち、あれれっとなっちゃうのでは。それにしてもワザの多様化と高速化が凄かった。「後方かかえ込み3回宙返り降り」ならぴんと来ても、「正交差1/4ひねり把手上倒立経過振り下ろし開脚支持」とは一体何なんだと。あん馬だそうだ(写真はオフィシャル・サイトから拝借)。


階段の一段飛ばし

2010-11-16 22:14:20 | ●体育会系
 達成感の反意語は敗北感らしい。それを今日、西国分寺駅で武蔵野線から中央線に乗り換える時、まざまざと味わった。いつ頃までだったか、上り階段の一段飛ばしに不自由を感じなかったのが、あれれ、5回もやると思うように足が上がらずころびそう。息を切らしながら、「老いは足から」を黙唱して今年の反省ノートに刻み込んだ。上下中央にバランスがとれたエクササイズでないと巧いこといかないのはオーディオと一緒。鉄棒や腕立て腹筋に懲り過ぎて、これぞ灯台もと暗しってやつだ。が、こうした一種の窮状に巻き返しをはかる快感を忘れないのが体育会系だ。体重を落とすより上げる方が楽なのに似ている。炎暑時でなかったのもこれ幸いだ。写真は、誰彼に説明するたび首をかしげられる、我が仕事部屋の鉄棒。この後、棒前にからだが行った時、重心を浮かせると同時に、一気に逆手に持ち替える。笑われようがバカにされようが、これでここ3年、「私は今日まで生きてきました」なのだ。明日からまずスクワットを再開することにした。

あん馬

2007-11-01 22:37:08 | ●体育会系
 男子体操競技には次の6種目がある。床運動、跳馬、あん馬、吊り輪、平行棒、鉄棒。女子と共通なのは床運動と跳馬だけで、女子側には平均台と段違い平行棒の固有種目があって全部で4種。何年か前、親しい仲間との酒席で、平生に役立たない体操種目は何か、そんなのやってもしょうがないというのは何か、という話題になった。ちょっと時間をおいてすぐ結論に達したのは「あん馬」。選手諸兄には誠に申し訳ないが、理屈はこう。鉄棒と平行棒ができれば、映画『タワーリング・インフェルノ』や『タイタニック』の中で少しは長生きできる。床運動はそれこそ寝ワザ系に強くなって、吊り輪は電車のつり革で遊べたりと。跳馬は体験上、突っ込んできた車のボンネットに着地した時は、思わず見得を切るほどだった。が、あのあん馬、筋トレには最高でも、一般平民の普段に、ああいうことをやる場面はまず皆無。世界のどの国の公園に遊技場にあれがあるのかしらん、とも。あっても遊び方を知らない人が大半だろうし、生半可でやったらきわめて危ない。だからこの1種目を削って5種目にした方が競技人口増にもつながるのではないかと。あん馬が純粋培養したワザが、けっこう前から床運動に反映されてきたことだし.....。でも未だにサックスの次にやってみたいことのひとつではある。

全日本体操選手権

2007-10-28 12:53:32 | ●体育会系
 27日(土)、代々木第一体育館での天皇杯『第61回全日本体操競技選手権大会』の「個人総合決勝」を、大先輩の写真家N氏と、音楽誌編集主幹のA氏と3人で見てきた。小さい頃夢見た、スーパーマンみたいなことが、床や鉄棒でビシバシ決まる。その一方、男女共々、鉄棒や平均台からよく落っこちるのは、テレビで見ていては分からないこと。広大なステージのど真ん中に鉄棒、そのまわりを男女の各種目がとりまくように並び、最多で10種目が同時進行する光景には目がくらくらしてきたが、入場料2000円で何でも見放題のお得な感じもある。中央正面の鉄棒に自ずと目がいく。回転ワザとひねりワザの回転数は、僕が体操を始める動機になった東京オリンピックの頃に比べ、二倍から三倍以上、大逆手握りによるワザも複雑化し、それに伴いすっぴんの車輪は着地前のほんのちょいだけに。こんなの近くの公園でやったら黒山の人だかりになるだろうってなことだらけの約2時間。Nさんは僕と同じ中学高校と体操部、Aさんはやらないにもかかわらず、東京オリンピック以降を僕以上に知る。新宿駅前の居酒屋で盛り上がったのは言わずもがな。

体操世界選手権

2006-10-22 23:58:32 | ●体育会系
 優勝、16.487点なんていう、とんでもない新尺度の世界コンペが終わろうとしている。コマネチの10点満点連発の分かりやすさに比べ、得点を見ただけで演技の優劣が分かる時代がついに終わった。『Down Beat』と『スイングジャーナル』にある「五つ星=5 Stars」が、15、16個になっちゃった感じに、正直なところ演技を見ない限り訳が分からず、ただでさえ人気が閉塞状態の体操界を心底から憂えて止まない。ちょっと前、行きつけの有楽町の赤提灯で、隣り合わせた妙齢の女性が鉄棒の蹴上がりって何? というので身振り手振りで説明した。大逆手車輪、シュタルダーとか付け加えたら、美女の目つきは宇宙人相手のようになった。中学の3年間、体操部、高校ではしょぼい体操同好会員。あれから30余年、このスポーツに女の子が叫声を上げるようなブレイクがあっただろうか。評価を複雑化させるほど冬が険しくなるばかりなことに、世界の筋肉マンOBたちは早く目覚めて欲しい。ただ、富田選手がひねりワザを決めるたびに客席から黄色い声が上がったら、ちょっとフリーク・ショウっぽくなっちゃうかな。今も夢なのは、監物選手が最初の、逆手車輪から大逆手への一気切り返し。そういう渋い激務が加点要素にならなくなった今、この競技は中国雑伎団的トリッキーに占拠されかねない。