中小企業庁は毎年、中小企業白書を発行している。診断士の世界では、「白書」と言えば中小企業白書のことである。診断士の一次試験にも出題されるため、受験時代は、よく読んでものだ。診断士になってからも、企業診断の参考に白書を引用することもある。マクロ分析の時は使えるし、著作権の心配もいらないからだ。しばらくぶりに、白書の解説セミナーに出席した。虎ノ門の中小企業大学校である。もちろん無料だ。
今年の白書では、ポイントを16個掲げている。中小企業の景況感は拡大傾向、下請取引は着実に改善、深刻化する人手不足など16個だ。また、今回の白書の特徴は、豊富な事例だ。何と113事例もある。よく集めたものだ。今日は、この事例で面白いものを紹介する。
① 60歳以上の限定の求人広告をきっかけに人手不足を解消し、シニア人材の活躍の場を広げているプレス板金加工の企業(岐阜県)
② 業務の見直しの結果、設備の入れ替えを行い業務効率化を実現した温泉旅館(島根県) 客室の有料冷蔵庫のドリンク補充や冷水ピッチャーの入れ替えに毎日1時間半もかかっていたが、通常の冷蔵庫に変え、ピッチャーをペットボトルに変えて一人平均30分残業時間を削減、冷蔵庫の更新投資に70万円
③ 環境調査会社で案件に偏りが出て業務が特定社員に集中したが、スキルマップを作り、スキルに応じて割り当てをして一人平均労働時間が年100時間削減(群馬県)
④ 特養老人ホームで、見守りセンサーとパワーアシストスーツを導入し勤務負担を軽減し、転落事故が30%減少、設備投資は616万円、うち補助525万円(東京都世田谷区)
⑤ 顧客が反復的に利用するストックビジネスに着目し、高性能潤滑剤をSNSでプロモーション、4カ月で1.3万人が購入、2千万円の売り上げ、費用はSNSプロモーションで30万円(千葉県)
⑥ 売り上げ減少に悩むパン屋が補助金を使って、大きく背の高い看板を設置、認知度が高まり売り上げが年300万円増(鹿児島県)
⑦ 人手不足に悩むハンバーグ専門店が、お皿にライスを盛るシャリ弁ロボ、券売機を導入し、調理時間の短縮、回転率の向上により月商が2倍に増加(東京都中央区)
⑧ 店内が暗く花の魅力が十便に訴求できていない生花販売店で、LED照明化し、来客数が50%増加。LED照明で発熱量が減り、花の寿命が延びて在庫ロスが1割減少(山形県)
戴いた資料は、ダイジェスト版だから、事例は、まだまだあるはずだが、ブログ入力も結構疲れる、ここまでにします。しかし、②あたりは、作業者は毎日作業してるんだから、私から言わせるとなぜ今まで改善できなかったんだろうか。おそろらく、従業員に改善などを考えさせることをしなかった、言われたことだけしっかりやれ!という風土だったんだろう。
中小企業の中には、赤字を脱却するため、売り上げを何とか上げるのに四苦八苦で、資金繰りや納期の順守で手一杯、改善やコミュニケーションなどと言ってられない会社も多いんだろう。このくらいの改善なら、診断士を使ってよ、という気持ちだ。