火星には様々な地形が見られ、季節変化を伴う場所も多く存在します。
その中で、気温の上昇に伴って急斜面にできる黒い筋は塩を含んだ
液体の水が流れた跡なのではないかと考えられてきました。
火星の表面近くにある氷や地下にある氷が暖かくなると溶けて地表に
染み出し、地表を流れていったものだと言うのです。
ところが、このような現象は急斜面だけに見られ、緩斜面や平地には
見られないものでした。もし、氷が解けて水が作ったものならば、
暖かい時期には他の地形にも水によって作られる地形の変化や現象が
見られてもいいはずです。
この問題を解決する1つの案がアメリアの宇宙地質学科学センターの
研究チームから提案されました。
黒い筋は「水が流れたのではなく、砂が流れたのだ」と言うのです。
黒い筋の長さと斜面の角度に関係性が見られること、斜度が27°以上
の斜面だけに見られることなどが理由です。
こう考えると、黒い筋が緩斜面には見られないことや火星の冷たく
薄い大気の下で液体の水は存在しにくいという従来の考え方に矛盾
することなく、この現象を説明できます。
ただ、まだメカニズムが分かっていない部分も残されているので、
これから研究が進むにつれて、本当に砂が流れたものだとする解釈
が正しいのかどうかが分かっていくことでしょう。
(画像:NASA/JPL-Caltech/UA/USGS)