じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

大沢在昌「無間人形」

2024-02-14 00:37:26 | Weblog

★ 京都の私立高校の発表。塾生たちは今のところ順調に合格を積み重ねてくれている。ありがたい。この調子で、15日、16日の公立前期入試も健闘して欲しい。

★ 英検、2級と準2級の間に新設される級は「準2級プラス」だという。ビタミン剤のように名前ばかりがインフレ傾向。この分だと「3級プラス」とか「準1級プラス」とかも出現するかも。協会としては英検離れを阻止しようと必死の様相。一層、TOEICのようにスコアだけにしてしまえばと思うのだが。

★ さて今日は、大沢在昌さんの「無間人形」(光文社文庫)を読み終えた。新宿鮫シリーズの4で直木賞(1994年)受賞作。650ページを超える力作だった。これぞエンタメ小説という感じ。

★ 新宿鮫こと鮫島警部が今回追う事件は、最近若者たちの間で蔓延している「キャンディ」という名の覚せい剤。

★ 売りさばいているのはあるヤクザ組織のようだが、卸元がわからない。キーとなる人物を探っていると、同じく組織を追う麻薬Gメンと衝突することに。

★ 紆余曲折を経ながらも、鮫島たちは政財界で幅を利かすある一族に至る。

★ 筋はシンプルだが、とてもドラマチックに描かれている。納得の650ページだった。

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坂東眞砂子「火鳥」

2024-02-12 16:32:50 | Weblog

★ 私立高校入試が終わる。今日の夜辺りからその結果が届くだろう。次は公立高校の前期入試。

★ ドラマ「ブラインドスポット」を観始めたら止まらない。大都会の大通り。そこに不審物のかばん。爆発物処理班が出動するが、かばんの中から出てきたのは全身にタトゥーが彫られた女性だった。この謎の女性はFBIが保護。タトゥーの意味が解読されるにつれて、政府が絡んださまざまな事件が解決されていく。果たしてこの女性の正体は。

★ ドラマ「不適切にはほどがある」第3話も面白かった。人権やコンプライアンスは大切だが、現代がいかに不自由であるかがわかる。それはともかく、途中からのミュージカル仕立てには驚いた。「何だ、劇団四季か」あるいはインド映画か。斬新な演出だが、慣れればこれも面白い。

★ さて今日は、坂東眞砂子さんの「神祭」(角川文庫)から「火鳥」を読んだ。「火鳥」というと手塚治虫さんの「火の鳥」を思い浮かべるが、それとはまったく関係がない。

★ 時代は物語の中で「肉弾三勇士」の話が出てくるから、昭和10年前後かな。方言から四国のとある村のようだ。

★ その村には「ミズヨロロ」の伝説があった。全身真っ赤な鳥で、この鳥の霊に祟られると火事になるという。村のある一家が火事に見舞われ、生き残った若い女性が住む粗末な土蔵にその霊が宿っているという。

★ 物語の主人公は竹雄という12歳の男の子。夕暮れ、川の淵で先の若い女性・みきが水浴びしている場面に出くわす。母親と同じくらいの年齢ながら、その裸体に魅せられた竹雄は性に目覚める。

★ まだ幼いながらも、兄から聞いた夜這いを決意し、みきの蔵を訪ねた竹雄は思わぬ光景を目にする。

★ 想像以上に刺激的な作品だった。男の子なら誰しも経験する通過儀礼のようなものか。

☆ 今年もそろそろ確定申告の準備をしなくては。気が重い。

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宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」

2024-02-11 14:44:06 | Weblog

★ 今年の「本屋大賞」候補作、川上未映子さんの「黄色い家」にしても宮島未奈さんの「成瀬は天下を取りにいく」にしても、コロナの影がちらつく。

★ 今日は、宮島未奈さんの「成瀬は天下を取りにいく」(新潮社)を読み終えた。川﨑秋子さんの「ともぐい」(新潮社)と交互に読んでいくとその文体の落差が楽しい。

★ 「成瀬は天下を取りにいく」はとても読みやすい青春小説だ。連作短篇のようでもあるが、成瀬あかりというちょっと変わった主人公と閉館される西武大津店が物語をつなぐ。

★ 第1話「ありがとう西武大津店」はいわばプロローグ。慣れ親しんだデパートの閉館を前に、連日、ライオンズのユニフォームを着てローカル番組に映りこむ女子中学生。それが成瀬だ。成瀬は将来、びわ湖にデパートを建てるという。

★ 第2話「膳所から来ました」は、成瀬とその親友、島崎がM1にチャレンジする話。物語自体が漫才の脚本のようで、とてもテンポが良く、この作品集の中で私はこのエピソードが一番好きだ。

★ 第3話は、「階段は走らない」。これは成瀬から少し離れて、今や40代になったかつての少年少女たちが西武大津店の閉店を機会に同窓会を企画する話。

★ 第4話「線がつながる」は、膳所高校(滋賀県で1番の進学校)に入学した成瀬を取り巻く話。

★ 第5話「レッツゴーミシガン」は、成瀬が所属する「かるたクラブ」の話。

★ 第6話「ときめき江州音頭」は東京に引っ越すことになった島崎と成瀬が地元の夏祭りで漫才コンビ「ゼゼカラ」として司会を務める話。

★ どの物語も滋賀県(大津周辺だけれど)が満載だ。最近「翔んで埼玉」とか「レディ加賀」とかちょっとローカルな作品が増えているから、「成瀬」も実写化されるかも。

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戌井昭人「ぴんぞろ」

2024-02-10 17:10:36 | Weblog

★ 京阪神の私立高校入試第1日目。塾生が受験に行っているので、塾は開店休業。

★ 今日は戌井昭人さんの「ぴんぞろ」(講談社文庫)を読んだ。彗星のごとく現れ、あれよあれよと新人賞、芥川賞までとってしまう作家もいれば、芥川賞候補としてノミネートはされながら、なかなか受賞に至らない作家もいる。

★ 戌井さんは2009年、11年、12年、13年、14年と5回ノミネートされたが受賞には至っていない。「ぴんぞろ」は第145回(2011年)の候補作。

★ 最近の芥川賞は時代性や話題性が重視されているように思う。戌井作品は概して評価は高いものの、強く推す選者に恵まれなかったというところか。

★ 受賞の有無にかかわらず、「ぴんぞろ」はそれなりに面白く楽しめた。確かに前半は「麻雀放浪記」を思い浮かべたり、全体的に川端康成の作品を思い起こしたりと、新奇性には欠けるかな。

★ ある売れない脚本家。小さな芸能社の依頼を受け食いつないでいる。チンチロリン賭博の挙句、売れない芸人の代わりに山奥の温泉宿でヌードショーの司会をすることに。

★ 終盤の部分は、何かドラマか映画で見たような既視感があった。この作品て、実写化されていたのやら。

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絲山秋子「ニート」

2024-02-09 19:33:48 | Weblog

★ 京阪神の私立高校入試が明日10日から12日にかけて行われる。あっという間だった。塾生たちの健闘を祈りたい。

★ ということで、読書をする時間がなかったので、今日は短い作品。絲山秋子さんの「ニート」(角川文庫)から表題作を読んだ。

★ 作家として自立できるようになった主人公が、かつて親しかった男性の窮乏を見かねて、お金を貸す話。

★ 男性は目下、働く意欲を失い自室に引きこもっている。体は健康とあって公的な援助を受けられないことは本人も自覚し、また実家からの援助を受けることも潔しとしない。結果として当然、食事にも事無く生活に陥っている。

★ かつての縁(男女関係もあるが)で、見捨ててはおけない主人公。とはいえ、資金援助をするというのは気が引ける。相手から求めらえていないのに、カネを貸すというのも成功者の驕りと捉えられないか。貸す方が悩んでしまう。

★ 友人間のカネの貸し借りは難しい。最後は主人公の太っ腹な覚悟が印象的だった。

☆ 京都はこれから3日間、好天が続きそうだ。受験生にとっては天の恵みだ。

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芥川龍之介「お富の貞操」

2024-02-08 16:38:09 | Weblog

★ 中島京子さんの「夢見る帝国図書館」(文春文庫)を読んでいる。その中で、芥川龍之介の「お富の貞操」が紹介されていたので、読んでみた。さすがは芥川龍之介。とても余韻の残る作品だった。

★ 舞台は明治元年5月14日。上野に立てこもる彰義隊と官軍との最終決戦が始まろうとしていた。戦を前に、上野界隈の町家には避難する旨お達しがあり、無人の町は静まり返っていた。

★ その時、ある町家に一人の乞食が入ってきた。彼はそこで懐の短銃を整備し始めた。彼は傍らに置いてきぼりにされた猫を見つける。猫相手に一人語りをしていると、外から一人の若い女性が入ってきた。

★ この町家に奉公しているお富という娘だ。置き去りにした猫を取りに帰ってきたという。それを聞いた男は、猫に短銃を向け、猫を助けたければ言いなりになれという。そして娘のとった行動は・・・。

★ 物語は23年後の内国博覧会のシーンで終わる。かつての娘は成長し、夫、二人の子どもと共に上野の大通りを歩いていた。その横を名士を乗せた馬車や人力車が行き来する。お富はその馬車に中にあの日の男を見つける。

★ 二人の瞳が交差するこのシーン。スローモーションで見るように実にドラマチックだ。うまい。

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石田衣良「美丘」

2024-02-07 15:22:24 | Weblog

★ 連日良い作品に出会える。今日は石田衣良さんの「美丘」(角川文庫)を読み終えた。

★ 以前、テレビのドラマで断片的に観た覚えがある。美丘役は吉高由里子さんだった。

★ 前半は普通の大学生たちの様子。仲良しグループで集まっては恋バナに花を咲かし、誰かしらのバカ話で盛り上がっていた。

★ そんなとき、グループの一人、太一がちょっと風変わりな女性と出会う。それが美丘。太一は急速に美丘に魅かれていく。太一は自分にないものを美丘の中に見ていたのかも知れない。急速に接近した二人は同棲を始める。

★ そこまでなら単なる恋愛小説。実は美丘は幼い頃負ったケガが原因でクロイツフェルト・ヤコブ病(いわゆる狂牛病)に感染していた。発症すれば現代の医学では手の施しようがなく、運動機能や記憶を失い、数か月から数年で死んでしまうという。

★ そして、遂にその兆候が始まった。

★ 作品は太一が美丘に語り掛けるような2人称で書かれている。終盤は泣ける。

 

☆ 今から40年ほど前になるだろうか、大阪駅西口の地下街に小さな飲み屋が連なる飲み屋横丁があった。そのある店ではホルモンの煮込みやテールスープが提供されていた。メニューには「ブレイン」というのがあり、それは牛の脳を薄切りにしたものだった。ゼリーのような食感、ごま油で味付けされていた。興味本位で食べてみたが、今ではありえないことだろうなぁ。

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東野圭吾「流星の絆」

2024-02-06 13:57:30 | Weblog

★ 東野圭吾さんの「流星の絆」(講談社文庫)を読み終えた。600ページを超える作品だったが、面白かった。

★ 洋食屋「アリアケ」には2人の息子と1人の娘がいた。彼らが親の目を盗んで流星を見に行っている間に、何者かに両親が殺された。

★ 弟の泰輔が犯人の顔をちらっと見たものの、それ以外に物証が乏しく、間もなく時効が成立しようとしていた。

★ 施設で育った兄弟たちは成人し、詐欺に手を染めながら生き延びてきた。これで最後と決めた仕事。新規にオープンする洋食屋で、妹の静奈が口にしたハヤシライスは、かつて「アリアケ」で味わったものと瓜二つだった。そして、14年間、埋もれていた事件が動き出す。

★ 特に後半、500ページを超えたあたりからが圧巻。あらためて東野さんのすごさを感じた。

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佐藤賢一「日蓮」

2024-02-05 16:20:41 | Weblog

★ 内村鑑三は「代表的日本人」(岩波文庫)として5人の人物を上げている。その一人が日蓮である。

★ 「代表的日本人」は1894年に書かれ、1908年に再版されている。急速な近代化が進む中で、日本人とは何かを外国人にも示すために英語で書かれた。

★ 内村は日本の仏教史を簡潔にまとめたあと、真の信仰を目指し、不惜身命で行動した人物として日蓮を上げている。彼は、法華経を唯一最高の法とし、他宗に法論を挑み、国家諌暁を行い、その行いによってさまざまな迫害を受け、迫害を受ければ受けるほど自らの使命を自覚した。

★ 生誕800年という時期的な動機があったかどうか、2021年に発行された佐藤賢一さんの「日蓮」を読んだ。その生涯の概略は、萬屋錦之助さんが主役を演じた映画「日蓮」(1979年)などで知っていたが、それを思い出しながら読んだ。

★ 幼少期から修業時代。1253年、32歳の時の立宗宣言。1260年、幕府に提出した「立正安国論」。鎌倉の他宗を批判する布教を行い、襲撃にあったり、伊豆に流罪になったりする。遂には竜の口で斬首される寸前、不思議な自然現象が現れ、斬首は中止。佐渡への流罪となる。幕府内の騒動や蒙古来襲を予言したため赦免され、鎌倉に戻り三たび諌暁を行うも受け入れられず、身延山で後進の育成を行った。

★ 通史は年表でわかるが、小説の面白さは、当時の模様を作家のイマジネーションで描かれるところだ。

★ 佐渡での「塚原問答」や国家諌暁の場面が面白かった。

★ 明治以降も日蓮の教えは様々に派生し、僧として彼ほど好き嫌いが別れる人物も珍しい。先の内村鑑三も「闘争好きを除いた日蓮、これが私どもの理想とする宗教者であります」と締めくくっている。

★ しかし、闘争を抜きにして日蓮の魅力はない。彼は単なる信者でも、学者でもなかった。彼は自ら自覚するように「法華経の行者」であり、それゆえ批判(迫害)も当然のこととして受けたのだと思う。

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川村元気「億男」

2024-02-04 18:54:43 | Weblog

★ 京都の私立高校入試は2月10日から12日の間なので、今週は私学対策の最後の土日特訓だった。ほとんどの塾生は合格ラインに達しているが、油断は禁物。当日の体調を整え、実力を発揮し、ミスをせずに勝利を勝ち取って欲しい。

★ さて今日は、川村元気さんの「億男」(文春文庫)を読んだ。3000万円の借金を残して失踪した弟、主人公はこの返済のため、昼夜2つの仕事をかけ持っている。彼には妻と一人娘がいるが、それも行き詰まり別居を始める。

★ そんな時、ふと宝くじが当たり、彼は3億円を手に入れる。これで元の生活、家族一緒の生活に戻れると思ったのだが、巨万の資産を持つ親友がそのカネと共に姿を消してしまう。

★ 彼は必死で友人を探し、次々と億男、億女と会う。その過程で「お金と幸せの関係」を考えていく。

★ 「金は神に似ている」。「どちらも実体がない。人間の信用や信仰によって成立している」というセリフが印象的だった。

★ 作品としては少々読みにくかったが、落語の演目を生かして、説得力のある物語だった。

★ とはいえ、宝くじには当たりたいものだ(笑)。

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