じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

佐藤賢一「日蓮」

2024-02-05 16:20:41 | Weblog

★ 内村鑑三は「代表的日本人」(岩波文庫)として5人の人物を上げている。その一人が日蓮である。

★ 「代表的日本人」は1894年に書かれ、1908年に再版されている。急速な近代化が進む中で、日本人とは何かを外国人にも示すために英語で書かれた。

★ 内村は日本の仏教史を簡潔にまとめたあと、真の信仰を目指し、不惜身命で行動した人物として日蓮を上げている。彼は、法華経を唯一最高の法とし、他宗に法論を挑み、国家諌暁を行い、その行いによってさまざまな迫害を受け、迫害を受ければ受けるほど自らの使命を自覚した。

★ 生誕800年という時期的な動機があったかどうか、2021年に発行された佐藤賢一さんの「日蓮」を読んだ。その生涯の概略は、萬屋錦之助さんが主役を演じた映画「日蓮」(1979年)などで知っていたが、それを思い出しながら読んだ。

★ 幼少期から修業時代。1253年、32歳の時の立宗宣言。1260年、幕府に提出した「立正安国論」。鎌倉の他宗を批判する布教を行い、襲撃にあったり、伊豆に流罪になったりする。遂には竜の口で斬首される寸前、不思議な自然現象が現れ、斬首は中止。佐渡への流罪となる。幕府内の騒動や蒙古来襲を予言したため赦免され、鎌倉に戻り三たび諌暁を行うも受け入れられず、身延山で後進の育成を行った。

★ 通史は年表でわかるが、小説の面白さは、当時の模様を作家のイマジネーションで描かれるところだ。

★ 佐渡での「塚原問答」や国家諌暁の場面が面白かった。

★ 明治以降も日蓮の教えは様々に派生し、僧として彼ほど好き嫌いが別れる人物も珍しい。先の内村鑑三も「闘争好きを除いた日蓮、これが私どもの理想とする宗教者であります」と締めくくっている。

★ しかし、闘争を抜きにして日蓮の魅力はない。彼は単なる信者でも、学者でもなかった。彼は自ら自覚するように「法華経の行者」であり、それゆえ批判(迫害)も当然のこととして受けたのだと思う。

コメント