見もの・読みもの日記

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2019年11月@関西:正倉院展(奈良国立博物館)

2019-11-06 23:30:50 | 行ったもの(美術館・見仏)

奈良国立博物館 御即位記念『第71回正倉院展』(2019年10月26日~11月14日)

 昨年は5月に「奈良博プレミアムカード」(特別展に2回入場可)を購入していたので、正倉院展も2日連続で参観した。今年は、奈良博で夏の特別展が無かったので、プレミアムカードを購入していなかったのだが、結局、この機会に更新した。まず三連休2日目(日曜)の夜間開館を利用して、購入したばかりのプレミアムカードで入館した。18時頃だったが、中は大盛況。

 冒頭に『紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)』と『緑牙撥鏤尺(りょくげばちるのしゃく)』。後者は「緑牙」と言うけれど地は紺色。白く削った部分が大きく、前者より文様がはっきりしている。藍染めの暖簾みたい。出品宝物一覧によると紅牙は前回出陳が2006年だが、緑牙は2000年とあった。『七條刺納樹皮色袈裟(しちじょうしのうじゅひしょくのけさ)』は、端裂を縫い継ぐ「糞掃衣」の体裁ということだが、控えめな色彩がパステル画のようできれい。聖武天皇が実際に着用した可能性が考えられるという。前回は1987年出陳というから初見のはずだが、似たような袈裟をどこかで見た覚えがある。

 『金銀平文琴(きんぎんひょうもんきん)』は今年の図録の表紙にも使われている、目玉のひとつ。厚い人垣で、なかなか展示ケースに近寄れなかったが、草花、動物、高士遊楽図、金の水波文、琴の音色を称える詩文と、多様な装飾に包まれた美品であることは遠目にも分かった。乙亥之年の墨書があり、開元23年(735)唐で作られたと考えられている。東新館の奥に進むと『鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ)』が6扇全て。第6扇の紙が際立って白いので、これだけ復元?と怪しんだが、図録の解説によれば全て当初のものとなっている。いずれも豊満な盛唐美人の姿だが、本屏風は日本製と見られるとのこと。

 西新館の始めは「宮廷の装い」を特集。『礼服御冠残欠(らいふくおんかんむりざんけつ)』は、あまりにも愛らしく繊細な、花や鳥のかたちをした金具、ゴマ粒のような玉類(色ガラス、琥珀、珊瑚、真珠)の残欠。反射的に東博の『正倉院の世界』展で見た塵芥整理の様子が思い浮かんだ。あとは赤いフェルトの履(くつ)、紺玉(ラピスラズリ)付きの石帯など。

 『金銀花盤(きんぎんのかばん)』は久しぶりに見た。盤の中央には、花のような角を持つ鹿が打ち出されている。裏面の刻銘から、唐の中央工房で作られ、唐の皇帝もしくは貴族から東大寺へ献納されたと考えられるそうだ。ああ、大唐長安へ想いが飛んでしまう。なお展示図録に、中国・河北省で出土した、同様に「花のような角の鹿」を打ち出した銀盤の写真が掲載されていて、興味深かった。古文書関係では『続修正倉院古文書別集 第四十八巻』が異色で、鏡背面の図様、人物図、万葉仮名の書状などをまとめたもの。「大大論」という文字を添えた、肩を怒らせ目をむく男の肖像は上司かなあ。

 閉館時間までねばれば、かなり人が減ると思うのだが、その気力がなくて、1時間くらいで出てしまった。19時を過ぎてもまだまだ入館待ちの列が続いていた。この日は奈良泊。

 そして、プレミアムカードの特典を活かして、翌日(三連休最終日)もう1回、奈良博に行った。朝9時開館のところ、7時10分頃に行って、初めて先頭から10人以内に並んだ。はじめ、いつもの新館のピロティではなく、外のテントに並ばせられた。たぶん防犯上の措置だと思う。9時を過ぎて、職員の方たちが出勤して来ると、ピロティに誘導された。

 入館後は実に快適で、『鳥毛立女屏風』をはじめ、前日最前列で見られなかった宝物をじっくり味わいながら、スイスイ進んで40分くらいで全部見てしまった。解説パネルにもしっかり目を通して、前日見逃していた点にもいろいろ気づいた。遠目に見て、何だ衣かと思っていた『袈裟付木蘭染羅衣(けさつきもくらんぞめらのころも)』が唐招提寺の鑑真和上像の着衣の形状と同じだという指摘は面白かった。あと万葉仮名の書状に添えられた釈文が、ちょっと違うのではないか(「まだ」→「また」?)というのも気になった。


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