見もの・読みもの日記

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洋風画、再び/ぞろぞろ・わいわい・人だらけ(板橋区立美術館)

2022-09-06 21:24:01 | 行ったもの(美術館・見仏)

板橋区立美術館 区制施行90周年記念・館蔵品展『ぞろぞろ・わいわい・人だらけ-狩野派も、それ以外も』(2022年8月27日~10月2日)

 江戸時代を中心に個性豊かな人物を描いた作品を展示し、人物図について思いを巡らせる機会を提供する。「狩野派も、それ以外も」というサブタイトルは板美(イタビ)らしいと思ったが、行ってみて驚いたのは、洋風画で有名な歸空庵(帰空庵)コレクションが16件も出ていたこと。そのひとつ、『西洋風俗図』は12幅並べて公開で眼福だった。

 展示構成は、描かれた人の数によって、1人、2人、3人以上という具合に作品をまとめているのが面白かった。「1人」の肖像画には謎が多い。はじめに極端な陰影をつけた『神農図』が展示されていて、作者名に「信方」とあった。信方?私がすぐに思い出したのは、大和文華館の『婦女弾琴図』である。ほかにも複数の初期洋風画を残しているが、画家の閲歴は全く不明だそうだ。仏教的主題も描いていることから、キリスト教徒として西洋画を学びながら、後に棄教した人物であるとも考えられているというのが興味深い。

 洋風画のタッチで清国人を描いた、めずらしい『肖像画』。像主はまだ若そうである。

 そして、本展のキービジュアルになっている『蘭人少年像』。2021年の展示レポートでも写真を撮ってきたが、また載せておこう。キャプションには「作者不詳(誰だ!謎が深まる人物)」とあった。肖像画の下に添えられた銅版画(イギリス国旗を掲げた帆船、馬に騎乗した男性図)から「外交上何らかの重要な立場にあった人物と想像される」そうである。もしかしたら、弘末雅士さんの『海の東南アジア史』に出てきたユーラシアン(ヨーロッパ人男性と現地人女性の間の子孫)なのかな、などと想像した。

 椿椿山の『浅野梅堂母像』は気品ある老婦人の肖像。着物の生地が余って皺の寄っている感じが、像主の小さな身体を表わす。しかし姿勢は正しく、小さな目も意志的。画家のモデルに対する敬意が感じられる肖像画である。

 人物が「2人」以上になると、必然的にその関係性に対する想像(妄想)が膨らむ。ライバルだったり、恋人どうしだったり。『喫煙若衆図』は恋の始まりらしいが、『酔李白図』も、そっちで妄想するか? ガラス絵の『清婦人図』は、怖いような「あやしい絵」の範疇だが、これが当時の美人だったのかなあ。以上が第1展示室。

 『西洋風俗図』12幅は、中央のホールに展示されていた。縦長の細い画面には、明るい空、草原(湖?)と遠い山並みを背景に、驢馬に乗る修道士、語らう男性たち、読書する修道士、楽器を演奏する人々など、1幅に1人~数人の人物が描かれる。右6面は和歌山地方で発見され、左6幅はパリのオークションで出品された後、日本へ里帰りしたものだという。

 第2展示室の「3人以上」にも、佐竹晦々『三蘭人図』という作品があったので画像を挙げておこう。キャプションに「阿蘭陀人の謎の集い」というけれど、どうも墨画(?)を見て品評しているようだ。

 そのほか、狩野典信の大作『唐子遊図屏風』や渡辺秀石『異国人図巻』が面白かった。

 第3展示室は、特に注目の作品を特集。雪村の『布袋図』が見られたのは、ごほうびみたいだった。日蹄斎北馬の『竜口対客・上野下野・桔梗下馬図』は、江戸城まわりに集まった群衆を「ウォーリーをさがせ」的に細かく描き込んだもの。いつまで見ていても飽きない。

 この展覧会、圧倒的な充実ぶりなのに【無料】なのがすごい。写真撮影も全面的に可。

 鑑賞後のランチは、ご近所の「いちカフェ」で。お店が続いていてよかった。


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