見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2014年10月@東京:東山御物の美(三井記念美術館)

2014-10-15 23:01:38 | 読んだもの(書籍)
三井記念美術館 特別展『東山御物の美-足利将軍家の至宝-』(2014年10月4日~11月24日)

 足利将軍家の絵画・茶器・花器・文具などのコレクションを、足利義政が山荘を営んだ東山にちなんで「東山御物(ひがしやまごもつ)」という。この言葉を覚えたのは、2004年4月17日~5月16日に根津美術館で開催された『南宋絵画』展のときだと思う。私はこのブログを2004年の5月21日から書き始めていて、残念ながら同展の感想は残していない。

 展示室1~3は工芸品。冒頭に片足を上げた鴨のかたちをした『古銅鴨香炉』。大きさは本物のカモくらいある。目の位置がちょっと変。次の唐物大茶入『銘・打曇大海』もおおぶりで、気持ちがくつろいでよい。この2点は初めて見たような気がする。出品一覧に所蔵者が記載されていないところを見ると、個人蔵なのだろうか。その後は、あ、見たことがある、という名品が続く。東京国立博物館の『馬蝗絆』、大阪市立東洋陶磁美術館の『油滴天目』も、わざわざのお運び。いや、今ではばらばらに散ってしまった東山御物を、こうして同時に眺め渡すことができるのは、貴重な機会だと思っている。

 絵画は、展示室4と7。冒頭に僧形の足利義満像(鹿苑寺蔵)。もう少し憎々しいイメージがあるのだが、垂れ目・垂れ眉の困り顔をしている。隣りに(伝)徽宗筆『鴨図』。足のデカい鴨で、言ってよければ、野卑な印象。それから大和文華館の『雪中帰牧図』2幅。これを、おなじみの、と思ってしまうのは、私が行動的な美術ファンだからで、東京では見る機会の少ない名品である。続いて、東博の『紅白芙蓉図』2幅。この2幅を、白から紅へ変化する酔芙蓉と思って眺めたことはなかった。東博の『梅花双雀図』と五島美術館の『梅花小禽図』は、もともと梅樹を中心とした大きな画幅から裁ち切られたものと推測されている。

 赤い官服(男装)の『官女図』(元時代)は個人蔵らしいが、ときどき見る。関西で見た記憶が多いような気がする。このへんまでは、彩色画が多く、きれいで(まあまあ)写実的で、分かりやすい。反対側の壁に移ると、梁楷筆および(伝)梁楷筆の墨画作品が、だだ~っと並んでいるのだが、これが将軍家の名宝?というヘンな絵ばかり(褒めている)。『布袋図』(香雪美術館)も『寒山拾得図』(MOA美術館)も『六祖破経図』(三井記念美術館)も、くしゃくしゃしたおじさんが乱暴な墨線で描かれているだけで、どこが美術品なの?と、むかしの私なら思ったことだろう。この汚い絵に魅力があると分かっていた足利将軍家の審美眼、なかなか凄い。

 展示室5(工芸)を挟んで、絵画続き。(伝)無準師範筆『達磨・政黄牛・郁山主図』3幅(徳川美術館蔵)は、呆気にとられて、笑ってしまった。特にマッチ棒みたいな驢馬に乗った郁山主の図が好きだ。無準師範と聞くと、偉いお坊さんで、雄渾で格調高い墨蹟しか思い浮かばなかったので、まさかのギャップ萌え。牧谿筆および(伝)牧谿筆の『布袋図』(京博)、『羅漢図』(静嘉堂文庫)、『老子図』(岡山県立美術館)(鼻毛の老子)も、赤塚不二夫を思わせるような、ヘンなおじさんばかり。しかし、梁楷にしても牧谿にしても、こんなふうに画家のイメージがはっきりまとまるほど、南宋絵画をまとめて見られる機会はめったにないので、やっぱりこの展覧会は素晴らしい。

 ふわふわした雰囲気の玉澗筆『洞庭秋月図』(文化庁所蔵)も好き。相国寺・普広院伝来の陸信忠筆『十六羅漢図』は、暗く茶ばんだ背景に、羅漢と従者・動物だけが、けばけばしいほど鮮やかな彩色で描かれている。見た記憶のないものだったので、慌てて相国寺(承天閣美術館)の「名宝紹介」のページを見に行ったら、16幅全ての画像が載っていた。展示に出たことあるのかなあ。まとめて見てみたい。

 ちょっとこわもての蔡山筆『羅漢図』。東博本は見たことがあるが、展示替え後は、個人蔵の別図が出る。あと、東山御物=唐物(中国物)と思っていたので、高麗仏画の『水月観音図』(伝・呉道子筆ではあるけれど)があったのは奇異な感じがしたが、足利義政が高野山金剛三昧院に寄進したものと確認できるそうだ。

 絵画は展示替えが多いので、どのタイミングで見にいくかは迷うところだろう。「秘仏」ならぬ「秘宝」に近い『桃鳩図』は、11/18~24展示だが、札幌在住の私は無理。あと10年か15年先に再び参観の機会が訪れますように。そのときは日本全国どこへでも駆けつけられる体制でありますように。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 京都・鍵善良房の菊寿糖 | トップ | 2014年10月@東京:高野山の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

読んだもの(書籍)」カテゴリの最新記事