見もの・読みもの日記

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2018年8月@関西:大和文華館の中国・朝鮮絵画+糸のみほとけ再訪

2018-08-27 23:33:14 | 行ったもの(美術館・見仏)
大和文華館 『大和文華館の中国・朝鮮絵画』(2018年8月24日~9月30日)

 週末、奈良・京都・滋賀を駆け足で。まず大和文華館が自ら「当館が世界に誇る」と公言する中国・朝鮮絵画コレクション展を参観。細かいことはチェックしていなかったけれど、満足間違いなしと思って見にきた。

 冒頭には李迪筆『雪中帰牧図』双福(南宋)と伝・趙令穣筆『秋塘図』(北宋)。どちらも同じくらいの小画面の水墨淡彩。『秋塘図』はちょっとメルヘンっぽく愛らしい風景画。あとは元代の絵画が数点で、明清代が中心なのだが、最近、明清絵画が好きになっているので、逆に嬉しい。朝鮮絵画はまとめて並べているところもあれば、中国絵画の間にふっと混ざっていることもあった。

 『文姫帰漢図巻』は第1拍から第4拍まで。絵が先にあり、それに対応する文言が後につく。匈奴として描かれているのは遼(契丹)の風俗。でも、つばの部分に白い毛皮を巻いたような三角帽子は、2017年版ドラマ『射鵰英雄伝』の金の風俗を思い出す。砂漠の場面に、雪(霜)をかぶったような赤と青の樹木が描かれていて「遼の絵画における樹木表現との近似が指摘される」とあったけれど、私は『春日権現験記絵』を思い出した。

 高其佩筆『閑屋秋思図』は初見ではないかもしれないが、印象に残った。指頭画の創始者と言われており、この作品も指頭画である。強い情念のこもった感じが長沢芦雪に似ている。張宏筆『越中真景図冊』は極端な遠近法など、西洋絵画の影響を受けているとあったかな。子供が風景に感じるような、素直な驚きや喜びが感じられて大好きな図冊。淡彩も美しい。方士庶筆『山水図冊』は精緻で繊細なモノクロ画。全12図のところ10図も見せてもらえてうれしい。エッシャーみたいに幻想的(奇想的?)だけど、ああ黄山の風景だなと分かるところもある。楊晋筆『山水図冊』は明るい淡彩で、日本人にはいちばん親しみやすい。そう、池大雅に似ている。

 ほかにも朝鮮絵画の『布袋図』を見ては隣りに光琳の『布袋図』(どれでも)を並べたいと思い、仇英の美人図を見ては鈴木晴信を思い浮かべた。やっぱり、中国・朝鮮絵画と日本絵画は、大きく括ればひとつの文化圏なのだと思う。『台湾征討図巻』もあり『聴松図巻』もあり、『太平山水図集』(谷文晁の奥書)あり蘇州版画あり。あ~以前の展覧会で見た見た、と思い出して嬉しくなる作品がたくさんあった。伝・朗世寧筆『閻相師像』も大好きな作品。乾隆帝の御代、こんな武人が闊歩していたのだろうかと想像を誘われる。

 元代の『六道図』(マニ教絵画)が久しぶりに出ていたのには驚いた。2011年に同館の『信仰と絵画』展で初めて見て、2012年に龍谷ミュージアムの『仏教の来た道』展で見て以来ではないかしら。板枠に嵌めたような絹本著色の絵画で、画面は縦に5分割されている。最上段が天上界、次段は広めの区画で教祖の図。次が人間界、その下が審判、最下段が地獄。教祖は白衣(袖口・襟元は赤)で両胸と両膝の外側に四角い書き判(セグメンタム)があることから教祖マニと分かる。胸のセグメンタムは、拡大写真でなんとか確認できたが、膝のものは分からなかった、なお向かって右隣には白衣の人物、左隣には赤衣の人物が座し、前にもう二人従者がいる。

 実は、東博・東洋館の中国絵画展示室で開催されていた『中国の絵画 宗教絵画の広がり』(2018年7月31日~8月26日)という特集展示を、先週、滑り込みで見に行って、個人蔵の『マニ説話画』(元~明時代・14世紀)を見てきたばかりだったのである。これは、白い衣に赤い袖口のマニと信者たちが小さく描かれていた。

 いや楽しかった。眼福だった。図録がつくられてないのは残念だったけど、コレクション展なので仕方ないだろう。

奈良国立博物館 修理完成記念特別展『糸のみほとけ-国宝 綴織當麻曼荼羅と繡仏-』(2018年7月14日~8月26日)

 前期に続き、再訪問。展示替えは多くないのだが、前回は前半(古代)でテンションを上げ過ぎて、後半、集中力が途切れてしまったので、今回は後半に重点を置いて参観した。江戸ものの繍仏はたいへん豪華で手が込んでいて、糸の発色もよくて美しい。そして、絹糸は光の当たり方で印象(輝き)が変わること、展示室でそれを体感するには、正面だけでなく、斜めから見るのがいいことを発見した。また、繍仏は表装もに刺繍を用いていることが多く、これって図録に収録されているだろうか?と心配したが、帰ってから確認したら、ちゃんと載っていた。

 会場では、白い髭のおじいさんと二人の尼さんが、中国語で話しながら、當麻曼荼羅を熱心に見ていた。ありがたいことである。それから、私は初めて「奈良博プレミアムカード」の「特別展は2回まで無料」という権利を行使してみたのだが、これはいいかもしれない。秋の正倉院展も2回来たいなー。

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