見もの・読みもの日記

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神戸市立博物館リニューアル基本計画(2016年3月)を読む

2017-08-25 00:13:48 | 見たもの(Webサイト・TV)
 先日、神戸開港150年記念特別展『開国への潮流』を見るために、神戸市立博物館に行った。どこかカフェで一休みしようと思いながら直行してしまったので、博物館の2階にある喫茶室「エトワール」に初めて入ってみた。ガラス細工の飾りケースがあったり、背の高い窓に赤いビロードふうのカーテンが下がっていたり、古き良き時代を感じさせる喫茶室である。上品なおばさんとおばあちゃんが店番をしていた。注文したヨーグルトアイスは、高級感のある金縁のお皿に乗って出てきた。



 そこへ常連らしいおじさんが入ってきて、おばあちゃんと話を始めた。おばあちゃんが「ここ、来年2月でなくなるんですよ」と聞き捨てならないことをいう。「博物館が改修するの。改修が終わると、1階に図書館と一緒になったカフェができるけど、ここはなくなってしまう」のだそうだ。

 あとで気になって調べたら、2018年2月5日~2019年11月1日まで、改修工事にともない休館予定であることが分かった。また「神戸市立博物館リニューアル基本計画について」というページも見つけた。PDF版の「基本計画」全文(2016年3月)も公開されている。

 読んでみた感想だが、「階段が主導線で不便」「女性トイレが不足」等、施設・設備の老朽化に関する指摘はもっともである。何しろ本館は昭和10(1935)年竣工の横浜正金銀行の建物の転用だし(美観的にはそこがよい)、新館も昭和57(1982)年開館当時のままだという。常設展示が開館以来、ほとんど変更されておらず、陳腐化しているというのも、はじめて気づいたけれど確かによくない。さらに収蔵庫の密閉性が不足しているなど、保存環境にも問題があるという。

 リニューアルによって、これらの問題が改善すれば、嬉しいことだ。しかし「基本計画」の目指す方向性は、必ずしも全面的に賛成できるものではない。15頁の「リニューアル後に目指す姿」では、「観光客に向けて」「国際的な文化交流の強化」、「市民に向けて」「ICT技術等の活用による観光資源との連携強化」とあり、結局「観光」かい、と毒づきたくなる。あと「参加型展示」は、教育現場で流行りの「アクティブ・ラーニング」と同じで、ちょっと手を抜くと、従来型展示より悲惨なことになると思う。

 リニューアル後も「全国規模の海外巡回展は引き続き積極的に開催」というのは、神戸市民のために重要だが、私が期待するのは、同館のコレクションや調査研究の成果を生かした「独自の特別展・企画展」である。昨年の『我が名は鶴亭』、今年の『遥かなるルネサンス』『開国への潮流』は、全く分野が違うのに、どれも素晴らしかった。こういう企画展ができるのは、優秀なスタッフが揃っているからだと思う。施設・設備も大事だが、ぜひ人にかけるお金もケチらないでほしい。

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