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見もの・読みもの日記

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すしやの段を初鑑賞/文楽・義経千本桜

2025-04-28 22:59:11 | 行ったもの2(講演・公演)

国立文楽劇場 令和7年4月文楽公演 第2部(2025年4月27日、15:00~)

 大型連休スタートの土日に有休を1日付け足して、関西方面で遊んできた。順不同になるが、まずは文楽公演から。今月は通し狂言『義経千本桜』が掛かっている。私は二段目「渡海屋・大物浦の段」と、四段目「道行初音旅」が大好きなので、どうしてもこの両者を選びがちで、実は文楽ファン歴40年になるのに三段目を見たことがなかった。一度は見ておくほうがいいかもしれない、と思って、いろいろ予定を調整して、今回は第2部を見ることにした。

・第2部『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)・椎の木の段/小金吾討死の段/すしやの段』

 第2部の主人公は、高野山に落ち延びた平維盛。その妻子である若葉の内侍と六代の君は、家臣の主馬小金吾だけを連れて、維盛を探す旅路を続けていたが、吉野下市の茶店で、土地のならず者である、いがみの権太に絡まれる。なんとか窮地を脱したものの、鎌倉方の追手に見つかり、小金吾は討ち死に。そこに通りかかった鮨屋の弥左衛門は、小金吾の首を持ち帰る。

 弥左衛門は、さきごろ熊野で出会った若い男を連れ帰り、弥助と名乗らせ、娘のお里の婿に取ろうとしていた。この弥助こそ維盛。弥左衛門は、かつて維盛の父・小松大臣重盛に恩を受けていたのである。

 そこに訪ねてきた若葉の内侍と六代。弥助の正体を知り、身分違いの恋に絶望するお里。さらに頼朝家臣・梶原景時が詮議のために到着。お里の兄である権太は、維盛の首を差し出し、若葉の内侍と六代に縄をかけて差し出す。梶原が去った後、怒り心頭の父・弥左衛門は権太の腹を刺す。

 瀕死の権太の述懐によれば、維盛と偽ったのは小金吾の首。内侍母子と見せかけたのは、権太自身の妻と息子だった。弥左衛門が考えた偽首計画を、金目当てのならず者の自分が演じることで、謀略家の梶原を欺いたという。しかし梶原が褒美として残していった頼朝所用の陣羽織には、袈裟衣と数珠が縫い込められていた。かつて池禅尼と重盛に命を救われた頼朝が、維盛に出家を促し、その命を救おうとしたのである。自らの計略が見抜かれていたことを悔しがりながら息絶える権太。維盛は髻を切り、僧として権太を回向して高野山へ向かう。

 そんな無茶な、あり得ん、みたいな展開なのが、文楽らしくて面白かった。私は源平の物語が好きなので、弥左衛門が「慈悲深い小松大臣に恩を受けたから」とか、頼朝が「池禅尼と重盛に命を救われたから」という動機には、そうだろう、あるある、と納得してしまう。ちなみに弥左衛門は船頭だった頃、重盛が唐の育王山に寄進しようとした三千両を盗んだ罪を赦されたという設定になっている。おお、相国寺承天閣美術館で見た「金渡(かねわたし)の墨蹟」の逸話だ!と思い出した。

 「椎の木」の冒頭を語った咲寿太夫さん(本公演から豊竹改め竹本へ)巧くなったなあ。登場人物の語り分けに、幅と余裕が出てきた。そのあとの三輪太夫さんも聞きやすかった。「すしや」は前が安定の呂勢太夫、清治さん。切が若太夫、清介さん。クライマックスの三味線のドラマチックで華やかなこと!人形は、いがみの権太の玉助さんが生き生きと楽しそうだった。お里役の豊松清十郎さんは、いま、女性を遣わせたら一番ではないかと思って注目している。

 維盛の最期って、結局はっきりしていないんだなあ、ということを、あたらめて調べて納得した。本作ではひとまず生き延びた六代は、やがて捕えられて鎌倉に送られ、処刑されてしまう。私は逗子に住んでいたことがあるので、六代御前の墓を何度か訪ねている。それなので「六代」の名前を聞くたびに、なんとも胸がうずいた。


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