見もの・読みもの日記

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極める楽しさ/橋を見に行こう(平野暉雄)

2011-07-14 01:41:10 | 読んだもの(書籍)
○平野暉雄『橋を見に行こう:伝えたい日本の橋』 自由国民社 2007.5

 三井記念美術館の『日本美術に見る「橋」ものがたり』を見たあと、ミュージアムショップで本書を見つけた。ま、関連がないとは言わないが、誰が買うんだ、こんな本、と思って手に取ったら、もう駄目。美しい写真の数々に目を奪われ、捨て置くことができなくなってしまった。

 紹介されている「日本の橋」は150箇所。意外なくいらい、知っているものが少なかった。「日本の名橋」「神社・お寺の橋」「庭園の橋」「鉄道の橋」とカテゴリーごとの代表作を紹介したあとは、北から地域別に紹介。「いかにも」という桜や紅葉に彩られた絵葉書ふうの写真もあるけれど、素っ気ない日常写真もある。

 歴史づいた建造物に惹かれる私にとって魅力的なのは、たとえば「弥彦神社玉ノ橋」(新潟県)。「公園の橋」沖縄編はどれもいい。「天女橋」「放生橋(円覚寺跡)」「識名園石橋」はどれも日本らしからぬ風景である。北海道の「タウシュベツ川橋梁」は知らなかった。日本とは思えない、驚愕の風景。「農繁期、湖の水位が下がると姿を現す」という説明を読んで、さらに驚愕する。フィクションの世界みたいだ。しかし、ネット上にもいろいろ写真が上がっているが、本書の写真にまさるものはないと思った。

 近代化遺産としては、やっぱり「碓井第三橋梁」には目がとまる。鉄道橋はどれもいいなあ。巻末に「橋の構造・形式と各部の名称」の早見表があるが、私は、トラス橋、それも三角形が橋の上側に並んでいる、典型的な鉄橋が大好きである。

 著者は本書で写真と文章を両方を担当しているが、一つのことを極めた博識に頭が下がる。50字~長くても100字足らずのキャプションに、経験を踏まえた、的確で有用な情報が詰まっている。「雄橋(おんばし)」(広島県)が「世界三大天然橋の一つ」なんて知らなかった。「こんにゃく橋」(徳島県)の「少し危険だが楽しさ思い出が詰まる橋」や「蓬莱橋」(大井川・静岡県)の「急に風向きが変わることがあるので、橋の真ん中を手をつないで渡るとよい」には、橋への愛情が感じられ、「方広寺石橋」(静岡県)の「石橋の上には、いつも羅漢様が安置されている。行く度に配置が代わっている」なんて、地味に可笑しい。

 どこを読んでも眺めていても飽きない。行ってみたい橋はたくさんあるが、巻末のアクセス案内を見ると「車で50分」など、車がないと難しいものも多そう。タクシーで行って、橋で止めてもらうか。それも物好きっぽくて、いいけど…。

 とりあえず、本書をミュージアムショップにおいた三井記念美術館の担当者さん、GJ!

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