○三上修『スズメの謎:身近な野鳥が減っている!?』 誠文堂新光社 2012.12
松原始さんの『カラスの補習授業』を読んで、ほかの鳥のことも知りたくなったので、大規模書店の生物学のコーナー(めったに行かない)で本書を見つけた。イラストの多いカラフルな装丁、大きめの活字、ですます調の文体。おや、子供向けかな?と思ったが、私がスズメについて知っていることは、小学生と変わらないので、気にせず読んでみることにした。
著者は、ある日、スズメについて何か研究はできないかと考えていて、「日本にスズメが何羽いるか数えてみたらどうだろう」と思いつく。これ、すごいな~。私なら、こんなこと一瞬は考えても、すぐ頭の中から追い払ってしまうのに。著者はこの難題に、一歩一歩とりくんでいく。まずは孫子の兵法「敵を知り己を知れば百戦危うからず」に従い、スズメの生態についておさらい。
それから自分はスズメの数を「どれくらいの精度で調べたいか」を確認する。だいたい一億羽とか、桁が分かればいいことにする。次にスズメの数は季節によって差があるので、時期(いつ)は繁殖期とし、方法(何を)はスズメの巣の数を数えることにする。「試しにやってみる」と、およそ500m×500mの調査に5時間かかることが判明。調査はアナログで、地図とボールペンを持って町に出て、目と耳で巣を探して歩く。風がなく、天気のよい早朝がよい。双眼鏡は怪しまれるので使わない(やっぱりw)。
場所(どこ)は、商用地・住宅地・農村・大規模公園・森の5つの環境に分け、北から南まで秋田・埼玉・熊本の3つの県で調査を行った。そして、5つの環境が日本にどのくらいあるかを調べ、パソコンに計算させて、日本全体にある「巣」の数を推定する。1つの巣に親鳥2羽がいると考え、2倍にすると、約1800万羽という数字が出た。おお~小学生にもスッキリ理解できる調査のやりかただ。精度に疑問はつけられるけど、ともかく「見当もつかない」ことに「見当をつける」には、こういう段階を踏めばいいんだな、ということはよく分かる。
そのあとも著者は数についての研究をしようと考え、スズメの個体数の減少を科学的に確認するという課題に取り組む。そして、スズメの減少は確からしい(1990年から2010年の20年の間に、少なくとも5割は減少した)という結論に至る。では、なぜスズメは減少したのか。NPO法人の協力を得た全国調査によって、農村では2羽や3羽の子スズメを連れた親スズメを見かけるのに、街中(特に商用地)では、ほとんどの場合、1羽の子スズメしか連れていないことが判明する。農村に比べてエサが少ない街中では、スズメの少子化が起きていたのである。これは、思ってもいなかった結論でびっくりした。
確かに私が子供だった頃は、もっとスズメの姿をよく見たし、声を聞いたと思う(東京の下町の話)。ハトやカラスに比べると、スズメは都市では生きにくいのかなあ。特別、スズメに愛情を感じたことはなかったけど、20年間で半減と聞くと、あらためてさびしい。スズメが減少するとどうなるのか(生態系にどんな影響が出るのか)、どうすればいいのか、という点について、著者は科学者らしく、あくまで慎重である。
最後に著者はもう一度「なぜスズメの研究を始めたのか」に戻って、「みなさんも調べたいことがあったら、おもしろそうだからという理由だけで調べてみるといいと思います」と語る。大学に入り、研究者になり、学会で発表したり、大学の先生になることについても淡々と語られている。「運よく大学の先生になったら」「びっくりするくらいたくさんの雑用があるのですが」は本音だろうなあ。研究者の道は平坦ではないけど「大きな楽しさがある」という言葉に力づけられる。あと、鳥学会は参加しやすい学会で、サンダル・Tシャツ姿で参加している人もめずらしくなく、テントから学会に参加する学生もいるって本当なのか(笑)。
多数のスズメを含む、かわいいイラストは森雅之さん。『夜と薔薇』(1979年)など、私の大好きだった漫画家さんだ!!こんなところで活躍されていたとは知らなかった。

著者は、ある日、スズメについて何か研究はできないかと考えていて、「日本にスズメが何羽いるか数えてみたらどうだろう」と思いつく。これ、すごいな~。私なら、こんなこと一瞬は考えても、すぐ頭の中から追い払ってしまうのに。著者はこの難題に、一歩一歩とりくんでいく。まずは孫子の兵法「敵を知り己を知れば百戦危うからず」に従い、スズメの生態についておさらい。
それから自分はスズメの数を「どれくらいの精度で調べたいか」を確認する。だいたい一億羽とか、桁が分かればいいことにする。次にスズメの数は季節によって差があるので、時期(いつ)は繁殖期とし、方法(何を)はスズメの巣の数を数えることにする。「試しにやってみる」と、およそ500m×500mの調査に5時間かかることが判明。調査はアナログで、地図とボールペンを持って町に出て、目と耳で巣を探して歩く。風がなく、天気のよい早朝がよい。双眼鏡は怪しまれるので使わない(やっぱりw)。
場所(どこ)は、商用地・住宅地・農村・大規模公園・森の5つの環境に分け、北から南まで秋田・埼玉・熊本の3つの県で調査を行った。そして、5つの環境が日本にどのくらいあるかを調べ、パソコンに計算させて、日本全体にある「巣」の数を推定する。1つの巣に親鳥2羽がいると考え、2倍にすると、約1800万羽という数字が出た。おお~小学生にもスッキリ理解できる調査のやりかただ。精度に疑問はつけられるけど、ともかく「見当もつかない」ことに「見当をつける」には、こういう段階を踏めばいいんだな、ということはよく分かる。
そのあとも著者は数についての研究をしようと考え、スズメの個体数の減少を科学的に確認するという課題に取り組む。そして、スズメの減少は確からしい(1990年から2010年の20年の間に、少なくとも5割は減少した)という結論に至る。では、なぜスズメは減少したのか。NPO法人の協力を得た全国調査によって、農村では2羽や3羽の子スズメを連れた親スズメを見かけるのに、街中(特に商用地)では、ほとんどの場合、1羽の子スズメしか連れていないことが判明する。農村に比べてエサが少ない街中では、スズメの少子化が起きていたのである。これは、思ってもいなかった結論でびっくりした。
確かに私が子供だった頃は、もっとスズメの姿をよく見たし、声を聞いたと思う(東京の下町の話)。ハトやカラスに比べると、スズメは都市では生きにくいのかなあ。特別、スズメに愛情を感じたことはなかったけど、20年間で半減と聞くと、あらためてさびしい。スズメが減少するとどうなるのか(生態系にどんな影響が出るのか)、どうすればいいのか、という点について、著者は科学者らしく、あくまで慎重である。
最後に著者はもう一度「なぜスズメの研究を始めたのか」に戻って、「みなさんも調べたいことがあったら、おもしろそうだからという理由だけで調べてみるといいと思います」と語る。大学に入り、研究者になり、学会で発表したり、大学の先生になることについても淡々と語られている。「運よく大学の先生になったら」「びっくりするくらいたくさんの雑用があるのですが」は本音だろうなあ。研究者の道は平坦ではないけど「大きな楽しさがある」という言葉に力づけられる。あと、鳥学会は参加しやすい学会で、サンダル・Tシャツ姿で参加している人もめずらしくなく、テントから学会に参加する学生もいるって本当なのか(笑)。
多数のスズメを含む、かわいいイラストは森雅之さん。『夜と薔薇』(1979年)など、私の大好きだった漫画家さんだ!!こんなところで活躍されていたとは知らなかった。