見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2014年11月@関西:京へのいざない:後期(京都国立博物館)

2014-11-15 20:03:04 | 行ったもの(美術館・見仏)
京都国立博物館 平成知新館オープン記念展『京へのいざない』(2014年9月13日~11月16日/第2期10月15日~11月16日)

 11/8(土)奈良博の正倉院展の後にまわってみた。特別展『国宝 鳥獣戯画と高山寺』は120分待ち。ハナから入れるとは期待していなかったので、まっすぐ常設館(平成知新館)のほうに向かう。京博のホームページを見ると、9月にはスカスカだった常設展示の情報がだいぶ整えられてきたようだ。それでも主な展示室については、しっかり記録を取っておくことにしよう。

■特別展示室(桃山 秀吉とその周辺)

(1)ポルトガル国印度副王信書 妙法院
(2)豊臣秀吉像 西教寺
(3)豊臣秀吉仮名消息 高台寺
(4)桐矢襖辻ヶ花道服 京博
(5)後陽成天皇宸翰御消息 京博
(6)鳥獣文様陣羽織 豊臣秀吉所用 高台寺
(7)吉野花見図屏風 細見美術館
(8)豊臣棄丸坐像 隣華院
(9)豊臣棄丸所用小形武具 妙心寺
(10)倶利伽羅龍守刀 妙心寺
(11)金銅五三桐紋釘隠 京博?

 室中央の平たいケースに(1)。むかし妙法院で見たことがある。大きな房つきの紐が付属している。紙本?と思ったが「羊皮紙」と書いているサイトを見つけた。行頭の「C」に豊臣家の桐紋がデザインされている。(2)~右手前から時計の逆まわりに。『桐矢襖辻ヶ花道服』と『鳥獣文様陣羽織』がどちらも素晴らしい。前の週にNHKで井浦新さんが京博を紹介する特集番組をやっていて、ゲストの帯問屋の社長が「こういう派手な陣羽織を着ざるを得なかった秀吉の心中」を思いやって、しみじみしていたのが印象的だった。

■2F-2室(仏画)「密教信仰の名品」

(1)星曼荼羅図 久米田寺
(2)宝楼閣曼荼羅図 (東寺旧蔵)
(3)聖観音像 島根・峯寺
(4)如意輪観音像 
(5)孔雀明王像 安楽寿院
(6)烏枢沙摩明王像 京博
(7)閻魔天像(東寺伝来)
(8)十二天像のうち帝釈天 西大寺
(9)十二天像のうち水天・羅刹天 京博

(1)~時計の逆まわり。『如意輪観音像』は最近、発見されたもので、院政期の作と見られている。安楽寿院の『孔雀明王像』は、光背の外側が孔雀の羽根で覆われていてゴージャス。『烏枢沙摩明王像』はトイレの神様だと思っていたが、台密では五大明王の一、手足に絡みつく蛇が怖い。東寺伝来の『閻魔天像』は人頭杖を持って白牛に座る。太りじしの、ほんのりピンク色に上気した肉体が、力士みたいに美しい。西大寺の『帝釈天像』は足の短い白象(コーギーみたい)の、マンガのような三日月目がかわいい。

■2F-3室(中世絵画)「美を尽くす-着色花鳥画-」

(1)四季花鳥図屏風 芸愛筆 京博
(2)梅樹小禽図 遮莫筆 京博 
(3)山茶小禽図 瑞溪周鳳賛 京博
(4)花鳥図 祥啓筆 京博
(5)花鳥図 喚舟印
(6)牡丹・芙蓉図座屏 宗誉筆 真珠庵
(7)四季花鳥図屏風 雪舟筆 京博

 以下、全て(1)~時計の逆まわりで記載。愛らしい花鳥図が並んだ。個人的には『山茶小禽図』が特に好き。その中で、雪舟の『四季花鳥図屏風』には、独特のアクの強さ、重苦しさがあり、「入明画家」の個性をアピールしている、という解説をなるほどと思う。

■2F-4室(近世絵画)「桃山画壇の巨匠たち」

(1)飲中八仙図屏風 海北友松筆 京博
(2)枯木猿猴図 長谷川等伯筆 龍泉庵
(3)花鳥図襖(聚光院方丈障壁画)狩野永徳筆 聚光院
(4)山水図襖 雲谷等顔筆 黄梅院

 等伯の『枯木猿猴図』二幅は、大徳寺の牧谿筆『観音猿鶴図』三幅対による、と解説にあった。便利な時代なので、ネットで検索して画像を見比べてみると、確かに猿猴(テナガザル)のもふもふしたぬいぐるみ感は似ているけど、枯木の枝を一筆で書き流すような乱暴力は、等伯の個性だと思う。永徳の『花鳥図襖』は、大徳寺・聚光院の全38面の襖のごく一部。右に低く枝を張り出した梅、その下を渓流が流れ、何種類かの小禽が集まる。左には松と鶴を描く。大きく嘴を開けた鶴の鳴き声、渓流の水音が聞こえてきそうで、動的な襖絵。雲谷等顔の『山水図襖』は、典型的な中国絵画のお手本どおりという感じがした。

■2F-5室(中国絵画)「明清絵画と京都」

(1)九段錦図冊 沈周筆 京博
(2)黄山図冊 石濤筆 京博
(3)観音図帖 陳賢筆 隠元隆題 万福寺
(4)桃李園金谷園図 仇英筆 知恩院
(5)倣元四大家山水図 王原祁筆 京博
(6)花隖夕陽図 寿平筆 京博
(7)梅花図冊 李方膺筆 京博
(8)平沙秋思図巻 張崟筆

 陳賢筆『観音図帖』は18図あり(残存し?)、静嘉堂文庫や白鶴美術館に分有されているそうだ。京博の常設館がリニューアルで閉まっている間に、明清絵画の来歴に関心ができたので、『九段錦図冊』の末尾に長尾雨山と内藤湖南の書入れがある(展示はされてなかった)とか、『倣元四大家山水図』が上野精一コレクションであるなどの解説を踏まえながら、作品を鑑賞する。

■1F-2室(絵巻)「宮廷貴族の信仰と美」

(1)法華経巻第五
(2)融通念仏勧進状 禅林寺
(3)平家物語絵巻(御産段)
(4)粉河寺縁起絵巻 粉河寺
(5)法然上人絵伝 巻九 知恩院

 この「京へのいざない」展、「教科書で見たことがある」とか「リニューアル前の京博でよく見ていた」作品が大半で、あまり驚きがないと思っていたら、不意打ちをくらった。まず『法華経巻第五』は絵入りの冊子という、非常に珍しい形態(扇面ではない)。所蔵者は明らかにされていないが、個人蔵なのだろうか。禅林寺(永観堂)所蔵の『融通念仏勧進状』(室町時代)は、巻末に華やかな来迎図を描くが、往生者の姿が描かれていないのが、時代を写しているようで面白かった。『平家物語絵巻』(16世紀・室町時代)は「小絵」と言われる判型で、モノクロの絵巻。「平家物語」享受史の貴重な資料だと思われるが、全く存在を知らなかったので、見ることができてうれしい。これも個人蔵?

 中宮徳子が皇子を出産し、人々が喜びあう場面。兄の重盛が重盛は桑の弓、蓬の矢で四方を射て、災いを払う。すでに僧形の後白河法皇も登場する。単にお祝いに駆けつけたのかと思ったが、原文を確認したら、「どんな悪霊でもこの老法師がいるうちは近づけない」と凄んで安産を祈っていたらしい(笑)。なお『法然上人絵伝』巻九(展示は11/3まで)にも端坐して往生する後白河法皇の姿、さらに法然が蓮華王院で催した法皇の三十三回忌の様子が描かれている。まあ、後白河法皇は、京博にとって、永遠のご近所さんだから。

 この日は京博だけで観光を切り上げようと思っていたが、つい欲が出て、京阪七条から、坂本の三井寺(園城寺)に向かってみる。しかし、思ったより時間がかかってしまい、結局、西国本尊(如意輪観音)のご開帳と、その近くのお堂で開催されていた井浦新さんの写真展を見るだけでタイムアップしてしまった。くう~。いつかまた、ご縁があることを信じて、長生きすることにしよう。

 それから京都駅に戻り、特急「まいづる」→東舞鶴経由で、小浜線の若狭本郷に18:30過ぎ到着。あまりはもう真っ暗。幸い、駅前に1台だけ停まっていたタクシーで、ホテル「うみんぴあ大飯」に連れていってもらう。「おひとりで観光ですか?何も見るものないでしょう」と地元の運転手さんに不思議がられて、苦笑。しばらく会話して「小浜では秘仏めぐりのバスが人気らしいね」というので、「あの、明日は友人とそのバスに」と答えたら「ああ~」と納得してもらえた。以下、続く。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2014年11月@関西:正倉院展... | トップ | 2014年11月@関西:おおい・... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
補足いたします (鴨脚)
2014-11-17 10:22:07
しばらく御無沙汰をしております。
職場が北海道になられたのですね。相当な強行軍で回られていますが、健康にはくれぐれも御注意ください。

さて、(1)法華経巻第五と(3)平家物語絵巻(御産段)は、お書き頂いたとおり個人の所蔵にかかるもので、作品自体は梅津次郎先生の著作『絵巻物叢誌』(法蔵館 1072)に二つとも掲載されています。御覧いただけると面白いことがわかりますよ。
鴨脚様 (jchz)
2014-11-20 21:50:35
こんにちは、お久しぶりですね。コメントいただけて嬉しいです。

『絵巻物叢誌』、どこで手に入るだろうかと悩むまでもなく、勤め先の書庫で眠っているのを見つけて借りてきました。

ちょっとネットで検索することを調査だと思っている昨今、古書をひもとくと、きちんとした先行研究があるんだなあ、ということが分かって、勉強になります。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

行ったもの(美術館・見仏)」カテゴリの最新記事