■国立民族学博物館 みんぱく創設50周年記念特別展『日本の仮面-芸能と祭りの世界』(2024年3月28日〜6月11日)
関西旅行最終日は朝から万博記念公園へ。早めに着いたので「平和のバラ園」で色とりどりのバラを眺めてなごみ、開館時間と同時に特別展示館へ入場する。本展示では、仮面の役の登場が印象的な各地の芸能や祭りの様相を中心に、あわせて仮面の歴史、仮面と人間の関係などを紹介し、仮面と人々の多様なかかわりについて考える。1974年に創設された民博だが、東京在住の私が初めて参観したのは、1990年の『赤道アフリカの仮面』展ではなかったかと思う。以来、民博と言えば仮面、の印象がある。
今回は日本の仮面なので、アフリカや東南アジアの仮面のような、解釈不能のインパクトはないかな、と思いながら見ていった。伎楽、能楽、神楽などに登場する、異形ではあるがおなじみのキャラクターたち。そうしたら途中でコイツが出て来た。鹿児島県・薩摩硫黄島のメンドンである(2階展示室の最後に撮影可能な展示あり)。
展示ケースの上方にスクリーンがあって、祭礼(硫黄島八朔太鼓踊り)に登場して乱暴狼藉の限りを尽くす「天下御免のメンドン」の動画が流れている。このビデオは、確か常設展示室でも流れているものだが、抜群に面白いのでつい見入ってしまう。このほかにも奄美群島の油井の豊年踊り、鳥取の麒麟獅子、鎌倉御霊神社の面掛行列などの動画が流れていた。いちばん驚いたのは、初めて知った「面劇」の資料(仮面、徳島・石井町所蔵)と動画。昭和10年代に面劇師・花之家花奴が始めた芸能で、義太夫の一場面をひとりで演じるものだという。
2階展示室では「神々」「鬼」「霊獣」などのカテゴリーに分類したり、仮面を「付ける」「外す」という行為に着目したり、さらにお祭りの露店で売られるお面(小さい頃は欲しくて買ってもらったなあ)やプロレスラーの仮面にも着目する。
■国立民族学博物館 みんぱく創設50周年記念企画展『水俣病を伝える』(2024年3月14日〜6月18日)
常設展エリアで開催されている企画展。水俣病という現象(体験)そのものというよりも、水俣病という体験を伝える活動の魅力と、そこから学べるものの可能性を探る。 民博教授の平井京之介さんが、水俣でのフィールドワークを通じて考えたこと・感じたことを丁寧に語りかけるような構成になっている。水俣病だけが有名になってしまった今の水俣は、豊かな自然と美しい海の町であること、一方で今も続く「戦い」への強い意志など、考えさせられることが多かった。
■大阪日本民藝館 春季特別展『そばちょこ 衣装持ちの器』(2024年3月2日~7月16日)
民博には何度も来ているのに、バラ園を挟んで向かい側の大阪日本民藝館には入ったことがなかった。今回『そばちょこ』に惹かれたので初訪問。本展は、蒐集家の佐藤禎三氏より1979年に寄贈された古伊万里そば猪口コレクション3,000点の中から、約1,000点を展示する。確かに数量が圧倒的なのは分かったが、もう少し精選してくれたほうがよかったなあと感じた。そば猪口、東京育ちで蕎麦を食べる機会の多かった私にはなじみの食器だが、思い当たる柄は、ふつうの網目や蛸唐草文である。高級そば屋に行くと色絵のそば猪口もあるのかしら。