見もの・読みもの日記

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2016大晦日・大河ドラマ『真田丸』に感謝

2016-12-31 12:43:52 | 見たもの(Webサイト・TV)
〇NHK大河ドラマ『真田丸』全50回

 久しぶりに大河ドラマを完走し、12月30日の総集編もガッツリ見てしまった。まずは楽しい1年が送れたことに感謝したい。あまり期待はしていなかった。私は、これまで三谷幸喜脚本のドラマや映画を1本も見たことがなかった。世間で人気と聞くと、じゃあいいかな、と思ってしまうひねくれ者なのである。戦国時代にもあまり関心がないので、いつ脱落してもいいくらいの気持ちで見始めた。しかし、ついに脱落しなかった。

 1回1回に必ず見せ場があり、「今日は無駄」だと思った回がない。魅力的な人物が次々に登場し、ひとり退場するとその次、という具合で、1年間を通じてドラマのテンションが下がらなかった。序盤は真田昌幸を演じた草刈正雄に持っていかれたし、遠藤憲一の上杉景勝、村上新吾の直江兼続の上杉主従コンビは、最終回まで出演するのだが、『天地人』の中途半端なイメージしかなかった私には、登場当初、あ~こういう描き方があるのか!!と膝を打った。高嶋政伸の北条氏政は怪演の域。

 小日向文世の豊臣秀吉を含め、こうした先行世代が活躍(というより狼藉)をしている間、主人公の源次郎信繁(堺雅人)は、じっと彼らを見ている。慌てたり、驚いたり、事態を変えようと少し動いたりもするが、基本的には父・昌幸や秀吉の行動を見つめている(実際にそういうカットが多くて、いつも必死で何かを感じ、考えているふうな堺さんの表情が好きだった)。私は、そんなに多くの大河ドラマを見てきたわけではないが、だいたい主人公というのは、5~6月頃に「覚醒」して、ただものではない大人物に変貌するものだと思っていたので、全く覚醒する様子のない信繁は新鮮だった。信繁は、少年の頃の純粋さや、気遣いができて、少し頼りない次男坊らしさを残したまま、自然に大人の武将になっていく。総集編であらためて序盤を見直して、どこかで覚醒したわけでもないのに、変化の幅に感嘆した。

 幸村が大坂城に参ずる第41回「入城」の放映が10月16日。ここから最終回(12月18日)までの2ヶ月は、表現する語彙がないくらい素晴らしかった。戦国史に疎い私は、幸村以外の豊臣方の武将たちを、ほぼ初めて知ったのだが、当分このキャスティングの印象は上書きされないと思う。

 10年くらい前に池波正太郎の『真田太平記』を読んだときは、大阪の地理に全く不案内で、茶臼山ってどこ?という感じだった。今回はさすが大河ドラマで、『ブラタモリ』などの支援もあって、だいぶ分かるようになった。道明寺とか八尾のあたりが戦場だったことを初めて知った。「真田山」の地名が残る真田丸跡周辺も歩いてみる機会があって、とても面白かった。

 最終回の、幸村と家康の一騎打ち→幸村が馬上筒(短銃)を構える→駆けつける秀忠→幸村の自害、という結末は、史実を曲げない範囲のフィクションとして、よくできていたと思う。内野聖陽の徳川家康は魅力的だった。私は初めて家康という歴史上の人物に親近感を持った。大坂城の人々の最期は描かず(黒煙をあげる天守閣のカットまで)、幸村の死でドラマを終えるという判断は、いさぎよいドラマの作り方だと思った。ドラマ本編では、このあと、旅の途中の兄・信之の守り袋の中の六文銭がチャリンと鳴り、弟・幸村の死を暗示させる。そして、「参る」とだけ言って踏み出す信之で全編を終わりにしたのは、何かさわやかで気持ちのいい結末だった。幸村は風のように去った。しかし、領地と家名を守る真田家の戦いは続く、と言っているようで。総集編がこの部分をカットして、幸村の自害で「完」にしたのは、ちょっと納得がいっていない。

 公式サイトには、最終回放映後、時代考証の三人、黒田基樹さん、平山優さん、丸島和洋さんのインタビューが掲載されていて、興味深かった。黒田先生が「近年の戦国史研究の成果を出来る限り反映させたい」という思いで取り組み、「かなり反映させることができた」とおっしゃっているのが嬉しい。ちゃんとした歴史研究は、作家の創作に負けないくらい面白いのだよ。私は丸島和洋さんのツイッターをフォローしていて、いろいろ勉強になった。

 2016年は『真田丸』があってよかった。ドラマの関係者と、楽しい二次創作(丸絵)をSNSに流してくれた皆様、本当にありがとう。

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