見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

蘭州・寧夏から内蒙古2010【10日目】フフホト

2010-08-28 02:34:24 | ■中国・台湾旅行
■盛楽博物館

 フフホトの東南、和林格尔(ホリンゴル)県にある博物館。今回のツアーの手配をした友人の話では、ホリンゴル県の壁画墓を見たいというオファーを出したところ、ユーラシア旅行社から、この博物館でも見られる、と教えられたそうだ。「本物はないかもしれないんですけどね」というので、あまり期待を持たないよう、自戒する。展示室をひとまわりして、最後に中央の「壁画室」に入ろうとして、びっくり。確かに複製は複製だが、壁画墓を丸ごと複製にしてしまっていたのだ。これは楽しすぎる。館内は撮影禁止なのだが、誰も見ていないので1枚、いや2枚…。





 なお、ホリンゴルから中原に進出した拓跋氏の足跡をたどるパネルで、平城(=山西省の大同)を紹介すべきところ、日本の奈良の地図が展示されていたのには苦笑してしまった。どうもネットから適当に画像を拾って解説パネルを作っているようで、あまりちゃんとした学芸員がいないのではないかと思われる。とはいえ、この博物館、向かいに工場を構える蒙牛乳業グループが強くサポートしているらしい。蒙牛乳業の社長は、瓶洗いから始めて、国営企業の伊利を追い越すに至った立志伝中の人。貧しい人々に教育や就労の機会を提供することにも熱心で、中国の繁栄は(共産党政府ではなく)こういう民間人に支えられているのだなと思う。

■王昭君墓

 ここも伝説に基づく王昭君墓のひとつに過ぎないが、観光地としては人気。併設の昭君博物館は、出土文物だけでなく、王昭君のイメージを使った近現代資料(ポスター、レコード、商品パッケージ、人形、日本製の紙芝居まで!)を展示していて面白かった。中国の博物館も、ようやく近現代を「歴史」として扱う方法を覚えてきたんだな…と思う。

■大召(だいしょう)

 昼食後はフフホト旧城内の寺院めぐり。こんなに(歩いて次に行けるくらい)寺が密集しているとは思ってもいなかった。フフホトは、16世紀にアルタン・ハーンによって築かれた古都であるが、アルタンは晩年にダライ・ラマ3世(事実上の1世といわれる)に帰依してチベット仏教に改宗し、数多くのチベット仏教寺院を建立した。そのため、市の中心部に今も多くの寺院が残っているのだ。

 しかし、近年の改修で往時の面影が壊されてしまったところも多い。大召は、いちばん奥の本堂の、さらに奥の仏殿まで入ると、龍の彫刻が巻きついた柱、古風な趣きの壁画を見ることができる(これらに銀製の大仏を加えて「大召三絶」というらしいが、あまり日本人の感覚には合わない)。

■座力図召(しりとしょう)

 ちょうど奥の仏殿に入ったとき、一生懸命、五体投地を繰り返している少年僧がいた。終わると、彼は太鼓を叩いて仲間を呼び集め、まもなく午後3時のお勤め(読経と奏楽)が始まった。ときどき、先生らしい年長の僧が、厳しい表情で少年たちの様子を見回っていた。見どころは美しく装飾されたラマ塔。



 また、山門を入ってすぐ、参道の左右に立つ「御碑亭」には、康熙帝の親征を記念した「康熙紀功碑」が立っている。1693年、モンゴル族のハルハ諸侯の要請に応えてオイラート族ジュンガル部を討伐したもので、これ以後、モンゴル族は清朝の政治体制下に組み入れられていく。康熙帝については、フフホトの月明楼という酒館に「微服私訪」したという伝説も伝わり、後世、その様子を描いた有名な絵画もあるそうだ。大召、座力図召にほど近い広場に「月明楼」の名前を掲げる大きなレストランもあった。

■五塔寺

 清の雍正年間に建立。七層の方形の金剛座の上に、五つの小塔がそびえる。金剛座の上までは登ることができる。モンゴル、チベット、サンスクリットの3種の文字で書かれた金剛経や、天王、菩薩、天馬、迦陵頻伽などの華麗な彫刻で装飾されている。塔の初層の壁に、モンゴル文字で星の名前を記した天文図(蒙文天文図)が収められているが、保護ガラスに西日が反射して、ほとんど読めず。

 まだ夕食まで時間があったので、ガイドさんの案内で「内蒙古のお土産が買えるところ」へ連れていってもらう。以前は、こういうケースで、外国人(特に日本人)をターゲットにした高級商店に連れていかれるのが常だったが、この数年、中国では日本人旅行客が減り、代わって国内の旅行ブームが高まっている。そのため、今回連れていってもらった商店も、主要ターゲットは中国南方からのお客さんで、価格は比較的リーズナブル。私はめずらしく図書以外に散財して、カシミアのマフラーを買う。

 最後の夕食は「羊肉料理が食べたい」とリクエストしてみたところ、「自分の友だちが民族音楽ショーのあるレストランを経営しているから」ということで、郊外の野生生態動物園(?)に向かう。しかし、結局、経営者のおじさんと挨拶はしたが、民族音楽ショーは見られず。まあ食事は美味しかったので、いいけど。

 ホテルに戻ってみると、私と友人の部屋に湯たんぽが置かれ、デスクにはメッセージつきで黒砂糖茶のサービスが。実は、このホテル、水まわりが不調で、昨日はトイレを詰まらせたあげく、トイレットペーパーを全部使い切ってしまったのである。それを見て、お腹を壊した客がいると判断しての特別サービスではないかと思われる。同行の友人(男性)の部屋には「今日は特別暑かったから」というメッセージつきで別の飲物(菊茶)が届けられていた。最近は中国のホテルでも、このように細やかなサービス合戦が行われているらしい。



(9/4記)

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