見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2024年4-5月展覧会拾遺(その1)

2024-05-12 21:25:53 | 行ったもの(美術館・見仏)

すっかり書き漏らしてしまったものも多いのだが、連休前後に行ったものを中心に。

根津美術館 特別展『国宝・燕子花図屏風 デザインの日本美術』(2024年4月13日〜5月12日)

 最終日の今日、ようやくチケットが取れて見て来た。恒例の国宝『燕子花屏風』の展示に加え、取り合わせにも選りすぐりの名品が並ぶ。伊年印『四季草花図屏風』はやっぱりいいなあ。草花の愛らしさ・美しさが完璧。ん?見慣れないものがある?と思ったのは『桜芥子図襖』(大田区龍子美術館)で、4面の金地襖の上半分は満開の桜の枝で覆われていいる。下半分には紅白の芥子のほか、アザミ、スミレ、タンポポなどの草花。伊年印、宗達工房の作品だが、川端龍子は妻子のための持仏堂と仏間の仕切りに用いていたそうだ。

 展示室5は「地球の裏側からこんにちは!-根津美術館のアンデス染織-」という新機軸。もっとも展示品は、根津嘉一郎が昭和初期に収集したものだという。バラカス・ワリ・チム・チャンカ・インカなど、該当する文化名で分類されていたが、一番古いバラカス文化(紀元前~前3世紀)の図柄が意外とポップで楽しかった。ボーダーシャツにホットパンツの女子みたいな人物文様もあった。遠山記念館から特別出陳の『羽毛縫付裂 双頭動物文様』(ワリ文化、8~11世紀)にもびっくり。胴の前後に頭のついたオオカミみたいな動物が、背景も含め、色とりどりの鳥の羽根で描き出されていた。

静嘉堂文庫美術館 静嘉堂文庫竣工100年・特別展『画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎 「地獄極楽めぐり図」からリアル武四郎涅槃図まで』(2024年4月13日~6月9日)

 同館が所蔵する松浦武四郎ゆかりの品と、松坂市の松浦武四郎記念館の所蔵品をあわせて展示。なので、けっこう初めて見るものもあった。武四郎と暁斎の交流は明治の初め頃からで、有名な『武四郎涅槃図』(武四郎記念館所蔵)は暁斎が描いた。2013年の静嘉堂の展示でも、2018年に北海道博物館で見た展示でも、この涅槃図は写真パネルだったので、実物を見るのは初めてかもしれない。意外と小さいな、という印象だった。川喜多半泥子の祖父・川喜多石水が武四郎の幼なじみだったというのは初めて知った。石水美術館、千歳文庫、覚えておこう。

永青文庫 初夏展『殿さまのスケッチブック』(2024年4月27日~6月23日)

 熊本藩6代藩主・細川重賢(しげかた、1720-85)をはじめ、細川家の殿さまが残した「リアル」な博物図譜を多数公開。『毛介綺煥(もうかいきかん)』は半紙等に描いた動物・魚介類を切り抜いて、別紙に貼り付けて整理したもの。日付と由来が記録されているのがおもしろい。狼の図には「猟師某以鉄砲打殺之」とあり、ワニ(?)の図には「紅毛人持来。ダリヤウ(鼉龍だな)ノ生写」とあった。同じように植物のスケッチを貼り込んだ『百卉侔状(ひゃっきぼうじょう)』には、なぜか多様なトウガラシが50種以上集められていた。図譜だけでなく、押し花帖や天草の白鶴浜で集めた無数の小さな貝の標本箱もあった。

国立歴史民俗博物館 企画展示『歴博色尽くし』(2024年3月12日~5月6日)

 建造物、染織工芸、浮世絵、漆工芸、考古遺物など歴博の多彩な館蔵資料を紹介し、その「いろ・つや・かたち」が示す人間の営みについて考える。最も印象に残ったのは装飾古墳の壁画再現展示だった。王塚古墳も珍敷塚(めずらしづか)古墳も九州・福岡県にあるもの。慣れ親しんだ「日本史」の概念が音を立てて崩れるようなインパクトだった。こういうの、複製でいいからもっと関東の人間にも見せてほしい。あと、鉄隕石に由来する隕鉄でつくった脇差があることを初めて知ったが、仙侠ドラマの「陰鉄」を思い出した。


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