見もの・読みもの日記

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2013秋@幕末の北方探検家 松浦武四郎(静嘉堂文庫)

2013-12-11 22:28:30 | 行ったもの(美術館・見仏)
静嘉堂文庫美術館 『幕末の北方探検家 松浦武四郎』(2013年10月5日~12月8日)

 終わった展覧会だが書いておこう。「北海道の名付け親」として有名な松浦武四郎(1818-1888)に関する展覧会だが、どうして静嘉堂がこんな企画を立てたのか、さっぱり分からなかった。どこかの博物館から展示資料を借りてきて開催するのかと思っていたら、「静嘉堂が所蔵する武四郎旧蔵考古遺物コレクションの中より主要な物を選び、初公開」と聞いて、びっくりした。

 展示会場に入ると、まず「探検家」松浦武四郎の成果を紹介する文献資料が目につく。アイヌの風俗や動植物のスケッチを色刷版画で添えた調査誌の数々。刊行販売されていたのか。そして、『東西蝦夷山川地理取調図』(安政6年)。26枚の部分図を並べると、巨大な北海道と国後島・択捉島が現れる。

 武四郎愛用の『大首飾り』(実際に着用した肖像写真が伝わる)は、碧玉・瑪瑙・水晶・金環など、色と形の異なる素材をリズミカルにつないだ美品だが、キャプションに「縄文時代~近代」とあって、笑ってしまった。図録の解説は、さらに詳しく、総数243点の玉(パーツ)のどれが「縄文時代」でどれが「古墳時代」「古代」でどれが「近代」か、内訳が示されている。要するに着用できるように自分で再編集(補修)したのか。考古遺品は現状維持が大原則なんていう現代と違って、自由でいいなあ。

 ほかにもなんだか怪しい品物が並べてあった。同郷の先輩・本居宣長にならって、古墳時代の銅鈴を集めていたのはよいとして、宣長宅にあった『鬼面鈴』のスケッチそっくりの品は、江戸時代製作のイミテーションらしい。中国戦国時代の「戈」があると思えば、古代ローマの青銅鏡に銀貨、古そうに見えて、実は清代の銅壺や鉄鉾も。このひと、無類の「好古家」だったという。玉石混淆の甚だしい展示で、頭を混乱させながら進むと、巨大な『武四郎涅槃図』(の写真パネル)が掲げられていた。河鍋暁斎筆。松林の中、笑顔の武四郎が寝そべり(やっぱり大首飾りをつけている)、その周囲に武四郎遺愛の古物たち(人形、仏像、玩具など)が集まっている。ほのぼのと幸せそうな図様。

 会場には、武四郎が全国の有名な建築物から「木材」を勧進して建てた書斎「一畳敷」の実物大模型も復元されていた。どこまでもわがままを通しているところが羨ましい。国際基督教大学の敷地内に残っているとは知らなかった。

 家に帰って、図録解説を読んでみたら、静嘉堂文庫が松浦武四郎コレクションを入手した経緯は、結局、分からないらしい。一つの可能性は、武四郎と交流のあった江戸幕府の大工棟梁・柏木貨一郎が、岩崎彌之助の深川別邸の工事を手掛けていることだという(成澤麻子氏の論文による)。しかし、ともかく武四郎コレクションの整理が完了し、私たちの前に姿を現したのは慶賀すべきことである。

※2013年の東京・関西展覧会「行ったもの」レポートはこれで一段落。あとは年末年始まで新しい記事はありません。たぶん。

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