見もの・読みもの日記

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円覚寺派の展開も含めて/円覚寺の至宝(三井記念美術館)

2019-05-19 23:26:28 | 行ったもの(美術館・見仏)

三井記念美術館 大用国師二百年・釈宗演老師百年大遠諱記念特別展『円覚寺の至宝:鎌倉禅林の美』(2019年4月20日~6月23日)

 鎌倉・瑞鹿山円覚寺は、弘安5年(1282)鎌倉幕府第8代執権北条時宗により、中国から招聘した無学祖元(むがくそげん)を開山として創建された。本展は、大用(だいゆう)国師200年・釈宗演老師100年大遠諱を記念し、円覚寺と円覚寺派寺院の至宝110点が一堂に会する特別展である。

 第1室は、開山無学祖元の所用と伝えられる南宋、元時代の品々(「開山箪笥」に収められて一括保管されている)を特集。冒頭には「無学祖元」の木印(陽刻と陰刻)。払子、団扇、袈裟環、堆朱や堆黒の合子や盆など。品がよくて、高級感があって、趣味がよい。鎌倉禅林ってセレブな世界だったんだなあと思う。

 最初の大展示室(展示室4)は、仏像と仏画・墨蹟等が、ほどよく同居していた。鎌倉ゆかりで見覚えがあるが、必ずしも円覚寺所蔵でないものも混じっているのが面白かった。入口近くにいらした宝冠釈迦如来坐像(鎌倉時代)は白雲案所蔵。肩が細く、柔和で女性的な感じがした。入口の向かいの展示ケースには、右に蘭渓道隆坐像(建長寺)、左に無学祖元坐像(円覚寺)。そして、それぞれの左右に頂相の画幅と墨蹟を掛けている。『蘭渓道隆経行像』と『蘭渓道隆墨蹟(法語)』は円覚寺の宝物風入れや鎌倉国宝館で何度も見たもの(緑色の布を掛けた椅子に座っている頂相は後期)。木像は、やや硬く冷たい印象を受ける。

 隣りの無学祖元坐像は、全く記憶になったのだが、今回、強い印象を受けた。背をかがめ、ぐっと前のめりに身を乗り出した姿勢で正面を見据える。右手に握った払子の穂先が、左手を離れて跳ね上がっているのも、何か一瞬の動きを捉えたように見えて、熱い。その力の入り方、こういうボスについていきたいと思わせる。椅子の背もたれの横木には、右側に小さな龍、左側に二羽の鳩がとまっていて可愛い。私は無学祖元の『遺偈』(相国寺)も好きなのだが、これは4幅あって、1幅ずつ展示替えされている。図録を見て、3幅目から少し字が小さくなることを知った。

 おや、君も来ていたのか!と微笑んでしまったのは、横須賀・清雲寺の滝見観音菩薩遊戯坐像(南宋時代)。腹回りが太くて、足の開き方が堂々としていて、ヤクザの親分がすごんでいるみたいで好きなのだ。建長寺の『白衣観音図』(元代)は、肉付きの薄い平板な体と手足、体を斜めにひねった自由な遊戯坐ポーズ。青い長髪、白い衣はゆらゆらと広がり、水の中にいるかのようだ。円覚寺の大きな『被帽地蔵菩薩像』(高麗時代)も好き。数種類の赤色の使い分けがきれい。浄智寺の韋駄天立像、建長寺の伽藍神像はおなじみの顔だったが、寿福寺の小さな伽藍神像は知らなかった。中国の古装劇に出てきそうな、シュッとして若々しいイケメンである。

 最後の大展示室(展示室7)は、善光寺式の銅造阿弥陀三尊像や絹本著色『虚空蔵菩薩像』など、円覚寺の宝物風入れでおなじみの寺宝に加え、いつも国宝館でお会いする端正な地蔵菩薩坐像(浄智寺、顔の中心線に修復の跡がある)や夢想礎石坐像(瑞泉寺)もあった。それから「正宗寺」と記された、大きめの十一面観音坐像、釈迦如来坐像があって、どこにあるお寺だろう?と首をひねった。先に進んで分かったのは、茨城県常陸太田市にある寺院で、夢想国師を開山とする臨済宗寺院の流れを汲むのだという。雪村周継が出家した寺であることから、雪村の絵画もいくつか出ていた。

 なお、私は初めて同館の「ミュージアムパスポート」を購入してみた。5,000円で2019年度の展覧会を何度でも見ることができる上、同伴1名も無料になるというもの。出光美術館等も200円割引にあるというのだがらお得感が半端ない。特別展(1,300円)に4回来ればもとが取れる。今回の展示は来週から後期で、書画は展示替えもあるので、もう1回来てもよい。そして次の展覧会は、私の大好きな『日本の素朴絵』(監修・矢島新先生)なので、時間の許す限り足を運ぶつもりなのだ。楽しみ!!

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