見もの・読みもの日記

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本屋と骨董とカフェの街/65歳からの京都歩き(永江朗)

2017-11-27 21:24:34 | 読んだもの(書籍)
〇永江朗『65歳からの京都歩き』 京阪神エルマガジン社 2017.11

 京都駅八条口のふたば書房で、同じ著者の『ときどき、京都人』(2017.9)と一緒に見つけて、どちらを買おうか少し迷った上、2冊とも買って帰ってきた。『ときどき、京都人』は朝日新聞デジタルの連載記事がもとになっているが、本書は書下ろしのようだ。あちらは「だ・である」調だったが、こちらは「です・ます」調で、文体も少しのんびりした雰囲気。

 京都は歩く街だとか、ベンチに座ってみると風景が変わるとか、別の本と同じ話も書かれているが、おすすめスポットやお店の名前が具体的で、地図や写真が豊富なのが本書の特色である。長年、編集・ライター業に携わり、出版文化産業の事情に明るい(Wiki)著者ならではの記事は、おすすめの本屋と古本屋の紹介である。京都駅構内のおすすめとして名前があがっているのは、ザ・キューブ地下の三省堂書店と近鉄側のふたば書房。ふたば書房については「ビジネス書の新刊がポイントを押さえた品ぞろえ」というツボを押さえたコメントつき。

 四条河原町付近では、やっぱりジュンク堂京都店がいちばん好き。河原町通に数年前に開店(復活)した丸善京都本店も行ってみたことがある。著者のおすすめは御所南エリアだそうだ。御池ゼスト(地下街)にも、ふたば書房があるのか。「人文書と文芸書の品ぞろえが面白い」と聞くと、一度行ってみたい。寺町通の三月書房は、著者いわく「京都でいちばん有名な本屋」で、私も京都在住の友人に連れられて訪ねたことがあるが、今は「誠光社」のほうが有名かも。ブックカフェもたくさんある。「月と六ペンス」「アイタルガボン」「かもがわカフェ」…全部はここに転記できないので、本書の地図のコピーを持って歩いてみたい。現存する最古の書店は、慶長年間創業の永田文昌堂だそうだ。もう一軒、やはり江戸時代初期から続く法蔵館書店とともに、仏教書を専門に扱っており、西本願寺・東本願寺エリアにある。

 古本屋では、まず本能寺前の竹苞書楼、寛永年間の創業。今の店舗も江戸時代のもので、閉店後や定休日のたたずまいも風情があるという。大書堂、尚学堂書店、芸艸堂などの名前があがっている。宝さがしのつもりで、掛け軸とか買ってみるのもいいかもしれない。著者は古典籍専門の藝林堂で、興福寺のお経の断簡とビルマの貝多羅経の断簡を購入したことがあるそうだ。茶室の床に掛けるのか。いいなあ。

 骨董街の案内もある。はじめから掘り出し物を見つけようと意気込まないで、のんびり歩いて、目にとまったものを買ってみるのがいいのだろうなあ。弘法市や天神市は有名だけど、3月、6月、10月に「京都大アンティークフェア」(京都アンティークフェアか?)が竹田のパルスプラザで開催されているというのは初めて知った。こういう催しに行ってみたいと思いながら、まだ東京でも実現していない。

 建築散歩、民芸散歩、歴史散歩にも気になる案内があるが、お店関係では、寺町通界隈の一保堂茶舗。大きな暖簾の下がった外観は、私が高校生の頃から京都ガイドブックの定番だったが、秋から春までは焦茶色の暖簾、初夏から9月までは白、夕方のわずかな時間だけ赤と緑のレトロなネオンサインが見られるという情報が気になる。茶葉を揉まずに炒る「いり番茶」を試してみたい。近くに栁桜園茶舗という店があるので、このあたりを歩くとほうじ茶の香りがするという。一保堂茶舗から少し北に行くと、進々堂の本社工場があって、パンを焼く香りがするという。南に下がると鳩居堂のあたりはお香の香りがするので、寺町通は「香りの路」とも呼ばれているなんて、初めて聞いたけど、とても素敵だ。やっぱり1年か2年でいいから京都に住んでみて、こういうディティールを味わってみたい。
コメント
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