見もの・読みもの日記

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政治学者、映画を語る/これは映画だ!(藤原帰一)

2013-11-18 23:36:54 | 読んだもの(書籍)
○藤原帰一『これは映画だ!』 朝日新聞社 2012.3

 藤原帰一先生の著書は好きなので、だいたい読んでいる。なので、あ、まだ読んでいない新刊、と思って、本書を読むことにした。2007年から2012年まで、雑誌「AERA」に連載された映画評コラム225本をまとめたものである。1本あたりの分量は、2段組の1頁。800字くらいか。非常に短い。だからこそ、批評家の芸の見せ所と言える。

 実は、私はほとんど映画を見ない。本書の読者としては、全く申し訳ないくらい。同様に、小説をほとんど読まないにもかかわらず、私は小説評を読むことは好きだ。そして、書評が気に入ると、いつかこの作品は読んでみようと、心の中にリストアップする。ごくごくまれに、その小説を読み始めてしまうこともある。

 本書掲載の作品の中に、私が映画館で見たことのあるタイトルは1本もなかった。テレビ放映時に「流し見」した記憶があるものが数本と、タイトルだけは知っているものは十数本くらいか。世の中には、私の知らない映画作品が、こんなにあるのかということに、呆れ、驚いた。そして、恥ずかしいからタイトルは言わないけど、著者の批評に感銘を受けた数本は、いつか見てみたい作品として、胸の中に刻んだ。

 本書には、『アバター』『トランスフォーマー』みたいな興行的に文句なしのヒット作品、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』『トイストーリー3』のような子ども連れファミリー向け作品も取り上げられているけれど、やっぱり著者の本業に近い、戦争や戦場、移民やアメリカの格差社会などの社会問題にかかわる作品が目立つように感じた。ドキュメンタリーだけではなくて、ロマンチック・コメディだったり、ファンタジー、不条理劇など、手法はいろいろ。でも、どんな挑戦的なテーマを選んでも、エンタテインメントとして失敗してはダメなんだな、と感じさせる解説は勉強になる。

 映画のさまざまなパーツ「音楽」「脚本」「スター」「監督」などに焦点をあわせた短編エッセイ「映画の見方」数編が、ところどころに挟まれている。これは、それぞれのパーツについて、私にとってまだしも身近なテレビドラマと映画を比較して考えることができて面白かった。テレビドラマでは、脚本って、かなり圧倒的に重要だと思うのだが(私は脚本家でドラマを見るか見ないか決めることが多い)、映画は違うんだなあ、など。
 
コメント
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