見もの・読みもの日記

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BS時代劇『テンペスト』のない日曜日

2011-09-25 22:53:25 | 見たもの(Webサイト・TV)
NHK BS時代劇『テンペスト』(2011年7月17日~9月18日、全10回)

 ドラマ『テンペスト』について書くのは3回目である。序盤の3回までを見たところで一度記事を書き、中盤の6回までで、もう一度書いた。残る4回を先週で見終わったが、終盤も面白かった。ただ、私は原作を読んでからの視聴だったので、省略の多い、アップテンポの展開でもついていけたが、全く予備知識のない視聴者から「ダイジェストすぎる!」という非難が湧いたのも、無理からぬ反応だったと思う。

 全体としては、原作の大勢の登場人物、盛りだくさんのエピソードを、時には潔く切り捨て、時には大胆な改変を加えて、よく整理していたと思う。私は第8回の「ペリーとの対決」で、真鶴が語る琉球の将来像をいちばん楽しみにしていたので、ここは、原作の意外に骨太なメッセージが、そのまま映像化されていて嬉しかった。最終回は、いろいろガッカリ、という声もあったが、私は、真鶴が無人の王宮で我が子の明に即位の儀礼を施すところ、およびラストシーンの真鶴と浅倉の再会、これは絶対、原作のとおりにやるだろうと思っていたので、ほぼ想定どおりの内容だった。

 ドラマの脚本は、真鶴に対する尚泰王の恋着とか、真鶴の兄ちゃんと父ちゃんの彼岸での和解とか、登場人物の人間像・人間関係の描き方には大胆な改変を加えていたが、根底のところでは、原作尊重の姿勢が感じられた。ちなみに朝薫が、琉球王朝の解体に殉じて自らの命を絶つシーンを、敢えて映像化しなかったことは、あれでよかったと思う。原作を曲げず、しかし原作とは異なる結末を想像する余地を、ほんの少し残してくれたことに感謝したい。

 それにしても最終回が失速気味だったことは否めず、「大森寿美男の脚本はいつも終盤がこれだ」という批判には苦笑させられた。確かに『風林火山』の最終回も…だった。だが、面白いのは、全く失速感なしに終わったドラマ『TAROの塔』は、終わり方が完璧すぎて、もはや何も語る気が起きないことだ。対して、不完全燃焼の最終回だった『テンペスト』については、まだまだ喋り続けたい気がする。私だけではなく、多くの視聴者がそう思うらしくて、ネットの掲示板は、相変わらず、ネタ話から真面目な沖縄論まで、さまざまな話題で賑わっている。もう1週間になるのに、名残りを惜しんで、終わらない宴のようだ。

 時代考証担当の上里隆史氏が、ブログ「目からウロコの琉球・沖縄史」に書かれた文章「『テンペスト』が終わって」(2011/9/20)も拝読した。「琉球では足袋をはくのか、どの身分からどの場面ではくのか」など「研究では詳しくわかってないことでも、映像にするために決めなくてはいけない事項が山のように送られてきました」という一文を読みながら、なるほど、映像ドラマを撮るというのは、責任の重いことなんだなあ、としみじみ思った。

 でも、このドラマのスタッフ&キャストの皆さんは、まさに「総力戦」をよく戦い抜いてくれたと思っている。おかげで、楽しい2カ月間(たった2ヶ月!)だった。ドラマの登場人物たちは、ひとりひとり十分な実在感をもって、私の記憶に刻まれている。
コメント (1)
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