見もの・読みもの日記

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絵地図いろいろ/金沢文庫

2005-09-21 00:05:09 | 行ったもの(美術館・見仏)
○神奈川県立金沢文庫 開館75周年記念企画展『繪地圖(えちず)いろいろ』

http://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kanazawa.htm

 金沢文庫所蔵の「武蔵国鶴見寺尾郷絵図(むさしのくにつるみてらおごうえず)」が、国の重要文化財に指定されたことを記念した展覧会でもある。どうせ地味だろうなあ、と思っていったら、けっこうバラエティ豊かで楽しめた。

 目玉の絵図は、入ってすぐのガラスケースに展示されている。「関東に残る唯一の中世の地図」というのは、ちょっと意外な気がした。寺社の伽藍図や境内絵図とは異なる、ということらしい。かなりの広域を1枚の図に収めている。

 家光が愛用していたという日本図・世界図の枕屏風は、おもしろかった(模写。本物は焼失)。世界図は、意外に緻密で「南極」まで載っている。さすが将軍。

 古地図には、科学的な地理情報の不足から、とんでもないデフォルメを施されているものがある。その既視感を裏切る”目まい”の感覚が楽しいのだが、北斎の絵図は全く異なる。画面の使い方が、実にバランスよく、周到である。蝦夷から九州まで、細長い日本全土を「方寸の内に」収めてしまった作品と、江戸湾(東京湾)を挟んで向き合う三浦半島と房総半島を1枚に収めた作品が展示されているが、どちらも、絶対ありえないのに”本当”らしい鳥瞰図法が驚異である。

 旅を題材にした双六、お土産用の名所図の版画、さまざまな道中情報を加えた携帯用の絵図からは、庶民の旅に対する憧れが湧き上がってくるようだ。

 明治期については、神奈川・横浜の外国人居留地の絵図と関連資料が展示されている。ある冊子に、日本人の物売りとカタコトで値引き交渉をする西洋人を描いた文章が載っていた。地文は全く漢文である。ただし、正統な漢文ではなくて、当時の俗語らしく、現代中国語にかなり近い。「七箇天保便了」「相公好了、小公不好了」に「ナナツテンポウ(天保銭のこと)ヨロシ」「アナタヨロシ、ワタシペケ」という具合のルビが振ってあった。おもしろいなあ、これ~。
コメント
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