見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

地方仏の衝撃/茨城県立歴史館

2004-11-29 23:46:02 | 行ったもの(美術館・見仏)
○茨城県立歴史館 開館30周年記念特別展Ⅰ『茨城の仏教遺宝―みほとけの情景とまなざし―』

http://www.ibaraki-rekishikan.com/

 最終日ぎりぎり、上野からスーパーひたちで往復という贅沢をして見に行った。いや~見逃さなくてよかった。感動した。県内各地から80体近い仏像が集められていた。展示は時代順で、古代の小さな金銅仏が少々。平安仏は、粗雑な補修や彩色を施された状態のものが多く、頭の中で原型を復元するのが、ちょっとつらい。鎌倉期になると、かなりいいものが増える。

 好みを言うと、平安仏では、定朝様の温顔がなつかしい守谷市・大円寺の釈迦如来。笠間市・岩谷寺の薬師如来(鎌倉前期)は、さすが国重文の貫禄、隅々まで破綻のない造型である。鎌倉後期に補われたという光背も美しい。伊奈町の阿弥陀如来坐像、玉造町・持福院の釈迦如来坐像は、うつむき加減の内省的な表情に惹かれる。

 玉造町・西蓮寺の十二神将像は圧倒的だった。室生寺など慶派の造型を基本に、東国の荒々しさが加味された感じがする。これほどの優品を知らなかったなんて、嘘のようだ。

 それから、茨城の仏教遺宝と言えるのかどうか分からないが、もとは岡倉天心の蒐集品と思われる観音菩薩立像があった。平安仏だが、欠損が激しく、顔立ちも定かでない。砂漠に眠る美女のミイラのようで、数奇な運命に想像が広がる。

 最近の調査で、大洗町・西光院の阿弥陀如来立像は、水府村の鉄造阿弥陀如来の木型であることが判明したというのも興味深かった。両者を並べてみると、確かに衣文の流れが瓜二つである。大人の背丈ほどもある巨大な鉄仏も珍しいと思った。前後を合わせた継ぎ目が明らかで、人形焼きみたいだった。

 近年、各地方の仏教美術に焦点を当てた展示会は多い。今年の夏に行われた山口県立美術館の『周防国分寺展』も、同時に山口県(特に県央)の仏教美術展の要素があった。昨年は、四日市市立博物館の『仏像東漸』、岡崎市美術博物館の『天台のほとけ』、そして石川県立歴史博物館の『能登仏像紀行』(図録が売り切れだったことが惜しまれる!)があった。このほかにも、私の見逃している展示会は多数あることと思う。

 個人では効率よく回るのも難しいし、なかなか扉を開けてもらえないお寺の仏様を、こうして拝見できるのはうれしい。各地の学芸員の方々には、ぜひ頑張ってほしい。ちなみに、個人的には鳥取篇が見たいなあ~。
コメント
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