「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

試聴会の結果~その2~

2015年05月13日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

試聴会もいよいよ佳境に入って今度は新たな真空管アンプ「PX25」シングルの品定めに移った。このアンプには思い出があって、導入してから20年ほどになるがその間に幾多の改造を行い、その都度お気に入りの音に近づいてきたものの、今一つ決め手に欠けてきた。

WE300B(アメリカ)と並んで音の良さで知られる直熱三極管の欧州の雄とされる「PX25」(イギリス)だし、ブリティッシュサウンドを象徴する存在なのだから、本当の実力はこんなものではないはずとの思いがずっとあった。いわゆる「未練断ち切りがたし」(笑)。

ひとくちに「PX25」といってもいろんな種類のブランドがあるので、いろいろ買い漁ってみた。老舗GECのナス管、オスラムのドーム管、そして口づてに最高の球と聞かされてきた「PP5/400」(英国マツダ)。

しかし、残念なことにすべて徒労に終わってしまった。どうも音にメリハリがなくて締りがない。肝心の中高音域の艶も今一つ。とうとう真空管の交換に限界を感じて、ドライバー・トランスを挿入してもらうことにした。

「はたして真空管アンプは出力管とトランスのどちらが音質に大きく影響を及ぼすのか」という難しいテーマを身をもって実験してみたことになる。通の方に言わせると「そんなことはとっくの昔に知ってるよ」と言うだろうが、なにしろ体験しないと信じないタチだから困る(笑)。

そこで長年の経験を通じてトランスの性能に詳しいGさん(福岡)のアドバイスで選択したのが「UTC」ブランドだった。

Gさん曰く「UTCを越えるトランスとなるとウェスタンしか思い付きませんが、ウェスタンはちょっと帯域が狭いところがありますからねえ。私はUTCをお薦めします」。

           

結果的にこれが大成功だった。「出力管よりもトランスの挿入(交換)の方が音の変化は大きい」というのが現在の偽らざる実感である。

試聴会では出力管の差し替えを次の順番で行った。

          

まず画像左のGECのナス管から。

じっと耳を澄まされていたSさんから「いいですねえ、これは素晴らしい!」と感嘆の一言。銅板シャーシのアンプに比べると出力が上回るだけに音に余裕が出てきた。しかも低音域がやや膨らみ気味のPX25の特徴が「AXIOM80」の弱点をうまくカバーしてくれるようだ。

Kさんも、「これまで聴かせていただいたPX25とはまるっきり違います。はるかに上です。改造したGさんの手練は並々ならぬものがありますね。驚きました。」

気をよくしたところで(笑)、今度は画像真ん中のオスラムのドーム管に差し換えてみた。

一同口を揃えて「これはちょっと聴けませんね~。ナス管とはまるっきり違います。いいところが一つもありませんよ」と、酷評。自分も人から「タダでくれてやる」と言われても要らないと思ったほどのひどい音だった。まあ、「AXIOM80」がメチャ繊細なので、他のスピーカーなら生かしようがあるかもしれない。

この球は早々に切り上げて最後に大本命の画像一番右の「PP5/400」(英国マツダ)に差し換えた。古典管に年期の入った方々が口々に「数ある出力管の中で一番音がいいのはPP5/400だ」と言われるほどの逸品である。

実を言うと、この日まで楽しみを取っておくつもりでPP5/400の試聴はいっさいしてこなかった。したがって、「固唾を呑む」思いで耳を澄ましたが予想どおりの試聴結果となった。

一同、異口同音に「ナス管も良かったのですがそれとはまるっきり別物ですね。音の出だしからしてまるっきり響きが違ってますよ。」

ちなみに試聴盤に使ったのはKさんが持参されたミシェル・オークレール(フランス:女流ヴァイオリニスト)の「ヴァイオリン協奏曲5番」(モーツァルト)。オークレールといってもピ~ンとくる方はおそらく70歳以上の方だろう。活動期間は非常に短かったがヴァイオリン愛好家たちには鮮烈な印象を残して去っていった。

「つまらないシステムだと彼女の良さは分かりませんよ。弓で弦を押すときと引くときの微妙な差が分かるようなシステムでないとダメです~」とKさん。

「システム次第で演奏家の芸術性が大きく左右されるのですから、ゆめゆめ(オーディオを)おろそかにできませんねえ。」と、自分。

オーディオに熱中する主な理由も実はここにあるのだが、我が家の家内などは「どんな音が出ても一緒でしょう。もうオーデォをやめたら~」なんてほざくのだから始末に悪い(笑)。

さて、余談になるがこのPP5/400を落札したのは半年ほど前の昨年(2014年)の12月31日のオークションだった。

お値段からして清水の舞台から飛び降りる思いだったが、この球の愛好者のSさんに事前に相談を持ちかけたところ「私もPP5/400を5セット持ってますが、作製時期によって前期と後期に大別されます。前期の方が音がいいです。これは稀少な前期分ですね。ゲッターも十分だし、天上のMAZDAの字もくっきり残ってます。非常に程度が良さそうですよ。〇〇万円なら私が欲しいくらいです。」と太鼓判を押していただいた。

今回、Sさんは実際にPP5/400を検分されたわけだが改めて「程度がいいですね~。お買い得品でしたよ。私が持って帰りたいくらいです」(笑)。

「いやあ、実を言いますと今回の改造でPP5/400がうまく鳴らなかったときは、落札価格のままでSさんに購入していただくように持ちかけるところでしたよ。首尾よくいってうれしい限りです。」

Sさんには悪いが、簡単に諦めない執念の結果がどうやら幸運をもたらしてくれたようだ。何事もこうであると、我が人生ももっと充実するのだろうが、オーディオだけとはちと寂しい(笑)。

およそ5時間ほどの試聴を終えてお二人が帰途に着かれたのは16時半頃だった。午前中とは打って変わってお日様がさしてきて好天気。「雨のち晴れ」、まるで今日の試聴会の結果と同じ~。
 

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