「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

オーディオ談義~「宝くじに当たったような音」~

2009年08月15日 | オーディオ談義

タンノイ・ウェストミンスターのボックスにSPユニット「アキシオム80」を取り付けてから、およそ1週間。

吸音材を適度に入れて裏蓋を開けたり、締めてみたりと試行錯誤を繰り返しながらようやく落ち着いてきて今は密閉の状態が続いている。

とにかくこれまでの音とは明らかに違う音で自分では以前に比べてメチャクチャに良くなったと思うのだが、もしかするとこれはオーディオ愛好家が往々にして陥る罠かもしれず、単なる「音の変化」をつい「良くなった」と勘違いすることがままあるので”ゆめゆめ”油断は出来ない。

自分の耳を信じないわけではないが、「身びいき」は程々に、やはり節度というか謙虚さも必要であることはいうまでもない。これはオーディオ以前の問題でもある。

こういうときは、我が家の装置を聴きなれている友人・知人に聴いてもらって判断してもらうに如くはない。

湯布院のA永さんはつい先日お見えになったばかりだし、杵築市のM崎さんは折悪しく現在腰を痛めているとかで身動きがとれず、それではと大分市にお住まいのN松さんに来ていただくことにした。

N松さんたち一行(4名)は、先月(7月)の17日に来訪されたばかりでまだ1ヶ月も経っていないがそれだけに我が家の音の記憶も鮮明なはず。

13日の早朝のこと、そのN松さんから電話があって「先日お誘いがあった件だが、お盆の最中なので気が引けるが今日の10時ごろにお伺いしていいでしょうか」。

もちろん「どうぞ、どうぞ」とこちらは一つ返事。オーディオに盆もへちまもない。

今回のご来訪者は2名で、N松さんのほかにO江さん。O江さんも非常にご熱心なオーディオ愛好家で数年前に我が家にお見えになってからずっと音信が途絶えていた方なので実にお久しぶり~。N松さんがお誘いされたものとみえる。

さて、音信が途絶えていた理由については、デリケートな人間関係に起因する話なのでなかなかストレートに表現しにくいが今回のテーマにも大いに関係してくるので、この際あえて明らかにしておこう。もちろんその理由をO江さんに直接たしかめたわけではないのでこれはあくまでも自分の憶測を交えた話である。

当時、O江さんは湯布院のA永さんの紹介を通じて我が家にもちょくちょくお見えになっていた。タンノイ・ウェストミンスターの音をこよなく愛されており、名バイオリニスト・ハイフェッツが弾く「ツィゴイネルワイゼン」(サラサーテ)がことのほかお気に入りだった。

”ああ、それなのに”。

自分がやったことといえばウェストミンスターから勝手にオリジナルのユニットを追放しJBLの130Aを取り付けてみたり、075のツィーターを載せてみたりとやりたい放題の仕打ち。

O江さんにしてみれば、「なぜこんなに”いい音”が出ているのにわざわざタンノイのユニットを外す必要があるのか」と失望感を持たれたであろうことがそもそもの事の発端。

振り返ってみると、ひたすら迷路(?)を進む自分に対して親切心からしきりに暴走抑止のシグナルを送ってくれたO江さんのアドバイスを無視し、逆に”煙たい存在”だと意識しだしたことがお互いに以心伝心となり、意地の張り合いも手伝って今日まで仲直りするきっかけがつかめなかったというのが自分なりの分析。

なぜオリジナルのタンノイユニットを外したのかについては詳述すると長くなるので、ここでは端折るが、「低域の不透明な分解能と伸びきらない高音」に対して物足りなさを持ったことによる。クラシックもジャズも両方よく鳴らしたいと欲張ると必然的に出てくるタンノイの音づくりに共通する不満である。

こういう背景があるので、今回「JBL130A」の代わりに「アキシオム80」を入れ替えたとはいえオリジナルのユニットを放逐していることに変わりはなく、O江さんが果たして今回どういうご感想を洩らされるか興味津々。

こと、音に関しては一切妥協することなしのストレートな物言いをされる方なので、おそらく牙を研いで見えられたことは想像に難くない。

お二人ともCDを持参されなかったので、こちらで勝手にバイオリン、ピアノ、オーケストラ、ジャズ、歌謡曲と様々なジャンルからCDを取り出して聴いてもらった。時間にして1時間半あまり。

そして、試聴の結果は異口同音に
「素晴らしい!」。

豊かな響きの中に細身の音像がくっきりと浮かび上がり、柔らかくてしなやかな音色の中にも艶というか色気がたっぷりと漂っていて「アキシオム80」の実力を遺憾なく発揮した音。「こんな音は滅多に聴けない」と絶賛。

「クラシックもジャズも両方いい、まるで宝くじに当たったようなものだね~」とO江さん。

フーム、
「宝くじに当たったような音」ですか。前述した背景がなければスット聞き流すところだがなかなかO江さんらしい表現ではある。

自分なりに解釈すると「ウェストミンスターにはオリジナルのユニットが一番いいに決まっている、今回の音はたまたま試みた中での”まぐれ当たり”に過ぎず本当に運がよかったね」とのニュアンスが言外に込められていると感じたのは考えすぎかな。

まあ、そうおっしゃいますが幾多の試行錯誤を繰り返しながらまるでオーディオと心中するような思いで「血(お金)と汗と涙」を流してやっと行き着いた結果がこれなんで、決して”まぐれ当たり”なんかではないですよ~。

と、喉まで言葉が出かかったが長年”わだかまり”があったお客さんに向かってこの場で言い返すのは「KY」だと思い止まった。それにこの音を大いに称賛してくれたのは間違いないことだし~。

最後の曲目として所望されたのが想い出のハイフェッツの「ツィゴイネルワイゼン」なのはいうまでもない。

                                

ウェストミンスターの箱で「アキシオム80」が奏でるバイオリンの音色は真綿にくるんだようなしっとりとした麗しさと柔らかさがあって形容する言葉を失うほどの絶妙な響き。

「オリジナルのユニットのときよりもたしかにいい、しばらくはユニットを入れ替えたりなんかせずに是非このままの音でいろんな人に聴かせてあげてください」と帰り際にくどいように念を押されるO江さん。

「もちろんです、当分入れ替える気は毛頭ありませんよ~」と自分。

これでやっとO江さんとの長年の”わだかまり”が解けて自分も大いに救われる思いがしているのに、また替えたりしたらそれこそ元の木阿弥どころか一層こじれきってしまうことになる。

結局、オーディオ愛好家同士、仲たがいするのも音が原因、そして仲直りするのも音次第、まことに罪作りなオーディオではある。
                      
                     

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