「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

音楽談義~「指揮者や演奏家によって音楽はどう変わる?」~

2010年05月26日 | 音楽談義

鳩山首相の迷走が続いている。東大を出てスタンフォード大へ留学したほどの秀才なんだから、もっとしっかりしてもらわなくちゃあ~。

しかし、秀才が政治の世界であまり当てにならないのは何も日本ばかりではない。

ハーバード出身の優秀な人材で要所を固めたケネディ政権が人心の掌握を怠り、先行きを読めなかったばかりにベトナム戦争の泥沼に引き摺りこまれた史実はまだ記憶に新しい。

この経過は
ハルバースタム(アメリカ)の名著「ベスト&ブライテスト」に詳しいが、この表題の意味は「最良のもっとも聡明な人々」。

本書では淡淡とした筆致で克明に事実を追いかけるだけだが「最良の最も聡明な人々」の愚行に対して怒りと哀しみがまるで通奏低音
のように全編を流れているのを感じる。

余計な話はこのくらいにして、本題に。

「知ってるようで知らない指揮者おもしろ雑学事典」(2006.6.20、著者近藤憲一、ヤマハミュージックメディア)

を参考に指揮者や演奏家の違いによって音楽はどう変わるか?」について一考察。

                       

同じ曲目でも指揮者や演奏家によって音楽の印象が随分変わるのは周知のとおり。

自分などは大好きなオペラ「魔笛」(モーツァルト)を人から笑われてしまうほど持っている(43セット)が、それぞれに天と地ほどと言ってもいいほど演奏に差があり、遺された楽譜はたった一つなのにどこにそんなに勝手に変えられる余地があるのかといつも思う。

さて、そこで指揮者の思惑でどこがどう変わるのか、具体的に”運命”の副題で有名なベートーヴェン作曲”交響曲第5番ハ短調”を実例に挙げてみよう。

サンプルは独裁者の異名をとるマエストロ(巨匠)”トスカニーニ”と超感度の耳を持つ鬼才”ブ-レーズ”の演奏。

”運命”は第一楽章の冒頭、あの有名な動機「ダ、ダ、ダ、ダーン」が重要箇所になっており、どのくらいのテンポにするかで全体の演奏時間や印象が決まってしまう。

この最初に二度繰り返される動機をトスカニーニ(NBC交響楽団、1952年録音)はわずか4秒。一方ブーレーズ(ニュー・フィルハーモニア管弦楽団、68年録音)は9秒で演奏している。トスカニーニが歯切れよく軽快に提示するのに対して、ブーレーズは重々しく厳かに長く伸ばす。

その結果、4楽章全体の演奏時間はトスカニーニが30分11秒、ブーレーズは38分30秒となり何と8分19秒も違っている。

面白いのは、ゆるやかなテンポの第2楽章(アンダンテ・コン・モート)の演奏時間は二人とも約14分と同じなこと。つまり全体の演奏時間の長さは三つの早いテンポのアレグロ楽章の違いから生まれている。

もし本家本元のベートーヴェンが現在も生きていたら、どちらの演奏の方が自分の意図に沿ったものか明解に答えを出してくれるのだが亡くなっている以上、永遠に正解が分からないまま。

トスカニーニは軽快だが力強くたぎるような情熱をこめて果敢に運命に挑戦する人の姿を、一方前衛的なブーレーズは情熱を抑えて知的に、音楽をピラミッドのように冷静に組み上げていく建築家の仕事のような趣。

もちろん、テンポだけで演奏の性格が決められるのではなく、リズム、ダイナミックス、フレージングなどが総合されて全体が創られていくわけだが、基本となるのは結局
指揮者がその作品の何を伝えたいかという解釈次第ということになる


文学、絵画、彫刻などと違って音楽は間接芸術なので、指揮者(演奏家)が間に入るだけ、つまり演奏の数だけ作品がある。これがいいことなのか、悪いことなのか判断はつかないが、これはコピーとはまったく違う種類のもので音楽だけが持つ特徴。

さらに、これらの演奏の違いに加えて往時の録音技術による音質などが密接に絡んでくるので、家庭で音楽鑑賞に没頭する人間にとっては「どういう演奏を択ぶか」選択肢が多すぎてたいへん。

自分の場合はネットなどで日頃から評判を調べたり知人からのクチコミを拠りどころにしてCDを選んでいるが
、大方のところでは昔から「名盤」と称されて定評があるものは聴いてみてあまり期待を裏切られたことがない。

音楽の世界でも最大公約数的なものが通用するとは不思議な気もするが、オーディオの世界でも定評のある機器、部品はあまりハズレがないのと同様。

なお、加齢によって自分自身で好みの演奏が変わってくるケースがある。

たとえばベート-ヴェンの後期のピアノ・ソナタ(作品109~111)は名曲中の名曲とされるが以前はバックハウス以外の演奏はまったく受け付けなかったが、近年では内田光子さんの演奏ばかり手が伸びる。

                      

取り分け作品109は白眉だが、録音が抜群にいいのも大きな魅力。さすがにフィリップス・レーベルだけのことはある。

と、ここまで書いて明日の投稿の準備を終えた(25日・16:45)途端に、高校時代の同窓のU都君からメールが入ってきて8千万円クラスのオーディオ装置が見たければ次のサイトを覗いてごらんとあった。

44枚のスゴイ画像が入っているが、興味のある方はどうぞ~。

とにかく、上には上があるもんです!

http://picasaweb.google.co.jp/mgoto.da2/Aristocrat20100510#5470768175259417762

 

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