「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

若手ピアニスト「ラファウ・ブレハッチ」

2018年12月19日 | 復刻シリーズ

昨日(18日)のこと、過去記事ランキング(ページごとの閲覧数)で若手ピアニスト「ラファウ・ブレハッチ」を題材にした記事ががっちりと上位に食い込んでいた。

何しろ8年も前の記事だし今頃になってなぜ・・?

ブレハッチは周知のとおり2005年に開催された由緒ある「第15回ショパン・コンクール」(5年に1回開催)で優勝したピアニスト(ポーランド出身)である。当時は弱冠25歳だった。

さっそく理由を推し量ろうとググってみると、何のことはない来年(2019年)訪日の予定という話だった(だと思う)。

それにしてもブレハッチは優勝後はパッとしないようなイメージを抱いていたけど、まだ健在だったんだねえ。もう三十路を過ぎたんだからそろそろ脂が乗ってくる頃ではある。

いずれにしても、せっかくの機会なので8年前の記事を以下のとおり加筆修正のうえ再掲させてもらおう。

「新版クラシックCDの名盤」で、3名の著者たちがそろって絶賛していたピアニスト「ラファウ・ブレハッチ」〔339頁~)。


ショパンと同郷のポーランド出身で2005年開催のショパン・コンクール優勝者である。 

しかし、現時点でまだ25歳前後と若くやや経験不足が心配なところだが、かのヨーゼフ・シゲティによると「演奏のテクニックは25歳がピーク。それ以上にうまくなることはない」との談もあり”まあ、いいか”と自分を半分納得させてHMVへ注文。

2週間ほど経過してやっと自宅に到着したのが10日の日曜日。

左から「24の前奏曲集」(ショパン)、「ピアノソナタ」(モーツァルト)、「ピアノ協奏曲1番&2番」
 

                     

 まず「コルトー以来の名演」(中野 雄氏)と称される「24の前奏曲集」を聴いてみた。「ピアノの詩人」ショパンにはいろんな作品群があるが、ショパン通にとって代表作といえばまず「24の前奏曲集」に指を屈するという人が多いのではあるまいか。

自分には演奏の良し悪しやテクニックを云々する資格はないが聴いてみたところ「ええかっこしい」の音楽家でないことが感じられて救われる思いがした。自分をことさらに大きく見せようとせず、純粋に音楽に溶け込んでいる印象で、録音の良さは申し分なし。

個別では判断の下しようがないので手持ちの「コルトー」と「アシュケナージ」の演奏と比較してみた。 


                          

思わず居住まいを正し、聴けば聴くほど味わい深くなるコルトー、安定感に満ちたアシュケナージの印象からするとブレハッチの特徴は一言でいえば演奏慣れしていない「初々しさ、瑞々しさ」のように思えた。なかなか好印象!

次に、2枚目のCDにはハイドン、ベートーヴェンそしてモーツァルトと古典派3人のピアノ・ソナタが網羅されていて、モーツァルトでは「K.311」〔9番)が収録されている。

ショパンはいいと思ったけど果たしてモーツァルトはどうかな?

自分は帰し方40年ほど耳にたこができるほどモーツァルトの一連のピアノ・ソナタを聴き込んできたが、こう言っては何だがこの一連のピアノ・ソナタほどピアニストのセンスと力量が如実に反映される音楽はないと思っている。

たとえば久元裕子さん(ピアニスト)は著書「モーツァルトはどう弾いたか」の中でこう述べている。
 

「モーツァルトの音楽は素晴らしいが弾くことはとても恐ろしい。リストやラフマニノフの超難曲で鮮やかなテクニックを披露できるピアニストがモーツァルトの小品一つを弾いたばかりに馬脚をあらわし「なんだ、下手だったのか」となることがときどきある。 

粗さ、無骨さ、不自然さ、バランスの悪さ、そのような欠点が少しでも出れば音楽全体が台無しになってしまう恐ろしい音楽である」。 

以上のとおりだが、実に意地の悪そうな前置きはこのくらいにして(笑)、ブレハッチのモーツァルト演奏について述べてみよう。

一楽章の冒頭から指がよく動き、果てしない美音のもとに流れも軽快で”いいことづくめ”、何ら違和感なく聴け「大したものだなあ~」と演奏中は感嘆しきり。
 

だが、”しかし”である。終わってみると、「はて、この演奏から何が残ったんだろうか」という印象を受けてしまう。つまり、後に尾を引くものがない、名演にとって不可欠な「香り立ってくるような余韻」がないのだ。

どうも、つかみどころがない演奏で単なる”きれいごと”に終わっている気がしてしかたがない、もしかすると自分の体調が悪いのかもしれないと日を改めて翌日も再び挑戦。しかし、やはり同じ印象は拭えない。

改めて、いつも聴きなれたグレン・グールドのK・311を聴いてみた。

まったく何という違い!音符を一つ一つバラバラに分解し、改めて自分なりに精緻極まりなく組み立てて、
見事に自分の音楽にしてしまうグールド。圧倒的な、有無を言わせない説得力に無条件に降参した。

因みに演奏時間の違いが面白い。ブレハッチの16分59秒に比べてグールドは12分25秒。こんなに違えばまるで異なる音楽になるのは必然で、めまぐるしく早いテンポのグールドと比較すると”まどろっこしさ”を覚えるのも無理はない。

個性的なグールドと比較するのは可哀そうだと思い今度はクラウディオ・アラウの演奏を。これは演奏時間が20分55秒と一番長い。

じっくり聴いてみたがやっぱりいいねえ!一音一音が見事に磨き抜かれてコクがありロマンチックで素敵な演奏の一言に尽きる。こうなるとブレハッチとの差はいかんともしがたい。

ショパンはともかくモーツァルトの音楽では簡単に騙されないぞ!

キーシンほどの大ピアニストがいまだにモーツァルトのピアノソナタ全集の録音をためらっているが、ブレハッチにはまだモーツァルトのピアノソナタを弾くにはちょっと早すぎるようだ。

しかし、折角有望な若手が出現したのに否定的な注文をつけるとは何ともへそ曲がりの嫌味なリスナーが世の中にはいるもんですねえ~(笑)。

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