「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

音楽のジャンルとは

2017年11月04日 | 復刻シリーズ

音楽のジャンルといえば、まず意識するのが、クラシック、ジャズ、ポップス、歌謡曲などの区分ということになるが、いざこれらを「選り分ける具体的な基準は?」と問われると明快な答えを得るのはそう簡単なことではない。

たとえばクラシックとポップスの違い、ジャズとロックの違い、加えてクラシックひとつとってみても古典派とかロマン派といった分類がある。

    「音楽ジャンルって何だろう?」(1999年12月、新潮選書)  

この本は、そのジャンル分けの基準を研究した著作だった。著者は「みつとみ俊郎」さん。

本書の姿勢は、極端にマニアックな定義ではなく、標準的にこの程度の理解があれば、お互いに意思の疎通ができるような音楽のジャンルを示したというもので、根っこの部分では皆同じ音楽
なのだという考えに立っている。これにはまったく同感。

音楽を聴くときに己の「琴線」に触れるものであれば「モーツァルトも演歌も同じだ。音楽に貴賤はない。」と思っているが、これは一部のクラシックファンにとっては眉をひそめるような話かもしれない。

つい最近のブログで「ちあき なおみ」や「フランク永井」を俎上に上げたところ、クラシック通の知人から申し出があったので「フランク永井」のCD盤を「
貸して」あげたところ、今や大の愛聴盤とのこと。音楽の食わず嫌いって多いんですよねえ(笑)。

「メロディと歌詞」が一体となって切々と訴えかけてくる日本の歌謡曲は心情的にピタリとくるところがあって、やはり
人間の生まれ育ったルーツは争えない。

さて、テーマをクラシックのジャンルに移そう。

歌謡曲などと比べると極めて長い伝統を有するクラシックについてはどうしても身構えるところ多々あるが、いろんな歴史を知っておくと曲趣の理解がより一層増すという利点もたしかに無視できない。

音楽のジャンルを分ける基本中の基本は西洋音階(ドレミファソラシド)とそれ以外の民族特有の言語としての音階をもとに作られた音楽との二種類に分けられるという

「クラシック音楽
の定義」となると一見簡単そうに見えて意外と手ごわい。そもそも定義なんてないに等しいが、結局のところ、古さ(歴史)、曲目の奥深さ、作曲家自身の多彩な人間像などがポップスなどとの境界線になる。

以上を踏まえて、クラシック音楽のジャンルの中味をそれぞれ定義するとつぎのようになる。以下、堅苦しくなるので興味のない方はどうか素通りを~。

Ⅰ ルネッサンス音楽
14世紀から16世紀にかけてのヨーロッパ・ルネッサンスの期に書かれた音楽作品の総称

Ⅱ バロック音楽
1600年から1750年ぐらいまでのヨーロッパの音楽を指す。大型の真珠の形のいびつさを形容するbarrocoというポルトガル語がもともとの語源で「ゆがんだ」「仰々しい」といった意味合いを持つ。

イタリア
モンテベルディ、ヴィヴァルディ、コレルリなど多彩な作品が多くバロック音楽をリードした。

フランス
リュリ、ラモーなどのクラブサン(チェンバロ)に特徴づけられ、オペラの中にバレエが頻繁に使われたのもフランスならでは。

イギイス
ヘンリー・パーセルが様々な作品を残し、ヘンデルがイギリスに帰化して「メサイア」などの完成度の高い、劇的な作品を数多く残した。

ドイツ
シュッツが宗教音楽を数多く残し、
バッハが宗教曲、器楽曲に数多くの傑作を残した。

Ⅲ 古典派音楽
ハイドン、モーツァルト、ベートーベンの初期までを中心とした1800年次前後のおよそ30年間のヨーロッパ音楽の総称。
メロディと伴奏がはっきり分かれるホモフォニック形式で作られているのが特徴で、これを音楽のスタイルとしてまとめたのがソナタ形式。

Ⅳ ロマン派音楽
19世紀始めごろから印象主義の始まる19世紀末までの作曲家たちで、もっとも多い。古典派のように形式にとらわれず旋律が自由で伸び伸びしており、メロディ主体の音楽が多い。

ベートーベンは古典派とロマン派の過渡期に位置しているがほかに、シューベルト、シューマン、ブラームス、ショパン、ヴェルディ、プッチーニ、ビゼー、ベルリオーズ、

そして、後期ロマン派としては、ワーグナー、マーラー、ブルックナー、リヒャルト・シュトラウス、ムソルグスキーなどのロシア5人組、チャイコフスキー、グリーグ、スメタナ、ドヴォルザーク。

Ⅴ 印象派の音楽
近代音楽の幕開けを飾るドビュッシーやラベルなどのフランスの作曲家たちの音楽スタイル。
音楽の特徴はモネなどの絵画のように全体のつくりの焦点をぼやけさせ、始まりと終わりを合理的に解決しないところ。イギリスのディリアスなどの作品も印象派音楽として位置づけられる。

Ⅵ 近代音楽
ロマン派音楽と現代音楽との橋渡し的な役割として理解される面が多い。
ストラビンスキー、バルトーク、シベリウス、スクリャービン、シェーンベルク、ベルク、そして、ショスタコーヴィッチとプロコフィエフ。

Ⅶ 現代音楽
第一次大戦終了後から現在に至るまでの音楽を総称して現代音楽と呼ぶ。この中に含まれる音楽スタイルはさまざまで現在もなお進行中のジャンル。電子音楽の試みをしたシュトックハウゼン、前衛的なアプローチの第一人者ジョン・ケージ、自然音を楽器によって模倣しようとしたメシアンなどがあげられる。

最後になるが、本格的なクラシックの歴史がバロック時代(1600年~)からとすると今日までおよそ400年経過したことになる。一方、絵画の世界ではダ・ヴィンチの傑作「モナ・リザ」が描かれたのが1500年頃だからこちらの方が100年ほど古い。

西洋芸術の粋は音楽と絵画に尽きると思うが、いったいどちらに優位性があるだろうと、ときどき妙なことを考えてしまう。

ついては、ずっと以前の朝日新聞の「天声人語」にこんな記事が載っていた。

「絵画は音楽に負ける」と冒頭にあって「音楽に涙する人は多けれど、絵画で泣いた話はめったに聞かない」とあり、興味深いのは音楽側の人の発言ではなく、昭和洋画壇の重鎮、中村研一氏の言ということ。

耳からの情報は五感の中でも唯一脳幹に直結しており、感情が生まれる古い脳に最も近い。

だから、音楽を聴いて一瞬で引き込まれ、涙することもある。音楽の効用の一つに感情の浄化だと言われるのはそのためだ。

この天声人語の最後はこんな言葉で結ばれている。

「心がうらぶれたときは音楽を聴くな」(笑)。




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