「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「フルトヴェングラー・ボックス」~107枚のCD~

2016年11月10日 | 音楽談義

            

このご時勢に今さらCDでもないのだろうが、ときどきネットで注文する「HMV」さんから宣伝用のメールが届いたので開けてみると、この画像が目に飛び込んできた。

「メルケル首相(ドイツ)がローマ教皇に進呈したことで話題になったフルトヴェングラー・ボックスが再生産されました。有名演奏の数々に加え入手困難な音源も多数含まれリハーーサルやスピーチまで聴ける激安ボックスです。」とある。

すぐに詳細をクリックして調査を開始。往年の名指揮者フルトヴェングラー(1886~1954)が指揮した107枚のCDボックスとくれば、貴重な文化遺産なんだから簡単に捨て置くわけにもいかない。

おっと、「フルトヴェングラーって誰?」という方がいるかもしれない。ネットから引用させてもらおう。

「カラヤン
の前にヴェルリン・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者を務め、20世紀前半を代表する指揮者のひとりとされている。ベートーヴェン、ブラームス、ワーグナー等のドイツ音楽の本流を得意とした。~中略~ 

音楽評論家の吉田秀和氏はフルトヴェングラーについて、<濃厚な官能性と、高い精神性と、その両方が一つに溶け合った魅力でもって、聴き手を強烈な陶酔にまきこんだ><(ベートーヴェンが)これらの音楽に封じ込めていた観念と情念が生き返ってくるのがきこえる>と評している。 

現在でもCDが続々と発売され、放送録音、海賊録音の発掘も多く、真偽論争となったレコードも少なくない。 

音が出る前から指揮棒の先が細かく震え始め、非常にわかりにくいその独特の指揮法から、日本ではフルトヴェングラーをもじって<振ると面食らう>などと評され、「フルヴェン」の愛称で親しまれている。」

はるか昔の20代の頃だが、それこそフルトヴェングラー抜きには夜も日も明けなかったが、30代の頃になると「もう卒業した」と思ったものだが、50代以降になると「やっぱりいい!」(笑)。

何しろ彼が活躍した1940年代前後はモノラル録音の時代で音質が悪いのが玉に瑕だが、フルトヴェングラーに限っては「演奏を取るか」「音質を取るか」となるとやはり前者になる。

このボックス購入の決め手はオペラ「魔笛」(モーツァルト)だった。

フルヴェンは魔笛の録音をライブで2回残している。1949年版と1951年版だが両者を聴き比べてみると、歌手の出来具合から音質まで圧倒的に1951年版の方がいい。

107枚のうち、「第5巻」に収録されていたのは紛れもなく「1951年版」(3枚組)だったので、そこまで慎重に選曲したのならこのCDボックスは「間違いあるまい」というのがその理由。

ちなみに、「魔笛」には主要な歌手が5人登場する。

「夜の女王役=コロラツゥーラ(ハイ・ソプラノ)」、「王女役=ソプラノ」、「王子役=テノール」、「道化役=バリトン」そして「高僧役=バス」

一般的には夜の女王役が難易度が一番高いとされており、実際にとても人気もあるが、個人的には「高僧役=バス」もそれに優るとも劣らないほど難しい役どころだと思っている。

50セット近い魔笛をつぶさに聴いてきたが、深々とした本格的なバスを聴かせてくれたのはたったの数名だが、その中でもダントツだったのが「ヨゼフ・グラインドル」だった。彼はフルトヴェングラーの大のお気に入りだったので「1949年版」と「1951年版」の両方に起用されている。

グラインドルにはこういう逸話がある。

「グラインドルはフリック、ベーメと並んでドイツの3大バスの一人。名声が世界的になったのは新バイロイトのバスの重鎮として20年近くあらゆるワーグナーのバス役を歌い続けたこと。70年開催のザルツブルク音楽祭ではカラヤンに起用されたが、そのときにカラヤンはグラインドルがフルトヴェングラーのお気に入りの歌手だったので自分の公演には参加してくれないだろうと思い、長らく彼を起用しなかった非礼を詫びたという。」

「人間の声からこんなに低い音が出るのか」と驚くほどの本格的な「バス」を聴けるのだから、この「フルヴェングラー・ボックス」絶対に買いですぞ!(笑)

注文してから三日後には早くも到着。

         

これからじっくりとフルヴェンの世界に浸らせてもらうとして、まずは「不滅の名盤」とされるシューマンの「交響曲第4番」(第1巻9枚目)から入った。

一般的に幻想的とされる曲目だが、フルヴェンが指揮すると緊張感溢れるドラマティックな演奏になって何だか悲劇性を帯びるような趣がある。

折しも、アメリカ大統領選では大方の予想を覆して「トランプ」候補が勝利したという番狂わせが起こったが、あの数々の暴言をアメリカ国民が許容したのが驚きだが、マスコミの事前予想っていったいなんだったんだろう。

フランスの思想家アランは「悲観は感情の産物であり、楽観は意志から生まれてくる。」と、言ったが、今後の日本への風当たりはいったいどうなることやら・・・。


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