前回からの続きです。
オークションで落札した待望の「ナス管アンプ」がようやく到着したが、前述したように出力管、整流管ともに1940年代の刻印付きの球を惜しげもなく使ってあるところが一番のメリット。
ハラハラドキドキしながら「AXIOM80」に繋いで実際に音出しをしたところ、一番心配していたハム音もいっさい無いし、音の透明感やヌケも申し分なし!
現在、プリ、パワー併せて9台ほどの真空管アンプを所有しているがすべて、オーディオ仲間のMさん(奈良)にお願いして点検、調整してもらったが、このアンプばかりはどうやら現状維持のままで良さそうだ。
オーディオ仲間のKさんに連絡すると「さんざん真空管アンプ道楽をされた方の最後に行き着く先が古いナス管アンプだそうですよ。程度のいいものに当たられてよかったですねえ。」
古いタイプの真空管といえば、ご存知の方も多いと思うが「12A」 → 「71A」 → 「45」 → 「50」 → 「2A3」と連なっていく魅力的な世界である。
今や真空管といえば猫も杓子も「300B」の感があるが、オリジナルはともかく中国製の近代管なんか使うよりもこれらの古典管のほうがずっと音がいいと思うが、なにぶん出力が小さいので能率の高いSPユニットを使うという条件付きの話になる。
なお、このアンプの初段管(電圧増幅管)は「6SN7」で、当初はRCAブランドのものが付いていたが、あいにくスペアの持ち合わせがなかったのでこの球もついでにオークションで落札。
真空管の泰山北斗であるKさんに「真空管のソケット部分にレイセオンとあってボールドウィン(Baldwin)の活字の印刷がありますが、この球の素性は大丈夫でしょうかね?」と、お訊ねしたところ、
「ボールドウィンはオルガンのメーカーです。真空管の選別の厳しさで有名なメーカーですから良品が多いですよ。280というファクトリー・ナンバーがあればレイセオンの自社製に間違いありません。」
というわけで見事に合格。レイセオン(アメリカ)は現在ミサイル・メーカーとして有名だが、昔は真空管を作っており、その信頼度は抜群。軍事用として通用するものを民生用に使用するのだから当たり前のことではある。
さて、先週の6日(金)にわざわざKさん(福岡)に来ていただいてこの「ナス管アンプ」の「球転がし」を実施した。
試聴後のKさんのご感想は「これほどとは思いませんでした。いいアンプに当たりましたね~。2倍近い値段がしてもおかしくないくらいの仕上がりです。」と、激賞だった。
その後「どんなにいい出力管を使っていても、整流管が悪ければ台無しですよ」ということで、持ってきていただいた数種類のナス管や出力管を差し換えながらの試聴テスト。
すべてソケット部分に刻印が押してある古典管ばかりで壮観だった。この時代は各メーカーがコストを無視して性能競争に励んでいたので優秀な球ばかり。シルヴァニア、カニンガム、RCA、レイセオン、フィルコ、アクチュラスなど。
いろんな組み合わせをテストしながら、最終的にベストだったのは出力管、整流管ともに〇〇だった。
とりわけ整流管は持参された〇〇製の「CXー〇〇」がベストで音の豊かさ、雰囲気、奥行き感が一頭地を抜いていた。
稀少球でオークションにも滅多に出品されない逸品だそうで、「言い値で結構ですから・・」とアッサリ申し込むと「譲るわけにはいきませんが、しばらくこのまま使ってみていいですよ。」とKさん。
同種の球を沢山持ってあるものの、いざ手放すとなるとマニアの心理としてきっと淋しくなるのに違いない。自分だって攻守所を変えればそうなる(笑)。
いわば貸与に落ち着いたわけだが真空管は消耗品だし、お言葉にずっと甘えるわけにもいかないので、「万一オークションで“CXー〇〇”が出品されたら、絶対に落としますから」という条件付きである。
Kさんからはほかにも出力管と別種の整流管をいただき感謝の一言で、とりあえず当面のストックは確保したのでまずはひと安心。
残るはこのアンプの使い方の問題になるが、現在は「AXIOM80」に使って100%満足しているものの、JBL375ドライバーに使ったらいったいどういう音になるんだろうと興味津々である。
現用の「刻印付き2A3」アンプと「ナス型の古典管」アンプの一騎打ちになるがはたして勝敗はいかに(笑)。
この結果については追って報告ということで。