このところCDトランスポート「ワディア270」(以下「270」)の調子がどうもおかしい。
再生する音質に異常はないのだが、CDを出し入れするトレイがときどき不順な動きをする。リモコンボタンを押しても、開けたと思えば急に閉まったりしてCDの取り出しが出来ない。
ヤレヤレ、とうとうメンテナンスの時期が来たか!
「好事魔多し」
保管していた「保証書」を見ると、買い上げ日が2005年11月11日になっている。もう9年半が経過した計算になるが、その間一度も故障しなかったのが不思議なのかもしれない。
月に直すと114か月、日数に直すと3500日ほどで日当300円あたりの「お楽しみ賃」となる。ま、そんなものだろう(笑)。
購入先は新品・中古品を含めて手広く営業している東京のショップ「Sオーディオ」さん。このオーディオ不況の中できちんと生き延びているのだから凄い。きっかけはよく覚えてないが、ここ20年ほどは大物の機器を購入するときにいつもこのお店を利用することにしている。もちろん敵状視察(?)とともに信用を得ていただくよう、現役時代に東京出張の折には必ず暇を見つけて立ち寄っていた。
アフターケアも丁寧で実に安心できるショップだが、それにしても顔馴染みのSさんははたして“ご健在”かな。そもそも修理を引き受けてもらえるのだろうか?
万一修理ができないとなると、「270」はとっくの昔に製造中止なので個人営業でやってる修理先を見つけるか、それとも新たに別の機種を購入するか、ちょっと迷うところだ。
少しでも音質が良くなる可能性があれば機器の入れ替えには躊躇しないが、大切なものが羽根をつけて飛んでいくのが少々残念(笑)。
ここでふと思い出したが、一方ではお金をたんまり持っていても機器の入れ替えを頑強に拒否する人たちもいる。
たとえばベストセラー作家の村上春樹さんは作家になる前はジャズ喫茶を経営するほどのジャズ好きで、中古レコード屋を巡るのが今でも大好きだし、当然のごとくオーディオにも無関心ではいられないはずだが、この点に関してステレオサウンド誌のインタビュー記事で次のような趣旨の回答をされていた。
「ずっと長い間、同じシステムの音(JBL)で聴いてきましたのでその音が我が家の試聴時のメルクマール(指標)になっています。そりゃあ、いろんな機会に我が家よりももっと”いい音”を聴いたりすることがありますが、それで(我が家の)システムを替えようとまでは思いません。」
自分とはまるで正反対のタイプだが、これはこれで一つの立派な見識である。執筆活動が忙しくてとてもオーディオにまで(時間的に)手が回らないというのもあるのだろうが(笑)。つまるところオーディオとは縁のない人なんでしょう。
ま、いろいろ言ってみても「270」を代えなくて済むのに越したことはないので、祈るような気持ちでSさんあて次のようなメールを送った。
「ご無沙汰してます。別府の〇〇です。その後お変わりありませんか?さて、10年ほど前に貴店から購入したワディアのCDトランスポート270ですが、トレイの開け閉めが不順になりました。時期も相当経つことから、一度全面的にメインテナンスをお願いしたいのですがよろしいでしょうか?また、その期間、貸していただけるCDトランスポートがありますでしょうか?以上よろしくお願いします。メールお待ちします。」
不安な気持ちで待つ中、2日後にようやく待望のメールが届いた。「270」の命運を握っているその中身やいかに?
以下、次回へ続く。