「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

オーディオ談義~「球ころがし」~

2012年02月07日 | オーディオ談義

ブログを始めてから早いもので、もう5年が過ぎたが、初めのうちはもの珍しさもあってこまめに2日に1回のペースで投稿していたものの、この頃はちょっと”ネタ切れ”気味で3日~4日に1回の更新へとペースダウン。

それでも原稿作成のためにパソコンに向かう時間がバカにならないが、カミさんや娘からは「相変わらず何の得にもならないことばかりして~」と揶揄(やゆ)されながらも、まあ、暖かく(?)見守ってくれている。

さて、「得になるか、ならないか」は傍目には金銭的な動きが一切ないので、まるでムダ働きのように映っているのだろうが、実はこのブログのおかげで「有形無形の得」をしていることをカミさんたちは一向にご存じないのが痛快と言えば痛快。

果たしてその「有形無形の得」とは?

一言でいえば「全国津々浦々の音楽愛好家・オーディオマニアの方々との交流」がそれで、このブログがなければ絶対に知り合いになれなかった人たちがいろいろ点在している
のだ!

その中で、とりわけ「有形の得」をさせてもらっているのが奈良県にお住いのMさんである。

バッハの「マタイ受難曲」をことのほか愛好され、グレン・グールドが弾く「イギリス組曲」などのCDを貸してもらったりして、懇意にさせていただいて、もう3年以上のお付き合いになる。しかも、アンプづくりの達人で、これまで全面改修してもらった真空管アンプが3台にものぼるがいずれも完璧な仕上がりで、大いに助かっている。

クラシック好きのうえにアンプ製作者ときているから、まったく理想的な技術者さんである。

と、ここで、この両者を兼ね備えるとなぜ「理想的」なのかをちょっと補足しておくと、自分なりの見解で言わせてもらえば、組み立てたばかりのアンプが「果たしてどういう音がするのか」、こればかりは製作者にとっても未知の存在で、絶対に試聴と調整が欠かせないが、その時に判断基準となるのが「音楽マインドと優れた耳」というわけで、たとえばコンデンサーの値を替えたり、銘柄を替えたりと、「微調整」によってはじめて「いい音」がするアンプが出来上がるもの。

仕上げが非常に大切というわけだが、とにかくMさんが手を入れたアンプは音楽性が高くて、そのうえ滅茶苦茶にSN比が良く、「ハム音」のハの音も一切聞えてこないのが大きな特徴。SPユニットに耳をピッタリくっつけてようやくサーッという音がかすかに感じ取れる程度なのだからその腕前たるや”もの凄い”。

さらに、ありがたいのが「修理のお礼」で(あまり大きな声では言えないが)、自らは遠慮してご請求されないので、いつもこちらの言い値どおりの「雀の涙」程度でお茶を濁しているものの、いつの日かまとめて「ご恩返し」をせねばと考えている。

今のところ、もっと気候が良くなってからの温泉付きの我が家への別府招待旅行をご提案中だが、いまだに色よい返事をもらえていない・・・。

さて、Mさんには厚かましくも2週間ほど前に4台目となる真空管アンプの修理をお願いしておいたところ、この3日(金)の午後に無事完了して我が家に戻ってきた。

このアンプは14年ほど前に、あるマニアの方に製作してもらったものだが、いろんな接続箇所の腐食が進んで雑音が出だしたので全幅の信頼を置くMさんに全面的な改修をお願いしたもの。

                   

左が半年ほど前に修繕していただいたアンプ(PX25・1号機)で、右が今回、全面改修をしてもらったアンプ(PX25・2号機)。

いずれも、三極管の世界ではウェスタン社の「WE300B」と並び称されるイギリス製の「PX25」を出力管としたアンプで、第一システムの中高域用SPユニット「Axiom80」に限定して使用しているもの。

これまで1号機で十分満足していたのだが、万が一、故障したときのことを考えて予備として完璧な状態で持っておこうと、2号機をMさんに送付してとりあえず試聴してもらったところ「小編成に限っては素晴らしい音ですが、1000ヘルツ以下の音があまり出ていないようです。全面改修となると部品代に相当かかりますが、どの程度の予算を考えてますか?」と打診があった。

真空管アンプの部品代を下手にケチると後々の”はね返り係数”が大きくなるし、今回のアンプはとりわけシンプルな回路なので最高級の部品を使ってもらう方がいいと判断し、思い切って「天井知らずでお願いします」。

その後3~4日ごとにメールで進捗状況の報告があって、部品の方は「9ピン真空管ソケット(金メッキ仕様)、カソード抵抗にはデールのメタルクラッド、スプラーグのコンデンサー、線材にベルデン」などを購入された由で、画像つきの説明なので実に分かりやすい。

Mさん独自のスタイルの大きな特徴は回路の「左右独立電源」にあり、これまでの真空管アンプもいずれもそのポリシーで統一されており、今回も同じ回路にしてもらったが、2~3日間のエージングの結果により大編成もバッチリというわけでご納得のうえ送付していただいた。

まず、絶対といっていいほど自画自賛をされない方だが、今回のアンプに限っては珍しく「音のランクが上がったかと思います。まあ、聴いてみてください」とのメールに元気百倍!

さあ~、3日(金)の到着直後の15時ごろから試聴開始。

「凄い!実に反応が早くて音離れがいい。スピード感にあふれる音、おまけに音に華やかさがあるがけっして安っぽくならない。これならクラシックだけでなくジャズでも十分にいける」というのが第一印象。

期待以上の仕上がりに大満足だが、さらに欲が深くなっていろんな役目を果たしている真空管を随時交換して音の雰囲気の変化を探ってみた。

いわゆる「球ころがし」。

今回の対象は「初段管」、「出力管」、「整流管」の3種類で、この組み合わせとなると膨大な数になるが、これまでのノウハウのもと、相性のよさそうな組み合わせはおよそ分かるのでかなり絞れた。

とにかく金曜日の午後から、月曜日まで、丸3日間、食事と運動の時間を除いて飽きもせずにあれこれ
続けるのだから、カミさんから「変人、奇人」扱いされるのも仕方がない。

まずは「初段管」の「12AU7=ECC82」から。

テレフンケン、シーメンス、東芝、JAN,そして新品同様のまま10年以上もエースとして大切に温存してきた「ムラード」と、差し替えてみたところ、好き好きの範疇だろうが、やはり「ムラード」が一番バランスが取れているように思えて見事合格。 

次に出力管「PX25」の比較に移った。オリジナルのイギリス製「GEC-VR40」とチェコ製の「RD27AS」(PX25同等管)との聴き比べ。

後者はこれまで1号機に挿していたものだが回路や出力トランスが変わるとどういう反応を示すのか大いに興味がある。

試聴してみると、この2号機に限っての話だが、「RD27AS」(直筒管)はレンジが広くなって躍動感も増すが、何もかも隅々まで容赦なく照らし出すような趣で、もっと陰影が欲しい印象を受けた。

こういう点ではさすがに「GECーVR40」はイギリスのゼントルマン風に節度があって、細かな襞の陰影でさえも思慮深く再現する風で実に好ましい鳴り方。音色の艶も一枚上のような印象を受けたのでこれに決定。さすがはオリジナルだと思った。

最後に整流管の方だが、これもマルコーニの「5U4G」、STCの「5R4GY」(いずれも直熱管)、RCAの「5V4G」、ウェスタンの「422A」(いずれも傍熱管)といったところをいろいろ試してみた。

                       

整流管の銘柄変更は出力管や初段管などのように顕著な差は見られず、むしろ規格数値とのマッチングに要注意といったところだが、この中ではウェスタンが音が浮わつかず実在感を示す趣があったのでこれに決定。

以上のとおり、いろいろ球を差し替えながらたっぷり遊んで真空管アンプの音の変化の面白さを満喫させてもらった。

今年の冬も昨年と同様に実に寒気が厳しいが”冬来たりなば春遠からじ”、このアンプが我が家のオーディオ・ルームに一足早く春の息吹をもたらしてくれたようで、大いに心が弾んだ。

 


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