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刑事の怒り

2021-04-16 12:13:20 | 日記

薬丸岳著「刑事の怒り」は、夏目信人シリーズの4巻目。ようやく読み終わった。

寝たきりで意思疎通もままらない患者をとりまく家族、支援員や医療関係者。主人公の夏目の家族と同じ状況で、自らの問いかけと重なっていく。

捜査終結宣言を出されるが、夏目刑事だけが被疑者の証言に違和感を感じている。

相変わらず鋭い観察とやさしいまなざしが光っている。結末はあっという間に逆転し、最後の「刑事の怒り」は、人間としての怒りだ。

2016年には「模原障害者施設殺傷事件」よって、重度障害者への偏見と差別が大きくクロースアップした。
それから2年後にこの小説が。当然に意識して書かれたと思う。

まったくもって身勝手な考え方だ。

しかし、ヘイトスピーチをはじめ少数者を攻撃する者たちがあとを絶たない。

去年の月刊誌「みんなの願い8月号」に「不寛容な社会を乗りこえる」「選ばれる命はない」と、藤井克徳きょうされん専務理事と編集長との対談が掲載された。

藤井氏は新型コロナ禍で「潜っていた問題」が表面化してきたと述べ、「生産性や経済性一辺倒の考え」「分かりやすく言えば、速いことがすべて、強いことがすべて」「これらについていけない人は『好ましくない人』になってしまう」と不寛容な社会を批判している。

小説の世界、現実の「模原障害者施設殺傷事件」、そして新型コロナ禍におけるさまざまな差別には、共通するものがある。

私たちは、こうした社会とともに、自らの意識をも変えていかなければと思う。

もし出るのであれば、次の第5巻が楽しみだ。