おまけのこ (新潮文庫 は 37-4)畠中 恵新潮社このアイテムの詳細を見る |
♪「おまけのこ」畠中恵著 新潮文庫
畠中恵の「妖(あやかし)」シリーズ第4弾。
江戸の回船問屋兼薬種問屋の病弱な若旦那一太郎と、実は妖である二人の手代を中心とした謎解きものだ。
若旦那に僕(しもべ)のように付添う二人の兄や(にいや)で手代の仁吉と佐助、そして家に棲み付く小鬼の鳴家(やなり)や屏風のぞきなど、いろいろな妖怪が登場する。
ほとんどの妖怪は悪さをする訳ではなく、人間と大人しく共存している。
この小説には、名人の落語家が語る江戸人情話のような風情が漂う。
若旦那の謎解きと人情話がない交ぜになる持ち味は、すっかり定着したね。
第一話の「こわい」
人間や妖だけでなく、神からも嫌われる一人ぼっちの妖怪「弧者異(こわい)」
関わるととんでもないことに巻き込まれると、兄やたちは若旦那を近づけようとしない。
「なんで俺だけ邪魔者扱いなんだよぉ~」と嘆く弧者異に、若旦那は自分の身の危険も顧みず「家に上がりなよ」と声を掛ける。
しかしちょっとした言葉の行き違いで、弧者異はつむじを曲げてしまう。
結局人の優しさにも素直になれない弧者異の因果な性格が、ツンと胸に響く。
そして第二話の「畳紙(たとうがみ)
幼い頃に両親を亡くし祖父母に厳しく育てられるが、いつしか心を閉ざすとともに白粉を分厚く塗りたくるお雛。
その心を「屏風のぞき」が解き解そうとする・・・。
その他にも、しんみりと胸に染み入る短編が続く。
池波正太郎や藤沢周平、澤田ふじ子、宮部みゆきら、江戸の人情を題材にした小説は、古今東西たくさんある。
そんな中で、畠中恵は「江戸妖怪人情話」という独自のジャンルを築いたと思う。
これからがとても楽しみだ。