呑む気オヤジ/蔵王山麓蓬莱庵便り

蔵王山麓暮らしのオヤジの日記。合唱も映画もドライブも温泉も、たまには俳句も・・・😄

呑む気父さんの読書感想文 亥の25・26 「楽園」

2007-10-25 | 本の話
楽園 下
宮部 みゆき
文藝春秋

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♪「楽園」宮部みゆき著 新潮社

かの「模倣犯」の続編的サイコメトラー・ミステリィー。
「模倣犯」で、真犯人を追い詰めた前畑滋子が、9年の年月を経てまた事件に巻き込まれる。
あの未曾有の連続殺人事件で自らも深い傷を負い、暫くはルポ活動も儘ならず細々とフリーペーパーの掲載記事を書いていた前畑に、難解かつ興味深い調査依頼がもたらされて・・・。

交通事故で亡くなった少年は、生前「山荘殺人事件」やその他の事件を見透し、絵画として残していた・・・。
前畑滋子は、もう血なまぐさい事件のルポには一切関わらないつもりだったし
9年前の精神的ショックもありって、書きたくても書けない状況が長く続いていた。
しかし滋子は15年前の両親による娘殺し事件に、いつの間にか深く関わり、その泥沼から抜け出せなくなる。
少年とその母親、殺された少女と犯人である両親と妹、少女を利用し尽くす悪のボーフレンドとその母親、叔父・・・。
いろいろな家族・親族の、濃密で切り捨てられない、ドロドロした感情のもつれが克明に描かれる。
宮部は家族って、良いものだけど大変だね、きついね! というところを突き詰める。

本は面白くて、ぐいぐい読めた。
何度も話しているように、僕は宮部さんの現代物、特に超能力ものは苦手だ。
でもこの話はすんなり読めた。
あまり超能力を強調していないからかな。
あれだけ連続殺人事件(山荘事件)で痛めつけられた前畑滋子が、結局は生来の旺盛な好奇心を止められず・・・と言うところが、彼女らしいがちょっと可哀相。
そこまで自分を律しなくてもいいのに・・・、もっと楽に生きればいいのに・・・。

でもやっぱり「模倣犯」の圧倒的迫力と重厚さには、一歩及ばない。
もっともこの前書いたように「倣犯」には、僕の嫌いな宮部流の冗長さがあった。
「楽園」には、適度に贅肉を削ぎ落とした、スリムな物語展開が存在する。
「模倣犯」も、このくらいのボリュームで書いても良かったような気がするけどねぇ。

コメント
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