「風間陽水の依頼簿（カルテ）・1092」

カルテ番号　あ・28　9度目（41）

三人が更に驚いたのは、吉永百合が目を覚ましてからだった。
「・・・私、よく眠っていたわ・・・」
目を覚ました百合は、マットに横になる前の百合ではなかった。
この間、およそ10数分。
声が別人だった。
よく響く、透き通った高い声。
鈴のような、という形容詞が使える声だった。

それまでの百合の声も、聞き難くはなかった。
だが、小さな声だった。
そして、これほど高く響く声ではなかった。
言葉を発した百合も怪訝そうだ。
自分の声が違っているのに気付いたようだった。
違ったのは、それだけではない。
雰囲気だ。

最初にこの治療院に来てから、確かに変わってきていた。
脱皮して、美人になった。
それでも、柳玲香や愛田恵子の美人顔とは違う。
前回、愛田恵子が百合を女神と言ったが、それは例えだった。
大きく顔が変わったわけではない。
だが、大きく雰囲気は変わった。
そして、この声。
百合は、女神に近いといえる雰囲気だった。

（登場する人物・組織・その他はフィックションです）
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