真夏の夜空を色とりどりに染めてくれる花火。
一瞬の輝きに人は酔いしれる。花火・焚き火・いろりの火・灯篭・ロウソクの火と、火の光は人を魅了する。
火は人類の文化であり芸術だ。人は暗闇を嫌い、希望の火を追い求めて生きている。美しい思い出、悲しい思い出と、僕にはいろいろな花火の思い出がある。
線香花火から巨大な二尺玉まで、いろんな思い出がある。30年近い歴史の中を走馬灯のように流れて行った学院卒業生面々の夏の花火の思い出。
オーストラリアはシドニーで、史上最大級の花火を打ち上げた。シドニー湾の全ての海が、たった一発の花火で完璧に覆われた。大輪の菊の花が空一杯に開花した。歴史的瞬間だ。僕らの瞳に感涙の花火の星が光っていた。
名花火師と謳われていた僕の友人が、花火工場の大爆発で爆死した。内臓はグチャグチャなのに、職人の誇りを失わなかった美しい顔。真夏の夜空のキャンパスに、閃光のペンキが描く火の花の宴は、過ぎ去った夏の日々を思い出す。