霜月と言えば、旧暦の11月の別名である。 その下旬もあと数日となった24日(土曜日)から25日(日曜日)にかけては、早朝のちょっとした冷え込みを除けば、風も無く陽が昇るにつれて、ホカホカ陽気の小春日和となった。
この陽気に誘われてフィールドに出ようにも、狩猟が解禁となっているので、林道の奥や小谷には入れない。
この好日に、散策をした事の無い場所で、一之瀬川の秋の風景を辿ってみたいと思い、25日の外出となった。
いつも行く火打石(度会町)から先の一之瀬川本流の上流は、天祥橋(火打石)から小萩川の合流地点までは、河川が「駒ヶ野」の村落を大きく穿入蛇行をして周回し、航空写真を見ても殆ど川原が見られない上に、川に下りる適当な場所も見当たらなかったので、探石はせずじまいであった。
村落少し上方沿いの県道22号線は、最近拡幅改修工事が成され、素道りしやすくなっていた事もあり、道幅の狭い駒ヶ野の村落には立ち入る事すらなかった。
しかし、この未知のエリアを知らずには居られないと思い立ち、この日曜日に車を走らせた。 村落の中から一之瀬川へと下る枝道があり、この道は川を渡る「隆祥橋」を経て、小狭な農・林道へとつながっていた。 この橋口の右横に草分け道らしい下り口があった。
川岸も川床も白っぽいチャートの岩盤であった。 上流を眺めても、橋の上から下流方向を眺めても、川筋は真っすぐなものの、穿入蛇行による渓流となっていて、早瀬や小滝、淵が断続して続く景勝を呈し、ここは散策するのに絶好の「隠れた秘境」の感じがしないでもなかった。
まさに地形は「先行谷」であり、地質時代を通しての土地の隆起と水流と岩盤とのせめぎ合いの結果生じた、言わば地形のシュプール(航跡)が生々しく、初めて訪ねた未知の風景美を暫し堪能させてくれた。
その後、渓流の岩盤や巨岩の間隙に「石溜り」はないかと、車を切り返して橋の袂に止めて、橋を渡った右岸の農道を少し歩いてみた。
小狭な段丘上の野面積みの石垣に囲まれた棚田や段々畑が、昼前の日射しにまぶしく照らされ、川岸や背後の山林に植えられた雑木の広葉樹が、少しずつ色づき始めていた。
今年は、紅葉が随分遅れているようだ。
川に下りて少し探石をしてみたものの、人頭大の転石が多く、しかも白チャートと泥質岩(頁岩や粘板岩)が殆どで、輝緑凝灰岩や石灰岩は余り見当たらなかった。 小萩川から流下した石灰質准片岩なども少しは見かけたが、水石となるような転石は、この駒ヶ野の渓流では望めそうになかった。
それでも何か一つは拾わねばと思い、唯一持ち帰ったのが、掲載写真の、高さ約13cm の烏帽子形をした「五色石系の石灰岩」であった。
(この記事の掲載写真は、全て2018年11月25日に撮影をしました。)