伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
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  感性の趣くままに-。

伊勢志摩地方の鍾乳洞を探る

2010年08月05日 | 伊勢志摩~奥伊勢のフィールド・ワーク

天の岩戸(瀧祭窟)

天の岩戸(瀧祭窟)

 

石灰石の採掘と鍾乳洞

 日本列島は、断続的ではあるが、北から南まで石灰岩が分布し、各地のセメント・プラントに必要な原料鉱石の供給源となっている。かつては、肥料や消毒剤としての石灰(いしばい)を作るのに、ごく小規模な石灰窯等もたくさんあった。このような石灰石鉱山や鉱山跡、石灰岩の石切り場には、必ずと言ってよいぐらい鍾乳洞があり、わが国で唯一自給自足の出来る地下資源である石灰石(せっかいせき。石灰岩の鉱石名)の採掘の陰で、消えて行った無名の洞穴も数少なくない。

 

三重県の石灰石鉱山と鍾乳洞の調査

 三重県には、現在も稼行中の大規模な石灰石鉱山が4つある。最大規模の鉱山は北勢の藤原鉱山、それに続くのが鈴峰鉱山と篠立鉱山、そして南勢地区の国見山石灰鉱山(旧南島町神前)である。いずれの石灰岩も古生代の石炭紀から二畳紀のものとされているが、石灰石鉱山の界隈には大小さまざまな鍾乳洞が開口していて、主にケイビング・クラブや洞窟専門の生物学者らのグループによって、精細な調査が成されている。

 

伊勢志摩地方の石灰岩の分布と、主な鍾乳洞

 さて、伊勢志摩地方に目を向けると、石灰岩は、北は神島から安楽島を経て磯部町へと広がり、さらに伊勢市南方の島路山から矢持町を経て南伊勢町へと分布する。特に石灰岩地帯として著名なのは、天岩戸から逢坂峠付近にかけての山地と、伊勢市矢持町下村から菖蒲にかけての山地である。他、伊勢志摩からは少し離れるが、さらに南の国見山(度会郡南伊勢町)から大紀町阿曽にかけての地域にも広く分布する。これらの地方には幾つかの鍾乳洞が点在し、古文書にも記され、古来探検が成されている著名な洞穴もあれば、まったく人知らずの無名洞も幾つかある。

 これまでに学術調査が成され、学術文献に記載されている伊勢志摩地方とその界隈の主な鍾乳洞を記すと、次のようになる。

◆ 伊勢市
鷲嶺(しゅうれい)の水穴、覆盆子(ふぼんじ)洞、嫁穴(以上、矢持町)。燧石の穴、五知越の穴、旭の竪穴(以上、島路山から神路山にかけての神宮宮域内)
◆ 志摩市
天の岩戸の水穴 ・「瀧祭窟」(たきまつりのいわや)、風穴、倉谷の穴、天の岩戸新洞、通称・廃窯(はいがま)の穴(以上、磯部町)
◆ 鳥羽市
神島鍾乳洞(神島町)
◆ 度会郡
木屋の蝙蝠(こうもり)穴、阿曽の風穴、藤ヶ野の穴(以上、 大紀町)。国見山石灰鉱山の鍾乳洞、河内の竪穴、船越の鍾乳洞(以上、南伊勢町)

 これらの内、一部は未調査洞であるが、大半は神聖視され信仰の対象となっていたり、危険防止上、立ち入り禁止や入洞が規制されている。誰でも簡単に入洞が出来て、ケイビングを楽しめる洞穴となると、ごく限られるが、整備が成され観光洞となっているものは皆無である。当地方の鍾乳洞は、小規模な洞穴が殆どで、奥行きも鷲嶺の水穴の約300mが最長である。

 

鍾乳石の採集できる洞穴

 上記の鍾乳洞の内、洞内で鍾乳石を自由に拾えるのは、磯部町の通称・廃窯(はいがま)の穴(奥行き約80m)ぐらいである。

 

覆盆子洞

覆盆子洞

覆盆子洞の内部(入口付近)

覆盆子洞の内部(入口付近)

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