(1)TPPは、「産業の空洞化」を最も促進する。日本国内の雇用は減る。日本に工場が残っても、海外からの安い雇用が増える。今までになく日本人の雇用が失われる。
米国の最近の世論調査でも、69%がTPPもFTAもやめてほしい、と回答した。なぜなら、雇用が失われるから。米国では儲かるのは「1%」の人々であることが理解されている。
(2)なぜ「1%」の利益が尊重されるのか。
米国においては、その選挙資金がないと大統領になれない政治家、「天下り」、「回天ドア」(食品医薬品薬局の長官と製薬会社の社長が行ったり来たり)で一体化している一部の官僚、スポンサー料でつながる一部のマスコミ、研究費でつながる一部の学者などが「1%」の利益を守るために国民の99%を欺き、犠牲にして顧みないからだ。
日本も同じだ。すでに、そうした人々の圧力により、規制緩和の嵐の中で、大店法を撤廃し、派遣労働を緩和した。全国の駅前商店街はシャッター通りになり、所得が200万円に満たない人々が続出している。
以前の自公政権がやろうとした極端な規制緩和は、若者を含む多くの雇用を奪い、地域の商店街を潰し、地域医療も崩し、人々が支え合う安全・安心な社会を揺るがした。
その結果、3年前に「ノー」を突きつけられたはずだが、性懲りもなく、「経済財政諮問会議」「産業競争力会議」「規制改革会議」などを復活し、大手企業の経営陣とそれをサポートする市場至上主義的な委員を集め、「規制緩和を徹底すれば、すべてうまくいく」という時代遅れの方向性を強化し、それを貫徹する「切り札」としてのTPPを「ごり押し」しようとしている。
(3)TPPは史上最悪の選択肢だ。
TPPで食料自給率が13%になったら、国民の命の正念場だ。医療崩壊、雇用減少、損失は過去最大だ。しかも、得られる経済利益はアジア中心のどのFTAよりも小さい(内閣府の試算)。
TPP推進者は、具体的なメリットも日本の将来構想も示していない。示せないのだ。ひとたび、すべてを撤廃するTPPに乗れば、他の柔軟な協定(日中韓やRCEP)ができなくなってしまう。
TPPのメリットがないことは関係者にもわかっている。分かっていながら、原発での失政や、国内経済政策の失敗から国民の目先をそらして自己防衛するために、TPPにバラ色の未来があるかのように偽って推進することは、自己の目先の利益と保身と責任転嫁のために、国の将来を売り飛ばすようなものだ。
(4)TPPの内容を知りたいなら、韓米ETAを見てくれ、と米国は日本に対して2年前に示唆した。日本政府は、慌てて「韓米FTAを国民に知らせるな」と箝口令を敷いた。
実は韓国政府も韓国国民に韓米FTAの内容を隠し続け、批准の直前に言わざるを得なくなって、韓国中が騒然となった。もう1日置いたら10万人、20万人規模のデモになってしまうことが分かったので、その前日に、催涙弾を投げ込まれても、与党単独で強行採決に踏み切った。
韓米FTAには、いまTPPで問題になっている事項がすべて入っている。
しかも、韓米FTAにおいては、交渉開始のための「頭金」として支払ったのが、①遺伝子組み換え食品について米国が大丈夫といったものは自動的に韓国でも受け入れる、②国民健康保険が適用されない米国の営利病院が認められる医療特区をいくつも作る、③BSEに関わる輸入牛肉の条件緩和、などだ。
「頭金」を支払ったら抜けられない、と韓国は日本に警告しているのだが、日本政府は国民に知らせずに「頭金」を払って入れてもらおうと必死に画策を続けてきた。
(5)条件闘争では立ちゆかない。かつ、関税だけでなく、日本独自のルールが非関税障壁として否定され、国民生活全体に多大な損失をもたらす。ひとたび受け入れてしまえば、取り返しがつかない。
(7)全国の多くの地域がTPPに反対している。賛成する都道府県知事は、6人しかいない。都道府県議会は、47分の44が反対または慎重の決議をしている。市町村議会の9割が反対の決議をしている。だから、自民党議員の6割が反対を唱えている。
全国各地の地域社会の声が、東京中心のメディアの発信では、ほとんど伝わらない。
□鈴木宣弘(東京大学大学院教授)「許しがたい背信行為 ~この国に未来はあるか~」(「世界」2013年4月号)
【参考】
「【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~」
「【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~」
「【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加」
「【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~」
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
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米国の最近の世論調査でも、69%がTPPもFTAもやめてほしい、と回答した。なぜなら、雇用が失われるから。米国では儲かるのは「1%」の人々であることが理解されている。
(2)なぜ「1%」の利益が尊重されるのか。
米国においては、その選挙資金がないと大統領になれない政治家、「天下り」、「回天ドア」(食品医薬品薬局の長官と製薬会社の社長が行ったり来たり)で一体化している一部の官僚、スポンサー料でつながる一部のマスコミ、研究費でつながる一部の学者などが「1%」の利益を守るために国民の99%を欺き、犠牲にして顧みないからだ。
日本も同じだ。すでに、そうした人々の圧力により、規制緩和の嵐の中で、大店法を撤廃し、派遣労働を緩和した。全国の駅前商店街はシャッター通りになり、所得が200万円に満たない人々が続出している。
以前の自公政権がやろうとした極端な規制緩和は、若者を含む多くの雇用を奪い、地域の商店街を潰し、地域医療も崩し、人々が支え合う安全・安心な社会を揺るがした。
その結果、3年前に「ノー」を突きつけられたはずだが、性懲りもなく、「経済財政諮問会議」「産業競争力会議」「規制改革会議」などを復活し、大手企業の経営陣とそれをサポートする市場至上主義的な委員を集め、「規制緩和を徹底すれば、すべてうまくいく」という時代遅れの方向性を強化し、それを貫徹する「切り札」としてのTPPを「ごり押し」しようとしている。
(3)TPPは史上最悪の選択肢だ。
TPPで食料自給率が13%になったら、国民の命の正念場だ。医療崩壊、雇用減少、損失は過去最大だ。しかも、得られる経済利益はアジア中心のどのFTAよりも小さい(内閣府の試算)。
TPP推進者は、具体的なメリットも日本の将来構想も示していない。示せないのだ。ひとたび、すべてを撤廃するTPPに乗れば、他の柔軟な協定(日中韓やRCEP)ができなくなってしまう。
TPPのメリットがないことは関係者にもわかっている。分かっていながら、原発での失政や、国内経済政策の失敗から国民の目先をそらして自己防衛するために、TPPにバラ色の未来があるかのように偽って推進することは、自己の目先の利益と保身と責任転嫁のために、国の将来を売り飛ばすようなものだ。
(4)TPPの内容を知りたいなら、韓米ETAを見てくれ、と米国は日本に対して2年前に示唆した。日本政府は、慌てて「韓米FTAを国民に知らせるな」と箝口令を敷いた。
実は韓国政府も韓国国民に韓米FTAの内容を隠し続け、批准の直前に言わざるを得なくなって、韓国中が騒然となった。もう1日置いたら10万人、20万人規模のデモになってしまうことが分かったので、その前日に、催涙弾を投げ込まれても、与党単独で強行採決に踏み切った。
韓米FTAには、いまTPPで問題になっている事項がすべて入っている。
しかも、韓米FTAにおいては、交渉開始のための「頭金」として支払ったのが、①遺伝子組み換え食品について米国が大丈夫といったものは自動的に韓国でも受け入れる、②国民健康保険が適用されない米国の営利病院が認められる医療特区をいくつも作る、③BSEに関わる輸入牛肉の条件緩和、などだ。
「頭金」を支払ったら抜けられない、と韓国は日本に警告しているのだが、日本政府は国民に知らせずに「頭金」を払って入れてもらおうと必死に画策を続けてきた。
(5)条件闘争では立ちゆかない。かつ、関税だけでなく、日本独自のルールが非関税障壁として否定され、国民生活全体に多大な損失をもたらす。ひとたび受け入れてしまえば、取り返しがつかない。
(7)全国の多くの地域がTPPに反対している。賛成する都道府県知事は、6人しかいない。都道府県議会は、47分の44が反対または慎重の決議をしている。市町村議会の9割が反対の決議をしている。だから、自民党議員の6割が反対を唱えている。
全国各地の地域社会の声が、東京中心のメディアの発信では、ほとんど伝わらない。
□鈴木宣弘(東京大学大学院教授)「許しがたい背信行為 ~この国に未来はあるか~」(「世界」2013年4月号)
【参考】
「【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~」
「【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~」
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