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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~

2013年03月16日 | 社会
 (1)米国では、1%が米国の富の40%を握る。そのごく一部の多国籍化した巨大企業が、米国でも世界中でも格差社会に広義するデモが起きてやりにくくなってきたのを打開するために、時代の流れに逆行して、TPPによって無法ルール地帯を無理矢理に世界に広げることによって儲けようと推進しているものだ。
 TPPは、米国の巨大企業中心の「1%の1%による1%のための」協定である。大多数を不幸にする。

 (2)政策・制度は、相互に助け合い支え合う社会を形成するためにある。「1%」の人々の富の拡大には邪魔だ。だから、米国のいわゆる「競争条件の標準化」の名の下に、相互扶助制度や組織(国民健康保険・共済・生協・農協・様々な安全等)を、国境を超えた自由な企業活動の「非関税障壁」として攻撃する。
 攻撃を貫徹する切り札として、公平な社会を守るセイフティーネット、人々の命を守る安全基準や環境基準までも、自由な企業活動を邪魔するものとして、国際裁判所(米国の傘下)に提訴して損害賠償や制度の撤廃に追い込める「ISD条項」が準備されている。
 地方自治体の独自の産業振興策(<例>学校給食の食材は地産地消で)も攻撃される。地方自治否定の「競争条件の平準化」だ。
 ISD条項が実際に発動されなくても、威嚇効果を狙っている。
 地方自治行政の存在意義そのものが喪失しかねない。

 (3)韓米FTAで、韓国は、国民健康保険が適用されない米国の営利病院が認められる医療特区をいくつも作る、といった譲歩を行った。

 (4)米国は、北米自由貿易協定(NAFTA)で、メキシコやカナダに対してISD条項を使って、セーフティネットや安全基準、緩急基準までも、自由な企業活動を邪魔するものとして国際裁判所に提訴し、損害賠償や制度の撤廃に追い込んだ。
 ISD条項を用いれば、米国の保険会社は、日本の健康保険制度を「参入障壁」だとして提訴することで、損害賠償の獲得と制度撤廃に追い込める。
 日本の薬価決定に米国の製薬会社が入り、薬の特許も強化され、安価な薬の普及ができなくなり、国民健康保険の財源が圧迫され、崩されていく。
 すでに長年、米国は日本の医療制度を攻撃し、崩してきている。この流れにとどめをさすのがTPPだ。TPPで攻撃が止まるわけがない。
 ケガをしても病気になっても病院で門前払いされる無保険者が5,000万人に達する米国医療が、明日の日本の姿になる。

 (5)TPPで遺伝子組み換え(GM)食品がさらに広がる。
 GM食品などについて、米国が科学的に安全と認めたものを表示するのは消費者を惑わすから止めるよう、豪州、ニュージーランドもTPP交渉の中で米国から求められている消費者の選択の権利が失われる。
 GM種子の販売は、米国の穀物メジャー数社のシェアが大きい。特許で守られているから、農家はそれまで自家栽培してきた種を、毎年高い値段で買い続けなければならなくなる。そのための借金などが途上国の農村経済に暗い影を落としている(インド農村における自殺率の上昇)。
 GM種子は、飛散して在来種を「汚染」していく。
 TPPでGM農産物がさらに広がっていくと、世界の食料・農村は米国の穀物メジャーによってコントロールされていく危険性がある。

 (6)ポストハーベスト農薬(防腐剤や防カビ剤など)も日本の基準は厳しすぎるからもっと緩めるよう、米国から求められている。
 TPPによって米国自身が日本の基準をチェックして変えられるシステムに変更することに執念を燃やしている、とマランティスUSTR次席代表は2011年12月の公聴会で発言している。
 ISD条項による提訴も想定される。
 すでに米国からの要求で次々に基準緩和をしているのだから、TPPがこれを加速し、とどめを刺す。

□鈴木宣弘(東京大学大学院教授)「許しがたい背信行為 ~この国に未来はあるか~」(「世界」2013年4月号)

 【参考】
【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~
【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加
【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
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