語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【堤未果】再生可能エネルギーを悪用する投資家たち

2016年02月27日 | 社会
 (1)2015年は、温室効果ガス排出削減を国際的コンセンサスとする潮流と共に幕を閉じた。
 12月12日、第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)が採択したのは、地球温暖化対策における2020年以降の新たな枠組みとなる「パリ協定」だ。
 同協定は、今世紀後半までの「ゼロ炭素化」を求める。温室効果ガス削減を先進国に課する京都議定書と違い、国連に加盟する全196ヵ国に対して法的拘束力を持つ。

 (2)2016年1月16日、この流れに沿うようにして、国際再生エネルギー機関(IRENA)が、再生可能エネルギーの使用が、気候変動だけでなく経済効果にも大きな影響を与えることを示す試算を発表した。
 2030年までに、風力、地熱、水力、太陽光、バイオマスなどのエネルギー使用率を現在の倍に増やすことで、世界の総GDP額が1兆3,000億ドル増加、雇用も増大し、化石燃料の輸入に係る政府支出も減るという。
 エネルギー輸入大国たる日本が、再生エネルギー使用率を倍増させた場合、そのGDP増加率はトップのウクライナについで160ヵ国中2位だ。

 (3)IRENAへの分担金出資比率が最も高い米国では、再生エネルギー利用率100%をめざす自治体が少なくない。
   カルフォニア州サンフランシスコは2020年、
   同サンディエゴは2035年
までに全ての電力を再生エネルギーに置き換えるという目標を掲げている。
 ハワイの州議会は、2045年までに州内の電力を100%再生エネルギーで賄う法案を可決した。

 (4)再生エネルギー自体への投資も増えている。
 2015年の世界における再生エネルギー向け投資額は、原油価格下落や欧州経済悪化にもかかわらず、2004年の6倍の3,293億ドルに達した。

 (5)米国の思想家レスター・ブラウン博士(環境問題の世界的権威)によれば、米国金融市場では30年以上前から原発への投資がない代わりに、再生エネルギーへの投資が数十億ドル規模で拡大しつつある。
 レスター・ブラウン博士(米国の環境問題思想家)によれば、米国の金融市場では、30年以上前から原発への投資がない代わりに、再生エネルギーへの投資が数十億ドル規模で拡大しているという。博士は、新著『大転換』の中で、再生エネルギーへの転換と投資が、今の時代にとっても経済的にも必然だと説く。

 (6)だが、新しい潮流は常にその規模と、生み出される利権の大きさが比例する。
 <例>2012年7月から日本で実施されている「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)」もその一つ。太陽光発電で作られた電力を、電力会社が
   1kWh=42円
という諸外国の倍値で買い取ってくれる制度だ。この買取価格を決定した政府委員会の委員長は、その後、自然エネルギーの公益財団法人理事に就いた。
 当時史上最悪の原発事故を起こした日本で、反原発運動の急激な高まりと共に成立したこの制度は、外資規制が緩い日本で認可時点の買取価格が20年保証される、という破格の特権に外国人投資家たちが飛びついた。
 この制度が導入されて以来、外資を中心に、太陽光電力事業者が殺到した。
 だが、買取価格のコストが日本国民の電気料金に上乗せされる一方で、外資事業者の利益は国外へと流れる構造に、年々批判と見直しを求める声が高まっている。

□堤未果「再生可能エネルギーは重要。でも、それを悪用する投資家たちには気をつけろ ~ジャーナリストの目 第284回~」(「週刊現代」2016年2月20日号)
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