語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない ~いま生きる「資本論」(18)~

2018年06月14日 | ●佐藤優
 <ただ、そうなると、『資本論』で説明できないことが出てきます。労働者階級、資本家階級、それから地主階級、この三大階級によって社会が成り立っている。では公務員は、どこに所属するんですか?
 共産党系の本を読むと、指定職局長以上の公務員はみなし資本家、つまり資本家の仲間であり、役職がついていないヒラの公務員はプロレタリアート--そんな分け方をしています。これはまったく理論的な基準がないと私は思う。公務員論になると、マルクス経済学やマルクス主義者はほぼ破綻していますね。
 本当のことを言いましょうか? この教室に公務員の方がいたらごめんなさいね。私は元外務公務員だったのでよく知っていますが、公務員というのは社会に寄生している存在です。社会の外側にいて、国家の暴力を恃(たの)んで、社会から収奪しているのです。その点は、マルクスの『資本論』とリカードの『経済学および課税の原理』の断絶を見ればわかります。『資本論』は社会を分析した書物です。社会の構造の中では、国家のことを持ち出さなくてもすむんですよ。国家は、『資本論』においては社会の外側にあるものなのです。だから、国家については別途考えないといけない。
 結論を言うと、国家は社会から吸い上げることによって生きています。こういう国家の本質を深く分析し、よく理解していたのは、マルクスではなく、マックス・ウェーバーとレーニンでした。>

 <本質において、国家というものはあくまで社会の外側にあって、社会から収奪していく存在です。ここをきちんと考察しているのが、柄谷行人さんですよ。私は彼から非常に強く触発されて、NHKブックスから『国家論』という本を出していますので、関心がある方は読んでみて下さい。>

 <国家は社会の外側にあり、本質において暴力的であり、やはり本質において官僚階級が恣意的に運営している。こういうシステムだということも、『資本論』から読み込んでいけるのです。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「2 どうせ他人が食べるもの」の「公務員とは何か?」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する ~いま生きる「資本論」(17)~
【佐藤優】他人のための使用価値 ~いま生きる「資本論」(16)~
【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~



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