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2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~

2018年06月11日 | ●佐藤優
 <宇野弘蔵の考え方は、基本的に経済学を歴史学の一つとして考えています。経済学というのは、資本主義時代にしか通用しないものです。なぜならば、経済を基準に社会全体が動くようになったのは資本主義になってからですからね。その歴史に特殊な資本主義というものの論理を、実証的かつ客観的に明らかにしていくのが経済学です。
 『資本論』を読んでいく時でも、宇野さんは決して、「理論と実践の有機的な統一」であるとか、「唯物史観」であるとか、「人類が原始共産制から奴隷制になって、封建制になって、資本主義になって、社会主義になって」というような発想をとりません。資本主義社会の論理をつかむということだけを考えていくのです。人間の経済生活が商品によって行われる資本主義社会の内在的論理は全て、客観的かつ実証的な方法で証明することができるんだという姿勢です。
 宇野弘蔵は、共産党系の経済学や『資本論』を訳した向坂逸郎さん--彼は社会党左派系--たちの経済学については「マルクス主義経済学」と呼びました。そして、自分がやっているのは「マルクス経済学」だと言った。マルクスの考えたことは「経済学」と言えるものだけれども、彼の論理体系とそれ以外のいわゆる近代経済学とを区別するために、「マルクスの経済学」という意味合いで「マルクス経済学」と呼んだのです。
 それに対して「社会主義を実現するんだ。今の資本主義はなってないぞ」という観点、イデオロギーの観点、彼らの正義の観点から『資本論』を読んでいくのは「マルクス主義経済学」であり、自分の経済学とは一切関係がない、としたのが宇野の立場です。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「1 恋とフェスティズム」の「マルクス経済学とマルクス主義経済学」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~




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