語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト ~いま生きる「資本論」(15)~

2018年06月13日 | ●佐藤優
 <受講生D/フロイトは古典のうちに入るでしょうか?
佐藤/入ります。
 フロイトがなぜ重要かというと、先ほどユダヤ教のタルムードの話をしましたが、タルムードは〈表のユダヤ教〉なんです。もう一つ別に〈裏のユダヤ教〉があるんです。それがカバラ思想です。合理的に人間が物事を考えていると、そのぶん非合理な世界ができてきて、どこかで調整をつけないといけなくなる、というのがカバラ思想です。そのカバラの考え方の下に埋もれている部分を「深層心理」と名づけて説明したのが、フロイトやユングでした。
 カバラ思想との関係においては、フロイトの『精神分析入門』も『夢判断』もいいでしょう。しかし、むしろカール・ユングの『心理学と錬金術』が非常にいい。それから概説書としては、河合隼雄(かわいはやお)さんと共に夢の臨床家として日本で第一世代のユング紹介者で、同志社大学神学部の名誉教授だった樋口和彦さんの『ユング心理学の世界』。今だったらネットの古本屋で500円ぐらいかなと思いますが、明日になってこの教室の中の三人が買いますと、4、5,000円になります(会場笑)。これを読むと、今言ったような話が腑に落ちると思います。
 それから、もし東洋思想とつなげて、フロイトやユングあるいは心理学を知ろうとするならば、法相宗(ほっそうしゅう)の本を読むといいです。法相宗というのは、薬師寺とか興福寺ですね。特に今の興福寺の貫首(かんじゅ)の多川俊英(たがわしゅんえい)さんという人は、立命館大学でソビエト心理学を研究していました。法相宗が大切にするのは「唯識(ゆいしき)」という無意識を重んじた考え方です。この唯識の伝統が日本にあるから、すごく心理学の裾野が広がりました。唯識に関する本も自分の古典に据えるには非常にいい。フロイトだけを読むと、すべてをセックスに還元しちゃうので、話が面白すぎるんですね(会場笑)。いや、フロイトも立派な古典ですよ。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「1 恋とフェスティズム」の「(質疑応答)」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック ~いま生きる「資本論」(13)~
【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ ~いま生きる「資本論」(12)~
【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 ~いま生きる「資本論」(11)~
【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに ~いま生きる「資本論」(10)~
【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する ~いま生きる「資本論」(9)~
【佐藤優】宇野経済学の面白さ ~いま生きる「資本論」(8)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 ~いま生きる「資本論」(7)~
【佐藤優】自分の周りでできること二つ ~いま生きる「資本論」(6)~
【佐藤優】報酬と賃金は違う ~いま生きる「資本論」(5)~
【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 ~いま生きる「資本論」(4)~
【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る ~いま生きる「資本論」(3)~
【佐藤優】アベノミクスとファシズム ~いま生きる「資本論」(2)~
【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 ~いま生きる「資本論」(1)~



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