語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】機能性表示食品の安全性 ~茶カテキン過剰摂取の危険性~

2015年04月27日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)4月から企業責任で機能性を表示できる機能性表示食品制度が始まった。
 新制度について、機能性の真偽の問題があるが、これとは別に、安全性の問題も懸念される。
 機能性食品で使用しやすい成分は、すでにトクホとして認められている成分だろう。しかし、より大きな効果を期待して摂取量を増やすと、危険性が増す可能性が否定できないのだ。
 茶に含まれるカテキンによる肝臓への毒性もその一つだ。
 茶は日本を含めたアジア諸国で十分な食経験がある、と考えることができる。
 しかし、「脂肪を燃焼させる」とか「悪玉コレステロールを減らす」とか、特定の機能性を表示することで、摂取量を増やしていった場合の安全性の検証がおろそかにされる恐れがある。

 (2)海外では、「ヘルシア緑茶」の摂取量(1本540mg)と同程度のサプリメントで肝障害の事例が報告されている。特に女性に影響が出やすく、空腹時に飲むと過剰摂取される、等が分かっている。
 2010年のマウスの実験では、高用量のカテキンを投与したマウスで、数日のうちに肝臓に急性毒性が出て75%が死亡した。
 これは、ジョシュア・ランバート博士(米国ペンシルバニア州立大学)たちが行った研究だ。体重1kg当たり、0mg、500mg、750mgを毎日投与した結果は次のとおりだった。
  (a)0mgのマウスのグループは死亡率0%。
  (b)750mgのマウスのグループは死亡率75%(12匹中7匹が死亡)。

 (3)(2)の論文では、マウスで影響が出た投与量(体重1kg当たり500~1,500mg)を人間での相当量に換算している。その量は、体重1kg当たり30~90mgだ。
 ちなみに、動物実験の投与量を人間への投与量へ換算する方法には、
  (a)単純に動物と人間の体重差で換算する。
  (b)体の代謝の影響などを考慮して体表面や摂取カロリーの差で換算する。
 といった方法があって、この論文では摂取カロリーの差で換算している。

 (4)市販の茶や健康食品からの摂取量と、有害影響の出る摂取量を比較すると、
  (a)マウスが急性肝毒症で死亡する量の人間相当量(平均的日本人体重60kg)・・・・1,800~5,400mg
  (b)海外で肝機能障害が起きたケースの摂取量・・・・600~1,740mg
  (c)日本の健康食品・サプリメント商品での1日摂取目安量・・・・100~600mg
   ①紅茶1杯(100g)・・・・68mg
   ②伊藤園「カテキン緑茶」1本・・・・197mg
   ③花王「ヘルシア緑茶」1本・・・・540mg

 (5)(4)-(c)の安全な量は意外と狭い。①~③にしても、安全な量の範囲内だが、意図的に大量に摂取した場合、肝機能障害が起きても不思議はない。
 日本人間ドック学会によれば、検査で見つかる生活習慣病のトップが肝機能障害だ。健康食品が肝機能異常をもたらす原因になっている場合がある。

□植田武智「機能性表示食品の登場で茶カテキン市場の過熱がこわい」(「週刊金曜日」2015年4月24日号)
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